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47話 来訪した男たちは思考するヒャッハーさんだった

今回は谷口を中心とする視点です。




「谷口さん、あんなに下手に出ていいのか」


「ああ? しょうがないでしょう。前に淳史のところの偵察を兼ねて東大阪市へ遠征に行ったときって、大阪城の周りにゾンビがこれでもかといたでしょう?

 それが昼間にもかかわらず、ほとんど見られなくなったじゃん」


「言われればそうだな」


「芦田というやつ、どんな手を持ってるかは知らんけど、あいつらは短時間で相当な数のゾンビが倒せて、大阪城を要塞に作り替えるだけの力があるってことだ」


 ルーフにある銃座が軽機関銃を乱射して、走行中のバスに近寄るゾンビを薙ぎ倒していく。


 そんな中で谷口は会見に臨んだ護衛役の足立と大阪城で対面した芦田のことについて意見を交わしている。



「じゃあ、今回は攻めないつもりか」


「あの要塞を攻める? とてもじゃないけど無理だ。

 城門の上から銃が見えてたけどさあ、あの芦田というやつはエロい女一人とわけのわかんないロボットだけで出てきたんだぞ。あれは自分たちだけで俺らを倒せると思ってるんだよ」


「確かにいい体した女だ。あれとヤれたら気持ちいいんだろうな」


「バーカ。ああいうエロい女を隠すのが普通だよ。

 ()()()()連れて来てるということを考えてみろよ、襲われてもやられないだけの自信があるってことだ。

 ——それにしてもうるせえな」


 若者たちが銃眼から小銃で外にいるゾンビを狙撃している。車内で銃声が鳴りひびき、眉をひそめる谷口が座席の横に置いていある缶ビールを飲み干した。



「アッくんとこから逃げてきたやつが話してた、銃が効かなくてマンションを丸ごと燃やせるやつって、あいつらのことかな」


「確信はないけどさ、ほぼ間違いないと俺は睨んでるね。

 淳史(あつし)のとこにいたアホたちを一日で壊滅させられる集団がゴロゴロいてたまるかっつーの」


「アッくんと谷口さんって友達でしょう? 復讐はしないのか?」


「はあ? 復讐ぅ?」


 足立の言葉に機嫌を悪くした谷口は、ビール缶を銃眼から放り投げた。



「あのさあ、淳史のやつはプッツンしてて手当たり次第アホみたいに食い散らかすから、俺らは梅田で領土を広げる()()()()()()、あいつらと別れたんだろ?

 どのみち淳史はいつか死ぬと思ってたんだよ。それが芦田にやられたってこと。

 そういうわけでなんで俺が淳史なんかのために死に行かなくちゃいけないんだよ」


「はあ……」


「それに淳史のやつは俺らを殺す気まんまんなんだぜ? 芦田らがやっちゃってくれて、こっちとしては感謝したいくらいだぜ」


「そうだったな、ごめん」


 谷口は腕を伸ばして足立の首に巻きつく。耳元でよく聞こえるように話しかける。



「いいんだよ。

 ——それよりもさ、今日の話でわかったんだけどさ、あの芦田ってやつは()()()()()()()だけの実力があるってことを自覚してるんだよ。

 人で交換するって言ったときのあいつの顔見たあ?

 あれは奴隷反対! って心で思ってるんだよねえ。

 軟弱なアホたちがさあ、奴隷になっても生き延びられない世の中だっつーのに、アホかっつーの」


「……そうだな。それであいつらをどうする気だ」


「力で勝てないなら知恵でやるしかないっしょ。

 今日の収穫は大きいよ? 少なくとも()()()()()()じゃないことはよくわかった。

 しばらくの間は仲良くさせてもらおうかな? 早くうちに訪問してくれないかな? あー、楽しみだ」


「こっちのビルへ入れちゃうのか」


「当たり前やん。せっかく来てくれるのなら、うちがいかにいい所であるかを知ってもらわんと困る」


 足立の首を放すと、谷口は据え付けてある冷蔵庫からお代わりのビールを取り出した。



「うちってさあ、()()()ってやつ?

 ちゃんと働いたら飯は出るし、役に立たないやつはお腹空くけどゾンビの討伐は無理強いしないし、女だってほしいものをくれてやってるから股が開くんでしょう?

 たぶんだけどさあ、あの芦田ってやつはそれを見てもなにも言わないと俺は踏んでるね」


「え? だって先、奴隷で怒ったって言わなかったか?」


「あいつが淳史を倒してるってことは、淳史のとこで捕まえられてる人を見たってことだよ。

 たぶんあれが奴隷の基準になるじゃないかな?」


「よくわからんがそうかな」


「ほら、労働者の派遣って言ったとき、あいつは反論しなかったっしょ?

 足立さんも勘違いしないようにね。あの芦田ってやつは頭がお花畑だけのお人よしじゃないんだよ。

 あれは敵と認定したら殲滅にかかる()()なのさ」


「善人? よくわからんけど、谷口さんがそういうならそうかも」


「ビール、うめえー!

 ――まっ、いつかは敵対してしまう相手だから、仲良くできるうちは仲良くしましょうよ。

 あの要塞には俺らが欲しいものはいっぱいあるはずだ。それをどうにか手にしたいね、物々交換でな」


 空になった二つ目のビール缶を銃眼から捨ててから、谷口は冷蔵庫の中にあるケーキを取り出して美味しそうに食べ出した。



「戻ったらさあ、船が通っても攻撃するなと徹底させろよ?

 破ったやつはゾンビの地へ全裸で観光の刑な、みんなに伝えておけ」


「わかった」


「あと、あいつらに見習って、俺らもどうにかして漁船を手に入れようよ。お魚、食べたいと思わないか?」


「若い連中に手配させる」


「それと撮ってきた今の大阪城の写真はプリントアウトして。俺が指示出したら大阪市役所に籠城している役人に送ってやれ」


「言われた通りに準備する」


「早起きなんかするもんじゃないね。ビール飲んで、腹がふくれたら眠たくなった。着いてから起こしてくれよ」


 椅子の背もたれを倒すと谷口は目をつぶって昼寝し始める。



 川を越えてから増える一方のゾンビを対応しようと、足立は椅子の下に置いてある散弾銃を手に持ち、後ろで空いてる銃眼から走り寄るゾンビを狙撃し始めた。





谷口は主人公との会話でそれなりの人となりを掴みました。今のところは実力が把握できてないために敵対はしないと決めてます。


谷口有人(25):災害以前は遊び人、アッくんとつるんで悪さばかりしてた。災害後に一緒に武装集団を作り上げたが、暴力のみで統率するアッくんのやり方に危機感を覚え、仲間割れする前に抜け出した。


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