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城での生活




アリアは現在、保護者によって外出禁止令が発動されていた。

保護者と言うのは、もちろんカイルのことである。


「君は目を離すとすぐこれだね」

「…大変申し訳ありません…」


アリアはベッドの上で正座するしかない。

ちなみにこれは王への態度を叱っているのではない。命の危険に遭ったことに対して不満をぶつけているのだ。王よりアリア、というのがカイルらしいのだが。

その後ろで彼女の師匠は吹き出しそうになっているのを堪えている。


「しばらく城から出るのを禁じるよ」

「あの、トゥーラスのギルドに 」

「もう通達はしてある。ダリにお願いした」


なんだかんだでダリの信頼が上がっている。

そりゃアリアが眠っている間、支部長から「それならばダリだけでも!」と言って戻されたのだから当然だ。みんな彼が鬼であることを忘れているのではないだろうか。

カイルが溜息をつくので一層しゅんとなるアリア。

その前に膝をついて、カイルは苦笑しながらアリアの手を握る。


「うるさい保護者だと思うだろう。けれど、君が心配で仕方ないんだよ」

「うるさいなんて思ってません! ごめんなさい、心配かけて…」

「…若いころのシェリーナにそっくりだ。信念が強くて、頑固で、打たれ強い。 君のお母さんも、よく無茶をしてその度に私が注意していたものだよ」


どこか懐かしそうに目を細め、カイルは続ける。


「君と血のつながりはないけれど、君は私の大事な幼なじみの娘だ。おんなじように大事に思っている。 気に掛けることを許してくれるかい?」

「  心配性じゃないカイルさんは、想像できません」


ぎゅっと首に抱き付くと、「確かに」とくすくす笑い抱きしめ返してきた。

セイディアは苦笑しながら「カイルの養女になればいいのに」と言う。


「いい歳して独り身なんだ。使用人たちも飽き飽きしているだろうよ」

「…いい歳して、は君にそっくりそのまま返すよ」


そういえば自由奔放なセイディアはともかく、身分のあるカイルが独身というのは意外だった。彼曰く「仕事ばかりしてたら婚期を逃してしまった」という笑い話らしいのだが。カイルは優しい顔立ちをしているし何より誠実だ。奥さんになりたい人なら、たくさんいそうなものだろう。


「まあでも、全てが片付いたら考えておいてほしいな。屋敷の者たちも、君のことが大好きだからね。喜ぶだろう」

「……はい」


そういえば屋敷に遊びに行くたびに良くしてもらっていた。

たまには顔を出そうかな、と考える。

こんこん、と扉がノックされてメリッサが入ってくる。


「失礼いたします。リリー様より、明日の午後からお茶会のお誘いが来ていますが」

「…さっそくだな」

「…参加させていただきます、とお返事を」

「かしこまりました」


そういえば、とセイディアが思い出したように言う。


「ラッドル伯爵の誘いはどうする? お前の都合に合わせると言っていたので、まだ返事もしていなかったのだが」

「明後日以降ならいつでもと伝えてもらっていいですか? …そういえばオーシャルン国の話は…どうなってます?」

「…その話はちゃんと生きている」


はあー…と溜息をついた。

寝ている間に終わっていればよかったのに。

来週に予定されているらしく、つまりはその時期も城にいなければならないのだろう。というより、カイルの外出禁止令が解除されるまで身動きは取れない。


「ちょうどいい。その間、仕事を手伝ってもらうか」

「いいんですけどねぇ…」


私に仕事押しつけて逃げようなんて思わないでくださいね?

墓穴を掘ったとセイディアが知るのは少し後のことである。







「まあ、いらっしゃいアリアさん!」

「お久しぶりです、リリー様」


次の日、リリー妃に呼ばれたお茶会に行くと、彼女は笑顔でアリアを迎え入れた。

座るように促され、メイドが紅茶を淹れる。

リリーは、ふふっと笑った。


「旦那が貴女を怒らせてしまったようね」

「いえ。私の方こそ、ご無礼をしてしまいました」

「いいのよ。あの人、昔から素直すぎるの。そこがいいところなんだけど、ちょっと気持ちに正直すぎるのよね」


だからセガールはしっかり者に育ったのねー。ウィーリアンは逆に、父似なんだけど。

リリーはそういいながら「今はやっているお菓子よ。召し上がって」とケーキを勧めてくれる。天然な彼女だが、割と冷静には見ているらしい。


「強制的なのは私も好きではないわ。でも、ウィーリアンの傍にいてくれたら安心っていうのも本音。 あの子ったら、毎日あなたの部屋に通って花を飾っていたのよ」

「…ウィーリアンでしたか、あれ」


目が覚めた時も鮮やかなピンク色の花が飾られていた。

その後部屋を訪れたウィーリアンから花束をもらって、それに対しては礼を言っていたのだが。


「あなたのお眼鏡にかなう子はいるのかしら? どんな子がタイプ?」

「え、」

「だって私がいうのもなんだけれど、ウィーリアンってお顔はかっこいいと思うのよ。へたれだけど優しいし。でも、あなたが意識していないのはすぐにわかったわ」


だいぶはっちゃけているリリーにアリアは汗を流し笑みをこわばらせる。

どうやら恋バナをご所望らしい。

申し訳ないが、前世でも恋愛なんて微々たるもの。

「アリア」として生まれてから、自分の恋愛なんて考えたこともなかった。

そんな枯れている自分に答えを求めているリリー。苦行だ。


「タイプですか…えぇ…っとー…」


改めて聞かれると難しい。

だが期待のこもった目で見られているのだから、答えなければならないのだろう。なぜかメイドたちもそわそわと聞き耳を立ててる。


「優しい…のは必要ですね」

「ええ、ええ」

「自分に課せられたことはきちんとやる真面目さも欲しいです」

「そうね」

「あとはー…うーん…  対等、であることでしょうか」


リリーがきょとん、とアリアを見る。

アリアは顎に手をやりつつ、悩みながら口にする。


「人間としての立場というか、関係性と言いますか…。私の根本は魔術師なので、戦うこともあります。その時に、女だから守られるべきだという考えをしない方がいいですね。じゃあ背中は任せた、と言えるような信頼を築ける相手がいいです」

「…それは友人としての理想じゃないのかしら?」

「いえ、私の中では恋愛ですね。だって、何もできずに相手が傷つくのはいやです。それなら庇って死んだ方がましです」

「さっきから状況が戦闘ね…セイディアの教育には問題があるわ…」


すみません、私が特殊なのだと思います。


「端的に言ってしまうと、師匠とカイルさんを足して二で割ったような人がいいのかもしれません。一人一人だと個性が強すぎます」

「ハードルがさらに上がったわよ!?」

「私のことよりも、リリー様は王とどのように恋に落ちたのですか?」


雲行きが怪しくなってきたのでさらりと話題を変えると、案の定飛びついてきた。アリアはリリーの惚気話を微笑ましく聞くのであった。



そんな滅多にしない話をしたせいかもしれない。

アリアはその日の夜、変な夢を見た。

顔はおぼろげでよく見えないが、青年に近い男の子と口喧嘩をしている夢だ。

そして自分は、アリアの姿ではなく前世の姿だった。今のアリアよりも少し年上のようだ。中学生くらいの自分にも見える。


『君はすぐに言い訳をする! 少しは落ち着いて行動しなさい!』

『あんたはすぐにそうやって怒鳴る!』

『誰が怒鳴らせていると思ってる!』

『まあまあ二人とも…』


誰かが仲裁しようとしたが「うるさい!」と「私」に怒鳴られて、後ろにじりじり下がった。


『まったく…。戦うなとは言わない。それが役目だということはわかっている』

『…だったらなんで怒るのさ』

『一人で突っ込むなということだ。 背中くらいは俺に任せなさい』


ふーんだ、とそっぽを向いたけれど、口元がにやけそうになるのを必死に抑えているためのしかめっ面だ。胸の奥がむずむずとして、照れくさい気持ちで満たされていく。

「返事は」と睨まれ「…はーい」と返すと、溜息をついて頭をぽんと叩かれた。

まったく、自分に都合のいい夢だ。


「…うん、理想は、これ…」


一瞬目が覚めて呟いたけれど、どうして懐かしく感じるのかわからないまま、また夢の中に落ちる。名前はやはり憶えておらず、幸せな夢だったという感想しか朝には残っていなかった。


(…この間から、なんか変)


寝起きのぼんやりとした頭でそう思う。

教会で水晶を割ったときにも、白昼夢のように映像が頭を駆け巡った。

聖女・エリーザ…いや、リリアナのこと。自分の妄想力によって発生したイメージだと思っていたのだが、やけにリアルに感じていた。

――五歳の頃、前世の記憶を思い出した時とよく似ている。

まさか、と頭を振ってその考えを否定した。

自己否定は得意中の得意だった。





「師匠、おはようございます」

「ああ」


彼の執務室に行くと、書類で埋まった机の奥から不機嫌そうな返事が返ってきた。

彼の家でも見た光景に、アリアは苦笑いを漏らしながら一部の書類を隣の机に写し、紅茶を淹れてやる。セイディアは仏頂面でそれに口を付けた。


「俺は魔術師だぞ? なぜ事務処理なんざやらんといかん」

「さまざまな決定権が発生しているんですから、仕方ないじゃないですか。文句言う前に手を動かしてください、手を」


愚痴も慣れた様子で受け流す。

やる気を失ったセイディアの代わりに、アリアが書類を分類して処理しやすいように整えていく。すると、「失礼します!」と青年が慌てた様子で入ってきた。


「すみません、寝坊しました!」

「…またか、ルオルク」


ルオルクはセイディアの溜息に顔色を悪くしながら頭を下げる。

だが「師匠、こちらの方は?」という女の子の声に思わず顔を上げた。


「俺の秘書替わりのルオルクだ」

「…こういう大人しそうな人をこき使うの、少しは遠慮してください」

「失礼だな。そいつは自分で志願して俺の下に着いたんだぞ? なあ?」

「は 、はい! 自分がセイディア様の秘書を志願しました!」


ビッ、と敬礼して答えるルオルクにアリアは不憫そうな視線を送る。

すでに洗脳済みだったようだ。


「えっと…あなたは…?」

「失礼しました。セイディア様の弟子で、アリアと申します」

「! あなたが噂の…!」


噂、の言葉にアリアはきょとんとする。


「噂ですか?」

「あ、えっと、その…」

「なんでしょうか」


にこり、と有無を問わさぬ笑顔に「この子確かにセイディア様の弟子だー!」とルオルクはさらに青ざめる。


「その 、トゥーラスギルドには、魔獣さえも手なずける奇跡の少女がいて、国民を悪から守ると…」

「……師匠、誰を消せばその噂なくなりますかね?」

「国ごと消さなきゃ無理だろ」


物騒な会話をする師弟にルオルクはますます身を固くする。


「ルオルク、アリアはしばらく俺の手伝いをすることになっている。仕事の内容を教えてやれ」

「え、しかし…」

「大丈夫です。私がいる間は、師匠は仕事をサボれませんから」

「サボるとは人聞きの悪い。息抜きと言え」

「さっそく手が止まっていますよ」


ん? というように首を傾げ笑みを浮かべれば、セイディアは溜息をついてペンを持った。その様子に茫然としているルオルクに、アリアは主な仕事の内容を聞くのだった。


「ルオルクさんは魔術師なんですか?」

「いえ、僕は魔法士です」

「魔法士?」

「魔法専門の研究者といったところでしょうか。古代の魔法書の解読だったり、魔法の効力や効果を調べて国に報告することが主です」


その他にも魔法石の研究や、それこそ魔術師の補佐官に収まるのも珍しくはない話らしい。


「魔法石…じゃあ、トゥーラスのラロッドさんも魔法士なんでしょうか」

「ラロッド氏と御知り合いなんですか!?」


ルオルクの表情が明るくなる。


「え、ええ、まあ」

「すごい方なんですよ。彼が解明した古代の書物がいくつあったか…それに魔法石に関しては誰も隣に立てないほどの知識を持っています。まだ若いのに国の魔法石の管理も任されているとか」


変人だがな。

どこか遠い目をしているアリアに気づかず、ルオルクはラロッドのことについて語り始めている。セイディアにちらりと視線を向ければ「ほっとけ」というように頷いた。興味にあることに対して、詭弁となるのはいつものことらしい。


「おい、終わったぞ」


昼食をはさみ、午後を回って少ししてからセイディアがそう告げた。

見れば朝には積み重なっていた書類が見事なくなっている。ルオルクが「久々に机の表面を見ました…!」と涙目で喜んでいる。


「終わった書類はどこに届けるのです?」

「文官の部屋だ。そこでさらに仕分けて王に上がっていく」


ルオルクと手分けして運ぶことにした。

なんせ城内の場所がわからない。届きに行きがてら案内をしてもらうことにした。

執務室を抜け階段を上がっていくと、「こっちです」と右にルオルクが歩き出した。アリアはもそのあとを付いていき、一室の扉を開け中に入る。


「失礼します。セイディア様の書類を届けに来ました」

「……セイディア様の、だと?」


中にいた全員が驚愕した顔をする。

どうやら期限内に出したことなど一度もないようだった。いくつか書類を確認して、「確かに…」とまだ驚いている。


「ルオルク、良かったな…今日は残業なしだろ?」

「はい…本当に…」

「…なんかすみません」


居た堪れなくて謝罪しておく。ルオルクがセイディアの弟子だと紹介してくれたので、アリアはせいぜい外面良く挨拶しておいた。


「そういえば短期間だけ弟子殿が城に留まると通達があったな。私はアーサー。この部屋の責任者だ」

「師がいつもご迷惑をおかけします。私がいる間だけでも、仕事はきちんとさせますので」


そう言えば「助かる…」と涙目で頷いた。

大の男を泣かせるなど、セイディアの普段が容易に想像できる。

それから部屋を出て、「あそこが訓練場ですよ」とルオルクが教えてくれる。

中にも室内訓練所があるらしく、今見えているのは外用の場所らしい。

兵たちが訓練しており、その中に見覚えのある赤毛が目に入った。アリアが立っている場所は渡り廊下で、そこまで彼らと離れた距離にいない。むこうも人影に気づいたのかこちらを見ると、「アリア!」と片手を上げた。そして上官らしき男性に「よそ見をするな!」と頭を殴られている。

ちょうど休憩に入ったようで、その人物―カーネリウスが駆けてきた。


「なんだ、城に来てたのか?」

「カーネリウスこそ、こんなところで何をしてるのです?」

「お前がトゥーラスに戻ってから色々と考えてな。訓練生として城の兵になることにしたんだ」


俺の剣なんてまだまだだとわかった、と言ってカーネリウスは笑う。


「そうですか。ミラーは?」

「あいつはお師匠さんに呼ばれて帰郷してる。お前は?」

「…外出禁止令が発動されています」

「…なにしたんだよ」


呆れた顔をされた。

ルオルクに知り合いなので少ししたら戻ります、と伝えてセイディアにもそう言ってもらうことにした。


「おい、カーネリウス! 誰だそのかわいこちゃんは!」

「魔術師のねーちゃんはどうした浮気かー!?」

「そういうのじゃないっすよ!」


やいのやいのとヤジが飛んできて、カーネリウスが苦笑交じり答える。

時間があるなら寄っていけ、というのでカーネリウスと共に訓練所に足を踏み入れる。


「この人たち、俺の先輩と同期」

「アリアと申します。カーネリウスとは一度ギルドでご一緒した仲です」

「セイディア様の弟子ですよ、こいつ」

「……嘘言うなよ。腹筋百回!」

「いやほんとですって!」


信じられない、という視線にアリアは困ったように笑む。

自分だって驚いたのだから仕方がない、とカーネリウスは溜息をついた。

見た目は一瞬息を呑むような可愛らしさだ。だが中身は空けてびっくり、師匠そっくりの鬼畜である。まだ少女の枠から抜けていないが、にこにこと微笑むアリアにカーネリウスの先輩方は少しでれっとした顔をしている。女性と話す機会が少ないのでなおさらだろう。


「背中に剣を背負っているということは、それなりに使えるのか?」

「…はい、多少ですが」


聞いてきたのは背の高い青年だ。

視線があまりよろしくない。品定めというか、全身を舐めるように見られている。それでも表情に出さずに答えれば「手合せしてほしいものだな」と言った。


「確か以前夜会ではケイリズ子息とやりあったとか。奴は同期でね」

「まあ、そうなんですか」

「君のようにかよわい子に遅れをとるとは、まったく情けない話ですがね」


にこり、としたアリアにカーネリウスが頬をひきつらせた。


「…おい、なに考えてる? 外出禁止中少女」

「あらカーネリウス。顔色が悪いけれど、どうしました?」

「ネイビアさん、あまりこいつ挑発しないでくださいよ。 問題児なんです」


カーネリウスが恐る恐る告げるが、全員「あっはっはっ、大げさな」と笑い出した。


「適度に体を動かすことも必要でしょう?」

「適度、ね…」

「これは光栄だ。お手柔らかに頼むよ」

「こちらこそ」


アリアはカーネリウスに「持っててください」とブレスレットを渡す。

ちなみに杖は魔術師がよく使っている収納魔法なるもので、別の空間に保管されている。いわゆる四次元ポケットのようなものだ。魔法で呼べばすぐに手に出来る。

これで完全に武器は剣のみ。

ネイビアも剣を抜いて、笑みを浮かべながら向き合ってきた。


「手加減してやれよ、ネイビア~」

「怪我させるなよ!」

「わかってるって」


いつでもどうぞ、と言わんばかりに片手を上げたので、ご希望通りに一歩踏み出した。ギィン 、と剣同士がぶつかる音が響く。

ぐっと押され驚くネイビアにアリアは目を細める。

カーネリウスは頭を抱えた。


「情けない、ね。フィネガンの方がもっと反応早かったけど」

「くっ…」


アリアから繰り出される攻撃を防ぐが、押され続け一瞬の隙をつかれる。横から薙ぎ払われた剣により、手から自身の武器が飛んで地面に刺さった。

誰も何も言葉を発さない。

その沈黙を破ったのは、カーネリウスの後ろに現れた人物である。


「…なにしてるんですか、アリア殿」

「ガリディオさん! こんにちは。フィネガンも」


ガリディオとフィネガンだった。

アリアはにっこりとした。


「手合せをお願いされたので、そのように」

「どうせネイビアが余計なことを言ったんだろ?」

「御名答。さすが同期ですね」


フィネガンは、ぽんっとカーネリウスの肩を叩く。

ガリディオ経由で知り合ったらしい。あの夜会でもカーネリウスはフィネガンを知っているし、お互いアリアに容赦なく叩きのめされているので打ち解けるのに時間はいらなかった。


「落ち込むな、カーネリウス。アリア殿を止められないのは自然災害と同じものだとこの間納得しただろう?」

「そうっすね…」

「そこのふたり、今すぐ前に出ろ」


低い声で呼びつけると、笑顔で首を横に振った。仲良しか。


「あまりお転婆をすると、あなたの保護者が飛んできますよ?」

「自然災害と同格らしいので諦めてもらいます」

「それにあなたに暴れられると、城の兵は全員使いものにならなくなってしまいます。困りますので、怒りを収めてくださいね」

「はーい」


じゃ、そろそろ戻りますね。

カーネリウスからブレスレットを返してもらい、軽く礼をしてその場を去る。

彼らはようやく、「セイディア・ルーフェンの弟子」の意味を知るのだった。







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