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いざ町の外へ!

○○編とタイトルを考えるのが面倒になりました。(正直)




 右手をクレアさんと、左手はシアさんと繋ぎ、ゆっくりと雑談しながら町の入り口? 出口? とにかく町の外に出るための門の所までやって来た。門の内側の道は大きく広がって広場の様になっていて、大勢のプレイヤーさん達で賑わっている。

 軽く見回しながら耳を澄ますと、どうやらPTメンバーの募集や、素材や生産品の取引相手を探しているようだ。


「凄い人数だねー。まだ露店を出す所が決まってないからここまで人が多いのかな?」


「恐らくそうでしょう、その内住み分けがされると思います。……む、どうしたバレンシア?」


「え? あ、いえ……」


 大勢で賑わう広場を見つめながら、シアさんは少し考え込んでしまっていたみたいだった。珍しい。


「ここで私が大量のGやレアアイテムをばら撒けばどうなるだろうか、などと企んでなどいませんよ? ご安心ください」


 にっこりと、作ったような笑顔を貼り付けて答えるシアさん。


「やめて!!」「やめろ!!」


 だ、駄目だこの人、本当に早く何とかしないと……!!




 新しいおもちゃを見つけた子供の様な目付きで、しかし邪悪な笑みを浮かべるシアさんをクレアさんと引っ張りながら門の外に出る。

 シアさんは、冗談ですよ、などと少し呆れ気味に言っていたが、ここはゲームの中、迂闊に信用してはいけない。シアさんなら本当にやりかねない。


 そんな一歩間違えば暴動騒ぎになるところを阻止して出た町の外は、一面に広がる大草原だった。門から続く道を目で辿ると遠く離れた所に木々の山が見える、恐らくあそこの森の中が薬草や木材などの採取地になっているんだろう。


 この不自然に広がった草原はさすがにゲームだから仕方が無い、といったところかな? とりあえず見える範囲に大きなモンスターはいない、と。まあ、シアさんとクレアさんがいればどんなモンスターが沸いてきても問題は無いと思うけどね。


 そんな事を考えながら改めて辺りを見回すと、確かにモンスターは一体も見えないが、プレイヤーらしき人は何人もウロウロとしていた。何をしているかまでは勿論分からない。でもその全員に共通する事は一つあった、みんな下を、地面を見ながら歩き回っている。探し物でもしているんだろうか?


「シアさんシアさん、みんな何してるの? アイテム探し? モンスターはいないっぽいねー」


「ええ。町から出るとそこからは何かしらの生産素材が採取できる様になりますからね。この辺りですとポーションの調合に必要な薬草や料理に使うハーブ類等でしょうか? クレアは通常のチュートリアルを受けているでしょうし、その辺りの詳しい説明は必要ありませんよね?」


「ああ。確か採取する素材に対応したスキルが必要なんだったか? 私の場合は鉱石類なら目に入るという事か、面白い。姫様には薬草とハーブどちらも確認できるのだと思います。小さく光っている箇所が採取ポイントで、一度採取すると消えてしまいますが、採取ポイントは一定時間ごとにランダムな位置に再出現するのだと聞きました」


 ふむふむなるほどなるほど。態々森まで行かなくても、薬草程度なら町のすぐ側でも採取できるんだね。戦えない人は採取すらできない、という訳ではなさそうだ。


「採取ポイントは近付かなければ視認する事ができない、という肝心な説明が抜けてしまっていますよ? 私のセリフを取ると言うのならもっとしっかりとして頂かないと困りますね……」


「ふん、その程度聡明な姫様がお気づきにならない筈がないだろう。お前こそ説明したさばかりに気を取られ、肝心な事を忘れてしまっているんじゃないか?」


 何やら二人が頭の上で険悪な雰囲気を醸し出しているが、気にせず辺りの観察を続けよう。恐らくスルースキルが鍛えられる筈だ。(?)


 全くこの二人は……、仲がいいんだか悪いんだか。ふふふ。でもカイナさんと違ってリアルファイトに発展しそうでちょっと怖いかも。


「言いますね……。ああ、そういえば今更ですが、貴女は特に私たちと行動を共にする必要はないのですよ? 自分の目的を優先してもらって構わないのですが……」


「今現在姫様の隣に立たせて頂く以上の望みは無いな。そう言うバレンシアも姫様のことは私に任せ、お前はお前で好きに楽しんで来たらどうだ?」


 あ、あの人しゃがんで地面をごそごそしてる。なるほど、ここにいる私からは見えないけど、あの人の位置からはあそこが光って見えるんだね。


「私に姫様と共に在るという事以上の悦楽があるとお思いですか? それ以前に、力ばかりに傾いている貴女に姫様をお任せできる訳が無いでしょう」


「むう、返す言葉も無いな……。ああ、そうだ、どちらを供とするか姫様に決めて頂くか」


 まだ言い合いを続ける二人にやれやれと呆れて、そろそろ仲裁に入ろうとしたその時、小さく動く白い物体が視界の端に入った。


 むむむ? 今何か白いのが動いてたような……。なんだなんだどこだどこだー?


「そ、それは……。ま、まあ、このまま二人でお供させて頂きましょう? 姫様もそうお望みの筈です」


「フフフ……。今までの自分の行動を省みて不利を悟ったか。だがもう遅い! さあ、姫様、私とバレンシアのどちらを供に付けるかお選びください」


「あ! いた! ウサギだー!!」


「ウサギ!?」「ウサギを!?」


「わぅ!」


 ビックリした!! もう! いきなりなんで驚いてるの二人とも!! 私何かおかしな事言った!?


「あ、ああ、確かにウサギですね。平原に住む草食の小動物で、モンスターではなく野生の動物という扱いになります。首狩りのスキルなどは持っていないのでご安心くださいね」


 私の視線の先を見て合点がいったのか、簡単に説明をしてくれるシアさん。


「聖なる手榴弾パイナップルは必要ないんだね、安心安心。ふふふ、可愛いねー。ああいうのもちゃんと用意されてるんだ?」


「聖なるパイナップル……? え、ええ。このゲームでは家を持つ事もできるようですので、その時にはペットとして飼うのもいいかもしれません。先程私が切ったカブでこちらに釣る事ができるのではないでしょうか?」


 クレアさんにネタは通じないか……、残念!


「ウサギってカブなんて食べるのかな? まあ、ゲームだし気にしなくてもいっか。やってみよー!」


「か、可愛らしい……」


「ウサギなど姫様の可愛らしさの足元にも及びませんね……」


 慈しむ目はやめてくださいませんかねえ……。



 インベントリからカブの欠片を取り出し、ウサギから見えるように大きく振ってみる。


「ウサギさーん? こっち来てー? 美味しいカブがあるよー?」


「かかか可愛らしい!!」


「落ち着けバレンシア! 気持ちは分かるが姫様の邪魔をするんじゃない!」


 感動して私を抱き上げようとするシアさんをクレアさんが全力で阻止に入る。ありがたいわー。


 さすがに声と大きな動きにはすぐ気付いたのか、鼻をヒクヒクとさせるウサギと目が合ってしまった。可愛いけど目と目が合う瞬間好きだと気付かされる事はなかった。

 後はしゃがんでカブを軽く振りながら待機してみよう。


「ふふふ、来るかな来るかなー?」


「どうでしょうねー? 私は姫様の可愛らしいご振る舞いに最早大満足の感無量なので正直どうでもいいです」


「お前は本当に自由な奴だな……」


 うんうん、まったくだよ……、って、来た来た!


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら私の元へ一直線にやって来るウサギ。なにあれ可愛い。

 もしかしたら食べ物系のアイテムをあげる事で仲魔とか使い魔にできたりするんじゃないだろうか? ただのウサギは無理だとしても、モンスターならありえないとは言いきれないね。大きな狼の背中に乗って移動したりとか……? 夢が広がるわー。


 後ほんの1m程度の距離まで近付いたその時!


「ナイフをウサギの心臓ハートにシュゥゥゥーッ!! でございます」


「えっ!?」「何ぃ!?」


 ドスッと嫌な音を立て、ナイフがウサギの体に突き刺さった!! 超! エキサイティン!!

 その一瞬後、モノクロになったウサギは甲高い断末魔の声を上げて砕け散り、刺さっていたナイフごと光の粒子となり消えてしまった。元々白かったから変色具合はよく分からなかったけどね。……じゃなくて!!


「ななななんて事するの!? ただの小動物だってシアさんが自分で言ってたじゃない!」


「さすがに悪乗りのしすぎだぞバレンシア! いい加減にしろ!!」


「いえいえ、これもチュートリアルの一環というものです。姫様もクレアも落ち着いて、今のウサギが消えた場所をご覧ください」


 責められているのに何故かドヤ顔でそう答えるシアさん。

 こんな危ない人の近くにいてはいけない! と、クレアさんの手を取り少し距離をおいてから、言われたとおりに視線をそちらへ向ける。


「う? なんだろあれ」


 ウサギの消えた地面には、一片が10cm程度の四角いカードの様な、薄い板状の物体がクルクルと回りながら浮いている。その数三個。


 あ! これってまさか……!


「なるほど、ドロップアイテムはこんな風に表示されるのか。ええと、姫様? お辛いでしょうが近寄って確認してみましょう」


「う、うん……」


 ニヤニヤしているシアさんはとりあえず無視して、ウサギの遺品(?)に近付いてみる。


 くるくると回っていたカードはどうやらアイテムのアイコンの様で、三個ともそれぞれ違う絵が描かれている。

 時間経過で消えてしまっても困るので、とりあえず急いで全部インベントリに収納してしまう。こういうドロップ方式だと重さがなくてとても助かるね。


「『白ウサギの毛皮』と『白ウサギの肉』と……、う? 『白ウサギのカード』だって。これってもしかしてレアアイテム?」


 モンスターカードと言えば、大体どんなゲームでもそれなり以上の価値がある物。これは幸先がいいのかもしれないが、目の前で可愛いウサギを倒されてしまったショックと比べるとやや損した気持ちの方が強い。


「ほう、カードが出ましたか。まあ、そこまでレアアイテムという訳ではありませんね。コレクションアイテムの様な物なので、とりあえず今はインベントリにしまっておきましょう。説明は使用する機会までのお楽しみという事で……。ふふ」


 なんだレアじゃなかったかー……、ざーんねん!


「シアさんやけに機嫌がいいけど、これはちょっとやり過ぎだからね! 次からはやるならやるってせめて一言断ってからにしてね! 分かった?」


「はい、申し訳ありませんでした。ふふふ」


「反省の色が全く見られんなコイツは……」


 まあ、ウサギは時間経過でいくらでも沸いてくるだろうから、そこまで怒ってるって訳でもないんだけどね。




「あのー、姫様? 先程からどうして地味に距離を取られているのでしょうか?」


「ふーん、シアさんとは暫く手を繋いであげないからねー。きちんと反省するように! クレアさーん」


「はい、抱き上げさせて頂きます。くくっ、ざまあないなバレンシア」


「そんな!! しかし姫様から与えられた罰、喜んで受け入れるとしましょう。では、お二人には暫くその辺りを自由に散策して来て頂きましょうか。私はその間に今手に入ったウサギの肉を焼いて待つとしましょう。上手に焼けましたー!! と聞こえましたらこちらにお戻りくださいね」


「丸焼きにするつもりだね!? まったくもう……。それじゃ、薬草とハーブを見かけたら採取もしてくるねー」


「はい、いってらっしゃいませ。ああ、クレア?」


「なんだ? 姫様の護衛は私に任せておけ、心配するな」


「いえいえ、そうではなく……。散策ついでにまたウサギを見かけましたら狩っておいてください。白ウサギの肉は最序盤の便利な料理素材らしいですから」


「……分かった。姫様、そういうものだと諦めましょう。現実と変わらないと思えばいいのです」


「うん。生き物に感謝の心を忘れずに、だね。ここはゲームの中だけど」


「はい。また一つ成長なさいましたね……。嬉しく思います」




 ゲームなのにやけに空気が重いね……。これが命の重さなのか……!!







次回はまた未定です。

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