表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
第4章:野盗と戦争
40/56

第三十九問「水菜日記」

よろしくお願いします。

水菜ちゃん視点です。相変わらず視点が変わると作風が変わってる気がします。

---- side 水菜 ----


おはようございます。水菜です。

わたしの朝は午前6時にセットされた目覚まし時計を止めて、顔を洗って出かける準備をするところから始まります。

先日の七夕祭の帰り、お兄さんから衝撃的なお話を聞いてから、毎朝お兄さんの鍛錬にご一緒させてもらう事になりました。

あ、お兄さんっていうのは本当の兄弟ではなくて、元々は去年の春からうちのお店によく来てくれるようになった常連さんだったのですが、ある事がきっかけで『お兄さん』って呼ばせてもらっています。

『ある事』については、わたしとお兄さんだけの秘密です。


準備が整ったら、お兄さんの待つ公園まで向かいます。わたしの家からだと走って10分くらい。と言っても「今の私なら」だけど。

公園の入口で、お姉さん、ほのかさんと合流しました。お姉さんはお兄さんのクラスメイトで、最近はよくお兄さんと一緒にお店にも来てくれます。

「今日も暑いね」って雑談をしながらお兄さんの待つであろう広場に向います。

そして、そこには幻想的な光景が広がっていました。

結界が張られている半球状の空間の中に、お兄さんと思しき影と、数えきれない程の大小さまざまな光が飛び交っていました。わたしの目では早すぎてもう影としか分かりません。

それが1分ほど続いたところで光の数が減っていき、最後には光の弾を持ったお兄さんが立っていました。

光の弾を無造作に空に向けて放つお兄さん。ああ、これでまた月に謎のクレーターが増えるのかな。最近ニュースになってるの、お兄さん知らないんだろうな。


「おはようございます。お兄さん。わたしじゃもう目で追うのがやっとです」


そう言ってタオルを渡すと笑顔でお礼を言ってもらえます。このタオルもお姉さんと話し合って1日交替で渡す事になってます。

そこからいつものトレーニングが始まります。

3人で手を繋いで輪を作って、お互いの気を循環させていくんです。あ、気っていうのはゲームでいう魔力みたいなもので、なぜかVRで魔力を扱うのと同じように現実でも気を扱えるようになってしまったので、お兄さん指導の元、こうして練習しています。

そしてこの時間が最近の一番素敵な時間。全身をお兄さんに包まれているような、とても幸せな気分になれるんです。ただ、そうしてるとあっという間に終わりの時間が来てしまう事だけが残念。もっと続けばいいのに。

そしてトレーニングの後に、お兄さんから旅行のお誘いされちゃいました♪ しかも1泊2日で海です。

さらにお兄さんから衝撃の告白。なな、なんと、お兄さんがあの天川先生だったんです!あの、わたし大ファンなんですけど!!出版された本全部持ってます。ぜひサインください。って、ああ!色紙もペンもない。わたしの馬鹿馬鹿。ま、お兄さん先生、呆れないでください。あ、ちょっとまって、これも違うんです、そうじゃないんです!!!


……すみません。あまりのことに取り乱しました。もう大丈夫です。あ、サインは下さいね。


それから、みんなでうちの喫茶店で朝食を摂って、またVRで会う約束をして解散しました。お兄さんには内緒で、別れ際にお姉さんとクラン結成の件を話しておきました。


そしてVRゲームにて、始まりの街でお姉さんと合流して冒険者ギルドに向います。お兄さんは、あ、いた。

なんとお兄さん、普通なら最初にするはずの冒険者登録をまだしてなかったんです。なので今更ながら登録手続きをしています。でもレベル100超えの新人ってどうなんでしょうね。

あ、手続きが終わったみたい。私はお姉さんに教えて貰った通りに、お兄さんに声を掛けてみます。何でも冒険者ギルドのお約束なんだそうです。わたしの時は人が多すぎてそれどころじゃなかったんですけどね。って周りのみなさんに注目されてるっ!あっ、そこの人。写真撮影は禁止ですよ!!

そんなこともありながら、お兄さんに今度はクラン設立の手続きをしてきてもらう。わたしが以前参加していたクラン『天の川』は元々、天川先生のファンが中心になって出来たクランだったから話は合うんだけど、お兄さん本人と一緒の方が絶対良いから抜けてきた。


ただ、クラン設立の手続きを終えて戻って来たお兄さんの表情が浮かない。何かあったのかな。

訊いたら、最近プレイヤーが暴れてこの街の人たちに迷惑をかけているらしい。

そっか、それでお兄さんは怒っているんですね。お兄さんって、人とのつながりを大事にするから、その分大切に思ってる人が傷つけられると凄く怒る。

ただ、怒鳴り散らしたりはせず、淡々と怒りをぶつけるから逆に怖いかもしれない。


そしてそれぞれ分かれて情報収集することになりました。

出て行ったばかりのクランに聞きに戻るのは、ちょっと恥ずかしかったですけど、皆さん温かく迎えてくれてありがとうございます。

なるほど、だいたい敵の目的は理解出来ましたが、折角なのでよその人にも聞き込みをしてみましょう。ちょっと探偵みたいで楽しいです。

何人かに聞き取りしたところで、怪しい人がいました。いえ、怪しいというより、気持ち悪い、でしょうか。何というか視線が残念な感じです。その人がわたしに話しかけてきました。え?それってお兄さんが言ってた危険ワードそのものです。という事は、この人が今回の問題の首謀者なのでしょうか。気付かれないようにお兄さんたちに連絡を入れつつ、話を合わせてみます。リアルじゃ絶対にしないけど、ゲームだから大丈夫でしょう。お兄さんたちも居ますしね。

そして街の外に出た所で、気持ち悪い人が3人に増えました。あ、分裂したわけじゃないですよ。

外壁を背にして囲まれないようにします。お兄さんたちの姿が気持ち悪い人たちの向こう側に見えま、ひっ!

悲鳴を上げなかった自分を褒めてあげたいです。怖かったです。この3人ではなく、お兄さんが。あれは絶対に怒り度100%の笑顔です。もしわたしに向けられてたら、今頃おしっこ漏らして泣いちゃってました。この人たちを擁護するわけじゃないけど、何とかしないとミンチになってしまいそうです。


「あの、先に一つだけ教えてください。あなた達は最近のPKに関与してますか?」


良かった。そっちまでは関与してないなら、まだ大丈夫ですよね、お兄さん。

視界から気持ち悪い人たちが消えたら、お兄さんの笑顔も幾分元に戻ってくれたから良かったです。

でもこの調子で明日の盗賊討伐って大丈夫なのでしょうか。ちょっと心配です。

お兄さんの事は色んな意味で、そのままでは書けません。

追伸、明日は降水確率90% 血の雨が降るでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ