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VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
第4章:野盗と戦争
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第三十八問「情報収集と静かな怒り」

よろしくおねがいします。

いつも通り嫌な部分はさらっと終わらせます。

新たに2つクエストを受けることになったけど、無事にクランは結成できたのでふたりの元に戻る。


「おかえりなさい。お兄さん」

「おかえり。どうしたの?浮かない顔してるけど」

そう言って迎えてくれるふたりに先程の話をする。

「テンドウくんらしいというか。直ぐに次の問題を引き当ててきたのね」

「これもお兄さんの人徳のお陰ですね」

あれ、一応褒められてる、のかな。まあいいか。

「それで、ふたりは盗賊について何か知ってる?」

「知っているというか、前のクランに居た時に、他所のクランのメンバーが襲われたって聞いたことがあります」

「私は一度襲撃を受けたことがあるわ。その時は無事に撃退したけど、性質の悪いPK集団って感じだったわ。目的までは流石に分からないけど」

ふむ。そうやって聞くと結構頻繁に出没してるってことか。なら他の人の話を聞けばある程度は情報が集まりそうだ。

「ふたりって元のクランと喧嘩別れしてきた訳じゃないんだよね。うん。なら悪いんだけど、そっちから聞き込みをしてみてもらっても良いかな。僕は商人とか街の人たちからも聞いて回ってみるよ」

「分かりました」

「分かったわ、ついでにクラン『裏の裏の裏』ってところが情報通だからそっちにも聞いてみるわね」

「うん、お願い。あと、念のため街の外に出る時はひとりで出ないようにしよう。特に、誰かに街の外で話をしようって持ちかけられたら罠の可能性もあるから、絶対に知らせること。いいね」

ふたりが頷いたのを確認して解散する。


折角落ち着いてきて街にも活気が戻ってきたって言うのに、こんな馬鹿なことをし始めた奴らにはお灸を据えてやらないといけないね。そう考えながら、まずは目撃者がいないか行商人を中心に聞き込みを行うと、後から後から証人が出てきた。その話を纏めるとこうだ。


・襲撃者側は常に複数人であること。

・襲撃者の見た目の証言はバラバラであることから、かなりの人数が別々の徒党を組んでいること。

・襲撃途中で突然撤退することがある。

・襲撃する側の多くはペットを所持している。

・襲撃される人もペットを所持している場合が多いようだ。

・襲撃ポイントは街道から少し外れた林で良く見かける。

・最近では襲撃者を撃退するPKKの場面も多く見られる。

・前情報通り、地元民は狙われていない(襲われそうになった人も居たが、地元民だと分かるとなぜか謝りながら去っていったとのこと)


以上のことから、幾つか想定できるパターンが見えてきた気がする。後はふたりの調査結果と合わせて考えよう。そう思っていたら、ホノカからクラン通信が入った。

『ホノカです。こちらの聞き取りは大体終わったよ。奴らの狙いは世界樹の精霊みたいなの。襲撃された時に執拗に世界樹の精霊ばかり狙ってる節があったって。何人かはそれで世界樹の精霊を殺されちゃったみたい。今はそうやって被害にあった人を中心に討伐部隊が結成されているみたいよ』

やっぱり世界樹がらみか。証言の多くからペットの話があがっていたけど、やっぱり世界樹の精霊のことだよね。続いてミーナからも通信が入る。

『こちらミーナです。あの、先程お兄さんが言ってた人が現れました。「街の外で2人っきりで話さないか、君の知りたいことを色々教えてあげるよ」だそうです。いまその人に続いて移動しているところです。場所は・・・・・・』

『テンドウです。ミーナちゃんは僕らが外で先回りするからそのままゆっくりめで移動して。出来るならそいつの顔写真も送ってほしいな。ホノカも現地合流で行けるね』

『はい、やってみます』

『分かったわ。直ぐに向かうよ』

僕も急ぎ移動しつつ、ホノカに個別で通信を行う。

『ホノカ、これどっちだと思う?文面だけ見るとあれなんだけど』

『そ、そうね。ミーナはかわいいからその心配もあったわね』


そんな僕らの予想は嫌な意味で当たった。

今、隠蔽魔法で隠れている僕とホノカの目の前で、街の壁を背にしたミーナとそれを囲む3人のプレイヤーの姿がある。怯えた感じで槍を抱きかかえるミーナを見て男達が下卑た笑みを浮かべている。殺して良いかな。

「ひぃっ。……あ、あの。情報を教えてくれるんじゃなかったんですか」

そう不安げな声を上げるミーナを見て、いっそういやらしい顔をしてるし。殺して良いよね。

「じょうほう?あぁ。教えるさ。でもただとは言わないよねぇ」

「そうそう。大丈夫。俺ら別に金が欲しいわけじゃないんだよ。ただちょっとね」

「うへへっ。俺らとちょーっと遊んで欲しいだけだからさ」

ちなみに僕らの姿はミーナには見えているので全部演技だ。それでも教育上宜しくないし、殺そうね。

そんな僕をホノカが必死に押し留めてる。ただ、そんなホノカからも殺気が迸っているのが分かる。

「あの、先に一つだけ教えてください。あなた達は最近のPKに関与してますか?」

「PK?あぁ。なんか最近はやってるらしいな」

「俺らにゃ関係ないね」

「そうそう、一方的になぶるのがいいんだよな」

ナイス、ミーナ。これであいつらに情報的価値も無いことが確定した。知ってても大した情報じゃないだろう。ホノカを見ると頷いて手を離してくれる。

僕は隠蔽魔法を解除すると、アイテムボックスから麻袋を取り出して男共を適当に放り込む。何か叫んでるけど無視。うるさいから消音結界を張っておく。まあちょっと待ってろ。

「お疲れ様。ミーナ。ごめんね、嫌な役回りさせちゃったね」

「いえ、お兄さん達が居てくださるのは分かっていましたから」

そういって何でも無いように笑ってくれるミーナ。ホノカも隠蔽を解いてミーナに抱きついている。

「さて、情報収集はこれくらいにして、あとは明日にしようか。僕はこれからこれの処理をしてくるよ」

「分かったわ。それじゃあまた明日」

「お兄さん、無茶しないでくださいね」


そういってふたりが街の中に入るのを見送って、僕はごみ処理を行う。

どうしよう。顔と名前曝して、トウガラシの海に沈めておこうかな。

人の努力を踏みにじったり、大切な人を傷付ける相手には、静かにかつ激しく怒りを覚えます。


次回はミーナの視点。

ミーナから見た主人公は・・・・・・

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