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VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
第3章:夏とダンジョン問題
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第二十五問「洞窟型ダンジョンはお先真っ暗」

よろしくお願いします。

第3章スタートします。

世界樹の森から、謎の穴に吸い込まれた僕は、ひとまず五体満足で呼吸も問題なく出来ることに安堵した。


魔法で明かりをつける前に魔力を周囲に展開したところ、特に身近に危険なものはなく、自分の今いる場所が洞窟のような通路だという事は分かった。

一応空気はあるようだし、周囲に魔物が居ないことも確認出来たので光魔法で明かりを作る。

すると、幅3m、高さ5mくらいの通路で、通路の奥までは光が届かなかった。壁も床も人工としか思えない程平坦だし、壁の一部には壁画のようなものまで描かれているので、ただの洞窟では無いことが分かる。という事は、どこかの地下室かダンジョンと考えるのが妥当だろう。それなら進むうちに他の階へ移動する階段なり、何かしらあるはずなので、通路の奥へ進んでみよう。

歩きながら、連絡の取れそうな相手に連絡をしてみよう。そう思って、まずは師匠やアシダカさん達に念話を送ってみるも反応なし。物理的に遠いのかもしれないし、ダンジョンの中だからかもしれない。次にホノカにフレンド通話を試してみるも「ご指名の相手は、通話出来ない場所に居るか、ログインしていません」と言われてしまった。まぁホノカならリアルでも会えるだろうと思って、ログアウトを試したところ、今度はセーフエリアではないため、ログアウト出来ません。と出る始末。

これは急ぎセーフエリアを見つける必要がありそうなので、進む速度を全力の5割くらいまで上げた。


……

…………

………………


1時間くらい走っただろうか。途中何度も枝分かれし、迷路のようになっていたものの、何とかゴール地点に辿り着いたようだ。

そこには、実に立派な、神社が建っていた。って、なんで神社?ここってファンタジーな世界じゃなかったっけ。それにボスが居たりはしないのだろうか。あ!そうか。そのボスがこの神社に封印されているとか、そういうパターンなのかも。

そうすると封印されているのは本殿の中か、裏手に封印の祠とかご神体とか大岩にしめ縄がまかれたものとかがあるのかもしれない。まずは神社には入らず。社務所の横の通路から裏手に回ってみよう。そう思った時、社務所の中から声が聞こえて来た。


『はぁー。まったくどうするっすかね。最近少しはお客さ入ってくれるようになったけど、こんな状態じゃ満足に動けるまで大分時間かかるし。せめてあれが成功してくれたらまだましだったのに、大失敗の大赤字だったから、当分動けないっすよ』


……なんというか、凄く残念なつぶやきだ。ま、まぁそれは置いておいて。ひとまずここに住んでる人なら、ここがどこなのかも分かるし、皆にも連絡が付くかもしれない。そう思って社務所の入口に移動する。


「ごめんください。旅のものですけど、どなたかいらっしゃいますか?」

「ひえぇぇぇぇ~~~~!!!」ドタドタバタバタバキッグシャ「あいったー」


あれ、普通に声を掛けたつもりなんだけど、驚かせちゃったみたいだ。

落ち着いたころ合いを見計らってもう一度声を掛けてみよう。


「あ、驚かせてしまったようで、ごめんなさい。ちょっとお尋ねしたい事があったのですが」

「な、な、な、なんでしょう。うちには、金もなければ食いもんもないっす。盗ってくものなんて何もないっすよ」


壁越しだけど、多少まともな応答が返ってくる。いや、物取りじゃないんだけどな。


「いえ、実はお恥ずかしながら、迷子なものでして、ここがどこなのかと、外への出方を教えてほしいだけです」

「えぇぇ!!あなた、どうやってここへ来れたんすか。ここはダンジョンマスターの専用ルームっすよ。普通じゃ入って来れないなずなんすが」


ダンジョンマスターか。それにしては若干腰が低いというか下っ端臭がする気がするな。


「僕は突然、地上で地面に開いた穴に吸い込まれるようにしてここへ来ました」

「穴?穴っすか!?まさか壁が崩れたのか。……うわ、本当っす。確かに先ほど崩れた壁を修復したと報告が来ているっす。って、あああ!お陰でまた余計な出費が嵩んでるぅ。だめだ。今月も赤字っすよ」


赤字って。ダンジョン経営もなかなか厳しいのかな。うーん、壁が崩れたのはもしかしたら、僕たちが地上で暴れたからかもしれないし。聞いてしまったからには手を貸してあげよう、かな。


「あのー、さっきも何やら困ってる風でしたが、僕で良ければ相談に乗りましょうか」

「はぁ。いやまぁ確かに藁にも縋りたい状態っす。分かりました。ちょいと相談に乗ってくれませんか。これで救われれば地獄に仏とはまさにあなたのことっすよ」


……調子が良いな。まぁいっか。

そうしてポツポツと話してくれた内容を要約すると以下のような感じだ。

・世界中にいくつもダンジョンを作ったのに、その8割方に誰一人として入ってこない。

・入ってきても5階層も行かずに帰っていき、二度と訪れないことも多い。

・また、こちらが用意した魔物が一方的に倒されるばかりで、結局赤字になる。

というものだった。

また、ダンジョン側の収入は主に、

・ダンジョンに侵入した冒険者が自然に発する魔力エネルギー

・ダンジョン内で使用された魔法のエネルギー

・ダンジョンに侵入した冒険者が倒されたときに放出される生命エネルギー

・外に出稼ぎに行った者たちから送られてくるエネルギー

なのだそうだ。ちなみにこの「冒険者」は外来人が主なので、何度倒されても復活拠点で復活するらしい。


さて、何が問題なんだろうって考えた時に、そもそも僕はまだこの世界のダンジョンを体験していない事に気が付いた。そんな僕の考えより、実際に何度もダンジョンに足を踏み入れた事のある人の意見を参考にした方が良いだろう。

そう考えると、僕の知り合いでそういう人って、ホノカくらいなんだけど、聞いてくるにしてもここから出ないといけないな。


「ひとまず現状は分かったんだけど、実際にダンジョンを体験した人たちの意見を聞いてきたいんだ。その為に、どこか休める場所が欲しいんだけど、社務所の中とか借りてもいいかな」

「いいいいいえ。社務所のなかはあのその、見せられない程散らかってると言いますか。あ、そうっす。本殿の方ならどうぞご自由にお使いくださいっす」


本殿で寝泊まりとか、普通に考えたらダメなんだろうけど、ここの主が言ってるなら良いのかな。


「あと、ダンジョンの外の友人に僕の無事を伝えたいんだけど、何か良い手はあるかい?」

「え、えーと。そうっすね。念話は使えますか?あ、なら。本殿の祭壇からなら繋がるはずなのでやってみてくださいっす」

「分かった。ありがとう。っと、そうだ。最後に、一つ大切な事を聞いても良いかな?」


そう言って、壁の向こうに居るであろう、ダンジョンマスターを見つめる。僕の視線を感じたのか、心なしか向こうも居住まいを質したような、そんな雰囲気が伝わってきた。


「ねぇ、ダンジョンマスター。君の目的って何かな」

「へ?目的……っすか」

「そう、目的。ダンジョンに人を誘致してエネルギーを稼ぐ。それは目的ではないよね。稼いだエネルギーで何かを成し遂げたいんだと思うんだけど、それは一体何かな」


そう、世の中、お金が欲しくて働く人はほとんどいない。稼いだお金で家族を幸せにしたり、やりたい事をする。その目的の為に働いてお金を稼ぐんだ。じゃあダンジョンマスターの目的はどこになるんだろう。さすがにダンジョンに入る人たちを不幸にしたいからって言われると協力できないし。


……僕は彼が話始めるまで待った。……10分くらい沈黙が続いた後、ようやく彼は話しだした。


「俺は元々、ダンジョンを生み出し魔物を増やす装置として生まれたっす。ダンジョンを作る事も、そこに魔物を生み出すのも、人が息をし食事をすることと同じように、当たり前の事としてやってきたっす。

ですが、いつしか虚しくなっていたのも確かなんすよ。ダンジョンを作っても誰も来ず、生み出された魔物はただ冒険者に殺される為だけにそこに佇む。それに何の意味があるんすか。

どうせ作るなら誰もが憧れ挑みたくなるようなダンジョンが作りたいっす。もし次のダンジョンマスターが生まれたなら目標になるようなものが。

魔物たちだって強いだけじゃなく、自分たちの心を宿すくらい上級の魂を宿らせて、自分たちの街を作ったり、独自の進化を遂げる奴が出て来たって良いじゃないっすか」


あ、うん。下っ端臭がするとかさっき思ったけど、きちんと想いがあるみたいだ。それなら協力する価値はあるね。


「聞かせてくれてありがとう。そういう事ならその目的が叶うように僕も力を貸すよ。僕はここしか知らないけど、それでも改善点は幾つか思い浮かぶから、今よりも確実に良いものが出来るよ」

「本当っすか!!ありがとうございます。いやもう、諦めるしかないかって思ってた所を救ってくれた、あなたは俺の恩人っすよ。今日からぜひ兄貴と呼ばせてください!!」

「あにきって、まだ手を貸すのはこれからだよ。それと、そう言ってくれるなら、もうそろそろ顔を見せてくれても良いんじゃないかな」

「あ、すみません、兄貴。この世界との契約によってある条件を満たさないと誰にも姿を見せられないんすよ」

「そっか。なら仕方ないね。ダンジョンマスターってそういう制約があるってことだね」


システム的な制約なら仕方がないか。さて、あと今しておく事っていうと。


「そういえば君に名前は無いの?『ダンジョンマスター』って言うの長いから、別の呼び名があると嬉しいな」

「いえ、それが。俺、この世界に生み出されて、まともに会話したのが兄貴が初めてなんすよ。他の奴らは俺の命令を聞くだけで、話しかけてきたりはしなかったもので。……なので、兄貴が呼びやすいように呼んでほしいっす」


しまった。ぼっちの傷を抉ってしまっただろうか。


「えっと、じゃあ『ダンジョンマスター』を縮めて『ダスター』って呼ぶことにするよ」


ポポンッ!

【ダンジョンマスターは真名「ダスター」を得ました】

【ダスターが舎弟に加わりました】


……舎弟って。まあいいけど。盟友とはまた違う関係なんだろう。


「それじゃあダスター、僕は情報収集に行ってくる。上手く行けば1週間くらいで戻って来れると思う」

「はい。お早いお帰りをお待ちしてるっす!」



こうして、新たな仲間(舎弟?)を手に入れて、本殿からログアウトした。

ダブルの意味でお先が真っ暗なダンジョン。

何も得もないのに誰が好き好んで潜るんだって話です。

なのでみんなが潜りたくなるように改善していきます。

・・・・・・キャラ付けの為に、すキャラになるダンジョンマスター。しかも舎弟って。


悲報。

最終章(第五章)までの簡易プロットを作成したところ。予定していた4章の内容が中途半端だったので3章と5章に吸収されて消えました。なので全4章構成で進むことになりそうです。

その分、色々とネタがカットされてしまうという悲しい話。

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