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VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
第3章:夏とダンジョン問題
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第三十四問「世界で一番熱いもの」

よろしくお願いします。

とうとう文字数合計が10万を超えました。

これも読んでくださる皆様のお陰です。

氷の湖の門から引っ越してきた各種魔物、動植物のお陰で、氷雪フィールドは順調に体裁が整ってきた。

これなら後は皆に任せれば大丈夫かな。そう思った頃、雪狐の親子が僕の所にやって来た。

『旦那様。折り入ってご相談したい事があるのですが、今よろしいでしょうか』

「うん、何かな」

この旦那様っていうのは僕の呼ばれ方の一つ。他には「マスター」「ご主人様」「親分」「領主様」「大将」など様々だ。僕だって事が分かればいいので、今の所好きに呼ばせている。

『マグマ山に住む同胞から救援要請をキャッチしました。何でも今住んでいる山で大噴火が起きたらしく、溶岩の鎮静化および安全な場所への避難を手伝ってくれないか、との事です』


ポンッ!

【緊急クエスト「マグマ山救援活動」を受けますか? 

 注意:このクエストは緊急クエストです。時間経過により失敗判定および評価が変動します】


火山噴火か。日本でも時々起きるけど、小規模でも大災害だよね。

「うん、分かった。急いだ方が良いんだね。なら人手も多い方が良いかな」

といっても、知り合いって言うと。ミーナは……いないか。じゃあ、期末試験は今日までだったから、ホノカはログインしてるかな。あ、居るみたいだ。

『こんにちは、ホノカ。ちょっと急ぎで力を貸してほしいんだけど、今って時間あるかな』

『あ、テンドウくん。うん、もちろん大丈夫だよ。私に出来る事なら何でも言って』

『ありがとう。マグマ山って知ってる?その山が噴火したみたいで、これから救援活動に向かうから手伝ってほしいんだ』

『マグマ山なら良く行ってたよ。そっか、噴火したんだね。うん、任せて』

本当はホノカのクランメンバーにも協力してもらった方が良いんだろうけど、魔物の避難であることと避難先が僕のダンジョンだから、遠慮してもらった。

さてこちらからは、師匠とアシダカさんには火山フィールドで受け入れの準備をしてもらって、現地には僕とサラが向かう事にした。


待ち合わせ場所に行くとホノカが先に来て待っててくれた。

「あ、テンドウくん。こっちこっち。救助対象が魔物だって聞いた時にはちょっと驚いたけど、何というか、テンドウくんらしいね」

「急だったのにありがとう、ホノカ。って、その僕らしいってどういう意味かな」

「あははっ。えーと、あ。そうそう、紹介するね。この子は私の世界樹の卵から生まれた子で『バーニー』って名前なの。可愛いでしょ」

そう言って紹介してくれたのは、真っ赤な毛並みのポニーくらいの仔馬だ。

僕の所によって来てくれたので、頭を撫でてあげると気持ちよさそうに嘶いた。

「むぅ、お兄ちゃん。浮気はダメだよ」

そう言いながら僕の後ろに居たサラが、僕の右手に掴まってくる。って、このパターンって前にもあったよね。

そう思ってたら、バーニーが全身から炎を噴き上げた。あわてて手を話したけど服がちょっと焦げた。

うっ、心なしかホノカの視線も怖い。えっと、みんな何か怒ってる?

「……テンドウくん、その子は、誰かな?」

「あ、えっと、僕のお世話してる世界樹の子でサラって言うんだ」

慌ててサラを紹介すると、ホノカの方は落ち着いてくれたみたいだ。

「あ、世界樹だったんだ(なら大丈夫だよね)。テンドウくんの所は人の姿なんだ。こんにちは、サラさん。わたしはホノカっていうの。よろしくね」

「こんにちは、ホノカ。んー、あなたって、お兄ちゃんの彼女??」

サラが挨拶をしながらホノカに爆弾発言を投げかけた。

「か、かの、かのじょ!?ちちち、違うわよ。お友達、お友達よ。ね?」

「え?あー、うん。地元の友達、かな」

そう答えると、ホノカはがっくりしてしまった。え、えっと。どう答えれば良かったのかな。

「ま、まぁ。挨拶はこれくらいで、時間もないし早速行こうか」

そう言って話を切り上げて、ホノカの転移石でマグマ山の麓に転移する。


そこはまさに大噴火という表現がぴったりな、むしろ天地創造と言う方がしっくりくる光景だった。火山からはマグマが川となって流れ、山頂は噴火の凄まじさを表すようにその形を変え、憤石はひっきりなしに飛んでくる。木々は燃え盛り、地割れが起き至るところで蒸気が噴き出していた。

「これは急がないとまずいね。サラとホノカは手分けして動ける動物や魔物をここに誘導して。僕も門を開き次第向かうから」

そういって、ホノカに雪狐から預かってきた狐毛のブローチを渡す。このブローチを見せれば、言葉が通じなくても僕らが助けに来たのが分かるらしい。

そうしてホノカとバーニー、サラがそれぞれ散っていく。僕も急ぎ火山フィールドへの門を開き、師匠に門番をお願いして、救援に向かう。


避難出来てない魔物は結構居て、3人で全部を回るのは無理があるので、元気な魔物に、一緒に声を掛けて回ってもらうようにお願いする。また、怪我をして動けない子には回復ポーションを使ったり門まで背負って運んで、何とかダンジョンへの避難が完了した。サラには引き続き救助漏れがないか確認してもらい、ホノカには怪我した子に回復ポーションを配って回ってもらう。

避難したメンバーを見ると、岩属性と火属性の、ネズミ、犬、ウサギ、鳥、獣人、巨人とさまざま……あれ?

サラに確認を取るが、助けを求めてた(・・・・・・・)魔物はこれで全部だそうだ。つまりはそういうことらしい。

「ホノカ、サラ。僕はこれから火口に行って噴火を鎮めてくるよ」

「テンドウくん、ひとりで大丈夫?」

「気をつけてお兄ちゃん。火口には恐らく、今回の元凶となる魔物がいるはずよ」

「うん、上手く行けば直接戦わなくて済むから大丈夫。無理そうだったら戻ってくるよ。ふたりは引き続き、被害が拡大しないように手を尽くして欲しい」

「わかったわ」「まかせて」


そうして僕は山頂に向けて全速力で駆け抜けていった。

師匠との稽古のお陰で、身体強化系の魔法も結界系の魔法も大分上達した。その結果、飛行機並みの速度は出せると思う。ただ、その場合は地上を走ると色々とぶつかって危険なので、空中に結界で足場を作って、その上を走るようにしている。そうすることで、飛行では難しい三角跳びみたいな挙動も自在に出来たりする。


閑話休題。


数分で火口が見える山頂までたどり着いた。

そこには溶岩の湖と、それを覆うように蔓がドームを形成して所々に大輪の花を咲かせる植物、そしてその蔓に閉じ込められる様にして半身を溶岩に沈めた1匹のキツネ(・・・)の魔物がいた。その魔物の目がこちらに向けられると念話が届いた。

『人間よ。我の依頼を聞き入れ助けに来てくれたこと、まことに感謝する』

「あなたが救援要請を出していたんですね。避難したもの達の中にキツネの魔物は居なかったので、居るならここだろうと当たりを付けて正解でした」

『なに、この地に住む同胞は先に逃がしただけのこと。ただ他のものまで救う余裕が無かったものでな』

なるほど、それで1匹もいなかったんだね。

とその時、新たな花が咲くと同時に蕾から溶岩が噴出した。うん、この植物が今回の災害の元凶で間違いない。というか、これも世界樹の一種なんだろうな。

『気をつけよ。この植物はこやつの一部に過ぎん。本体はこの溶岩そのもの』

「あ、それは良かったです」

『良かった、とな?』

うん、良かった。それなら気兼ねなく当初の予定通りに出来る。

「これからかなり寒くなりますが、我慢できますか?」

『フム、我のことは気にするでない。存分にやるがよい』

「はい。それでは」

僕は火口の上空に飛び上がる。って、あつっ!!防御結界を張っているお陰で高温サウナくらいの体感だけど、実際には一瞬で燃え尽きるくらいの暑さだ。これは少し予定変更しないと。

十分な高度まで上がったところで、ダンジョンへの門を2重で開く。一つは火山フィールドへの門で、もう一つは氷雪フィールドへの門だ。それをそれぞれ一方通行の状態で開通させる。さらに火山フィールドに高熱を吸い取るように吸引機能を付けて、氷雪フィールドの門には冷気が吹き出るように送風機能を付ける。

これにより周囲の気温がぐんぐん下がるけど、溶岩を冷ますには至らない。なので続いて結界魔法で火口全体を囲むように円柱状の壁を作り、超上空の冷たい空気を風魔法で引き込む。さて、このゲームが宇宙空間まで意識してくれてると良いんだけど。

うん、幸い強力な冷気を引き込むことが出来た。けど、


「あ、うっ」


一瞬フラッと意識が飛びかけた。って、もしかしなくても魔力切れだ。今まで何となく使っても十分保っていたから油断していた。まずいな。このままだと溶岩が冷えるよりも魔力が尽きる方が早い。そうしたら溶岩は復活するだろうし、僕の魔力が回復するよりキツネの魔物が限界を迎えるほうが早いだろう。どうする。

そう思っていたところで、右手がふわっと何かに包まれると同時に魔力が送られてくる。この感覚は見なくても分かる。サラだ。

「もう、お兄ちゃんは無茶しすぎよ。もっと私を頼ってくれてもいいと思うわ」

そう言いながらさらにぎゅっと掴んでくる。

「ありがとう、助かったよ、サラ。ところでどうやってここまで来たの?」

「そこに開いてる氷雪フィールドの門からよ。お兄ちゃんの気配が弱まったから慌てて飛んできたの」

そう言って目の前に展開されている門を指差すサラ。

さて、サラのお陰で魔力は十分補充されたし、マグマも順調に冷えて固まりだした。おまけで奥まで早く冷えるように、ミーナ直伝の氷の槍を作って地面の奥深くへと突き刺していく。あ、あれはそろそろまずいかな。

「サラ、僕の方はもう大丈夫だから、来たついでに、一つお願いしてもいいかな」

「もちろん。遠慮しないで」

「ありがとう。火口に、キツネの魔物が居るのが見えるよね。このままだと凍死してしまうから、助けてきて欲しい。固まった溶岩に埋まってるようにも見えるけど、あの溶岩って魔物の一部らしいから、倒してしまえば簡単に抜け出せるはずなんだ」

「分かったわ。って、あの溶岩の魔物も世界樹の力を取り込んだのね。まったく、力の使い方を考えて欲しいわ」

そう文句を言いながら魔力を纏ながら火口に向けて突撃していくサラ。傍から見ると巨大な一本の杭のように見える。それが固まった溶岩にぶつかると、まるで砂地に針を刺したように根元までいっきに潜り込む。一瞬、溶岩とその上の植物部分が光ったかと思うと消滅する。どうやら今の一撃で核を貫いたようだ。

サラは開放されたキツネを担ぎ上げて飛んできて、そのまま火山フィールドに入っていく。顔がちょっと焦った感じだったから、結構ぎりぎりだったのかも。あのキツネには後で謝っておかないとね。


ポンッ!

【緊急クエスト「マグマ山救援活動」を達成しました】


そうやってサラに見惚れていたのがまずかった。気が付いた時には火山は冷えすぎて氷山みたいになってた。慌てて魔法を止めたけど・・・・・・うーん、まあ、もう少ししたら元通りになるよね。山の奥のほうにはまだ溶岩が燻ってるし。

ダンジョンへの門も氷雪フィールドに繋がるのは完全に消して、火山フィールドに繋がるのは火口付近に設置し直してから、僕もダンジョンに戻った。


さて、みんなは。あ、居た居た。って、あれ?子狐がいっぱい増えてるけど、さっきのキツネの姿は見当たらない。間に合わなかったのかな。

「サラ、さっきはありがとう。で、あのキツネは?」

そう聞くとサラは微妙な顔をしていて、その視線の先には20代半ばくらいのグラマーな女性が居る。

「我なればここぞ。ぬしのお陰で我も我が眷属たちも救われた。この礼は我の全てをもって返すしかないかの」

そう言いながら抱きついてくる。え?え?

「な!?」「お兄ちゃん!!」

その後ろで真っ赤になりながらホノカが魔力の炎を吹き上げてるし、サラもぷんぷんしてる。

「なに。別に正妻になろうとは言うてはおらぬ。英雄色を好むというしの。愛妾の2人や3人、居て当然というものよ」

あー、色々と当たって凄いことになってるが、ひとまず話を進めてしまおう。

「えっと、あなたが先程のキツネだってことですよね」

「さよう」

「なんてお呼びすればよいでしょう」

「ぬしの呼びやすいように呼べばよい。あと我はぬしの物。敬語は不要ぞ」

「やっぱりそういう流れですか。えっと、じゃあ『狐姫(コキ)』と呼ぶことにします。あと、愛妾云々は保留ということで」

「『コキ』か。良い名じゃ。ではぬしよ。これからよろしくの」


ポポンッ!

【九尾は真名「狐姫(コキ)」を得ました】

【九尾「コキ」は九尾姫に進化しました】

【コキと主従関係を結びました】


そう言いながらコキは子狐たちを連れて去っていった。

後には僕と、溶岩よりも燃え上がっているホノカとサラだった。


「テンドウくん、保留ってどういうことかな~」

「お兄ちゃん、あんな女の色気に惑わされちゃダメなんだからね!!」


これは、うん。逃げるしかないね!!

主人公はお説教中です。もちろん逃げ切れませんでした。

そして定番の古風口調の狐の嫁入り。どこからでてきたんだろう。おかしいなー。


最近の悩みは戦闘シーンをいかにありきたりから脱却するかです。まぁ宇宙から冷気をおろしてくるのもありきたりですが。

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