表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された王太子と公爵令嬢が冒険者になる話  作者: 埴輪庭
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/48

第47話 帝国の密偵

 ◆


 日がすっかり暮れ、宵の翼がラスフェルを覆い隠した頃。シャールとセフィラはいまだに宿で話を続けていた。ラスフェルを出て、ヴェイル帝国へ向かう──軽々に判断を下せる類のものではない。


「もう一度、あの男に会うべきだろうか」


 シャールがぽつりと呟いた。


 セフィラは少し考え込むような仕草を見せてから口を開いた。


「わたくしは会うべきだと思いますわ」


「だが相手は帝国の密偵だ。迂闘に接触するのは危険かもしれん」


「そうですわね。ですが、このまま何も知らずに帝国へ向かうよりはましではございませんか」


 その言葉にシャールは顔を上げた。


 セフィラの表情は落ち着いていた。いつもの聡明な瞳が理知的な光を湛えている。幼い頃から政治の駆け引きを間近で見てきた公爵令嬢の血が、こういう時に彼女を冷静にさせるのだろう。


「相手の意図を探った方がいい、ということか」


「はい。ギルドマスターのグレン殿がわざわざ教えてくださったのも、わたくしたちに選択の余地を与えるためでしょう。タマさんが何者であるかを知った上で接触すれば、少なくとも相手の思惑に気づかぬまま踊らされるということは避けられます」


 シャールは黙って頷いた。


「利用されるにしても」


 セフィラは続けた。


「利用されていることを自覚していれば、対処のしようがございますわ。問題は、知らぬ間に手駒にされることでございます」


 その分析は的を射ていた。情報を持つ者と持たざる者では立場が違う。ギンタマの正体を知らぬまま彼の提案に乗っていれば、それこそ帝国の傀儡にされていたかもしれぬ。だがグレンの助言によって二人は対等とまではいかずとも、少なくとも盤上の駒が自らの位置を把握する程度には状況を理解している。


「行こう」


 シャールは立ち上がった。


「赤銅の盾亭へ」


 セフィラもまた静かに頷いて立ち上がる。その表情には覚悟のようなものが浮かんでいた。


 ◆


 赤銅の盾亭は盛況だった。


 入り口の扉を開けると、焼けた肉と安酒の匂いが鼻を突く。店内には木製のテーブルがいくつも並び、酒を楽しむ冒険者たちの姿があった。壁には古びた盾や剣が飾られており、店名の由来であろう赤銅色の大盾が正面の壁に鎮座している。


 シャールとセフィラが店内に足を踏み入れると、奥のテーブルで一人の男が手を挙げた。


 ギンタマである。


 くすんだ茶色の革鎧を纏った彼は、まるで二人が来ることを予期していたかのような顔でにやりと笑った。テーブルの上には既に三つの杯と酒瓶が用意されている。


「来ると思ってたぜ。グレンのおっさんから聞いたんだろ?」


 二人が席に着くと、ギンタマは開口一番そう言った。


 隠すつもりはないらしい。シャールは黙って頷いた。否定しても意味がないと判断したのである。


「まあ、そうなるだろうとは思ってた」


 ギンタマは酒瓶を手に取り、三つの杯に琥珀色の液体を注いだ。


「あの爺さんは義理堅いからな。お前さんたちを見殺しにはしないだろうって踏んでたんだ」


「それで、あなたは何者なんだ」


 シャールの問いは直截であった。正体はすでに知っているが、直接相手の口から聞きたいという想いがあった。


 ギンタマは杯を掲げ、一口含んでから答えた。


「ヴェイル帝国の密偵だ。お前さんも聞いてるんだろ?」


「ああ」


「俺の仕事はこの街で情報を集めることさ。王国の動き、諸国連合の動き、自由都市の内情。色々とな」


 彼は杯を置き、二人の顔を交互に見やった。その鋭い目つきは相変わらずだが、敵意は感じられない。むしろ品定めをしているような、どこか値踏みするような眼差しである。


「だがお前さんたちに関しては、仕事の範疇を超えて興味を持っている。だからちょいと個人的な提案をしてやる」


「提案?」


 セフィラが問い返した。


 ギンタマは頷いた。


「帝国へ渡る手助けをしてやろう、って話だ」


 その言葉にシャールとセフィラは顔を見合わせた。グレンから聞いていた内容ではあったが、当人の口から直接聞くのはまた別の重みがある。


「具体的には」


 シャールが促すと、ギンタマは指を三本立てた。


「まず一つ目。帝国への渡りをつけてやる。国境を越えるだけなら難しくはないが、向こうで身元を保証してくれる者がいなけりゃ話にならん。俺のツテを使えば、正規の手続きを経て入国できる」


 帝国の国境警備は厳しいと聞いている。特に王国からの亡命者に対しては慎重な審査が行われるのが通例だ。だがギンタマの言うように内部に協力者がいるのなら、その障壁は大幅に低くなる。


「二つ目。帝国側の受け入れ先として、冒険者ギルドの支部への紹介状を用意する。帝都ヴァルシオンの支部長とは顔見知りでな。悪いようにはしないと約束しよう」


 冒険者ギルドは各国に支部を持つ国際的な組織であり、ある程度の政治的独立性を保っている。王国の支部に所属していた者が帝国の支部に移籍することは珍しくない。だがその場合も通常は審査があり、素性の知れぬ者が簡単に受け入れられるわけではなかった。


 ギンタマは二本の指を折りたたみ、杯を手に取った。


「どうだ、悪い話じゃないだろう?」


 シャールは黙って考え込んでいた。


 確かに、条件だけを見れば破格と言っていい。帝国への亡命を考えていた二人にとって、これ以上ない申し出である。だがその厚遇には当然、見返りがあるはずだった。


「代償は何だ」


 シャールの問いに、ギンタマは肩をすくめた。


()()何もない」


「今は?」


「ああ。今すぐ何かを求めるつもりはない。ただし」


 彼の目が鋭くなった。


「いずれ帝国がお前さんたちに協力を求めることがあるかもしれない。その時に話を聞いてもらえれば、それでいい」


 シャールは眉をひそめた。


「それは帝国の駒になれということか」


「そう受け取るのは早計だぜ」


 ギンタマは笑った。


「駒になるかどうかはあんたら次第だ。俺はただ、選択肢を増やしてやってるだけさ。協力要請が来た時に断る自由もある。その時点での判断に任せるさ」


「随分と都合の良い話だな」


「そうでもないぜ。俺たちにとってもリスクはある。お前さんたちが帝国に仇なすようなことをすれば、俺の首が飛ぶ。だからこそ、お前さんたちを見極めようとしているんだ」


 その言葉には妙な説得力があった。


 密偵という稼業は信用で成り立っている。自分が推挙した人間が問題を起こせば、推挙者の評価も地に落ちる。ギンタマがこれほど積極的に関わろうとしているのは、二人に何らかの価値を見出しているからに違いない。


「なぜそこまでわたくしたちに肩入れなさるのです?」


 セフィラが静かに問うた。


 その声は穏やかだったが、翠色の瞳は鋭くギンタマを射抜いている。相手の真意を見極めようとする聡明な令嬢の眼差しであった。


 ギンタマは少しの間沈黙した。


 杯の中の酒を見つめ、それから顔を上げた。その表情には先ほどまでの飄々とした雰囲気が消え、どこか真剣な色が浮かんでいる。


「面白いと思ったからだ」


 彼は言った。


「お前さんたちは王国を捨てた。王太子と公爵令嬢という地位を投げ出して、自分の足で歩こうとしている。そういう奴は嫌いじゃない」


「それだけですの?」


「それだけさ」


 ギンタマは肩をすくめた。


「俺は生まれも育ちも貧民街だ。親の顔も知らん。物心ついた時には路地裏で盗みを働いていた。そこから這い上がって今の立場を手に入れたんだ。だからかもしれんな、自分の力で道を切り拓こうとする奴には、つい肩入れしたくなる」


 その言葉が嘘か真かを判断する術はない。


 だがシャールは、この男が完全な嘘を言っているようには思えなかった。ギンタマの目には打算だけでは説明のつかない何かが宿っている。それを信頼と呼ぶには早計だが、少なくとも敵意や害意に類するものではない。


「完全に信用することはできない」


 シャールは率直に言った。


「だが、今は利用し合う関係でいい。そういうことでいいか」


 ギンタマは満足そうに笑った。


「そういう正直さは好きだぜ。下手に信じたふりをされるより、よっぽど気持ちがいい」


 彼は杯を掲げた。


「じゃあ、これからよろしくってことで」


 シャールとセフィラも杯を手に取った。


 三つの杯が小さな音を立ててぶつかり合う。酒場の喧騒の中で、奇妙な同盟が結ばれた瞬間であった。


 ◆


 席を立とうとした時、ギンタマが思い出したように言った。


「ああ、それと」


 二人が振り返ると、彼は少しだけ真面目な顔になっている。


「この街を出るなら、ちゃんと別れを済ませておけよ」


「別れ?」


「ああ。お前さんたちがここで過ごした時間は短いかもしれないが、それでも縁ってもんはできてるだろう。リッキーって少年がいたな。それにセイルとかいう元騎士も。ギルドの連中とも顔見知りになっているはずだ」


 シャールは黙って聞いていた。


「後悔するのは自分だからな」


 ギンタマは杯を置いて立ち上がった。


「挨拶もなしに消えるのは、後々の自分の心に残る。俺もそういう経験があるから言ってるんだ。余計なお世話かもしれないがな」


 その言葉は意外だった。


 密偵という冷徹な稼業に身を置く男から、こうした情緒的な助言が出るとは思わなかったのである。だがギンタマの目には冗談を言っている様子はなく、むしろ自らの経験に基づいた真摯な忠告のように見えた。


「覚えておく」


 シャールは短く答えた。


 ギンタマは軽く手を挙げて別れの挨拶とし、店の奥へと消えていった。


 ◆


 赤銅の盾亭を出た二人はどちらともなく顔を見合わせる。


「行きましょうか」


 セフィラが言った。


 シャールは頷き、二人は宿へと足を向けた。


 これからのことを話し合わねばならない。帝国へ向かうのか、それとも別の道を選ぶのか。そしてもし帝国へ向かうとして、この街で出会った人々にどう別れを告げるのか。考えるべきことは山積している。


 ただ、シャールもセフィラもこの時、すでに半ば以上心は決まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作の長編と短編を宣伝。長編は大体ブクマ1000~1500くらいのやつ。短編は直近二ヶ月で書いたやつをポイント降順に。

【長編】

アステールの血を引く者は魔術に優れる事甚だしく、特にハイン・セラ・アステールはアステール史上もっとも強大な魔力を誇る麒麟児であった。
"本来の歴史" では彼は傲慢で邪悪な典型的悪役貴族であったのだが、並行世界では一味違う。
いや、二味違う。
一味目は、彼が極度のマザコンだという点だ。
平行世界のハインもまた本来の歴史のハインと同様に邪悪なのだが、母への愛が魔と邪を覆い隠す。
勇者も聖女も元婚約者も、彼にとってはどうでもいいことだ。
ハインはただ母と静かに安らかに暮らしたいだけで、それを邪魔する者全てが彼の敵である。
では二味目はといえば、それは彼が本来の歴史のハインよりも遙かに強大な魔力を有し、遙かに強大な魔術を操るという点だ。
愛する母に格好いい姿を見せたいがために努力を重ねた天才──ハインに不可能はない。
「悪役令息はママがちゅき」

幼い頃、家に居場所を感じられなかった「僕」は、母の再婚相手のサダフミおじさんに厳しく当たられながらも、村はずれのお山で出会った不思議な「お姉さん」と時間を共に過ごしていた。
背が高く、赤い瞳を持つ彼女は何も語らず「ぽぽぽ」という言葉しか発しないが、「僕」にとっては唯一の心の拠り所だった。
しかし村の神主によって「僕が魅入られ始めている」と言われ、「僕」は故郷を離れることになる。
あれから10年。
都会で暮らす高校生となった「僕」は、いまだ"お姉さん"との思い出を捨てきれずにいた。
そんなある夕暮れ、突如あたりが異常に暗く染まり、"異常領域"という怪現象に巻き込まれてしまう。
鳥の羽を持ち、半ば白骨化した赤ん坊を抱えた女の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったとき。
──目の前に現れたのは"お姉さん"だった。
「お姉さんと僕」

ライカード王国魔導部隊所属の魔導散兵である君は迷宮の調査探索中、怪しげなポータルを起動させてしまう。
気付いた時には一切見覚えのない風景が広がっていた。
迷宮であることは間違いないが、壁の質感、床の質感、空気の味なにもかもが違う。
未知の迷宮に飛ばされてしまったということなのだろうか。
君はいぶかしみながらも探索をすすめていく。
やがて出口が見えた。
踏み固められた街道、そよぐ木々、風。
なにより道の先にある都市はライカードのものではなかった。
そこは迷宮都市アヴァロン。
君はそこで冒険者として過ごすこととなる。
祖国ライカードへの帰還を夢見ながら
「ダンジョン仕草」

宇宙開拓時代の西暦3889年、ろくでなしの青年…君はとある大勝負に敗北する。
要するに賭けで負けたのだ。
しかし君には金もなければ家もない。
哀れ君は人身売買のブローカー経由で人体実験に参加し、サイバネ手術を受けることに。
体は機械化され、神経は拡張されるも、存在の違和感ともいうべき感覚に苦しむ事になる。
「人間に戻りたい!」
君はそう願い、再度の手術を受けるべく金を稼ぐことにした。
君が目をつけたのは「惑星開拓事業団」だ。
危険な惑星調査の仕事は金になる。
命の危険もあるが、なに、機械の体がなんとかしてくれるさと君は軽く考える。
「★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)」

【短編】

剣士カイトは勇者アルヴィンから追放を告げられた。
そして──!!!!!!
「意識高い系勇者パーティから追放された俺の末路」

「愛している」——その言葉と共に、母の刃が私を貫いた。
過保護な母に命を奪われた絵里が転生したのは、乙女ゲームのような異世界。
伯爵家の令嬢エリスとして第二の人生を歩み始めた彼女を待っていたのは、お約束の婚約破棄だった。
「愛の温度」

ヘルナロウ王国では今、婚約破棄が流行していた。
頭の悪い婚約破棄は最悪である。
当事者たちだけではなく、周囲の者たちや国そのものにも被害を与えるのだ。
ヘルナロウ王国もまた、アホな婚約破棄のせいで被害を被っていた──国家予算の一割を吹き飛ばすほどの大被害である。
「この女は我が妹をいじめた」
「前世が聖女の令嬢に心を奪われた」
貴族の子息たちは次々と愚かな理由で婚約者を糾弾し、その度に決闘、自害、領地間の経済断絶といった惨事が続発する。
頭を抱えるのは宰相グラモン侯爵。
就任一年で彼の白髪は三倍に増えた。
国王も手をこまねくばかりだったが、王妃ヘルザベスがある提案を持ちかける。
──「令嬢たちに、正しい謀略を教えましょう」
講師は「影の女公爵」と恐れられる王妃の姉クロエを筆頭に、王国屈指の策謀家たちである。
「婚約破棄亡国論」

死者三十人超──熊が人を喰い荒らすA県で、知事・熊殺三太夫は「これは戦争だ」と宣言した。
だが都会からは「熊を殺すな」の大合唱。
現場を知らぬ理想主義者たちに知事はとある決断を迫る。
「熊が来る!」

世話焼き雑用メンバーを追放するいつもの話。
「いつもの追放もの」

太平洋戦争架空戦記。
「白い悪魔」

夕暮れの駅のホーム、今にも線路へ吸い込まれそうな女性に男は全力で体当たりを食らわせた。
男の名前は藤巻俊一。
いわゆる、「ぶつかりおじさん」である。
「感電」

極端なフェミニズムが蔓延するアルカディア王国、その王太子であるシャルルはいわゆるスパダリである。
しかしそんな彼でも、さすがに国のあり方についていけないとへこたれてしまった!
その結果──
「フェミ★婚」

大学一年生の健太は突然の家庭崩壊に直面する。
父の浮気相手は部下の男性だった。
だが帰省して開かれた家族会議は、誰も予想しない告白合戦へと変貌していく。
十年以上妻に拒まれ続けた父の苦悩。
抑えきれない性欲に心療内科へ通った過去。
一方の母もまた、幼少期から実父に性的虐待を受けてきたトラウマを抱えていた。
そして健太自身も「実は僕、バイなんだ」と打ち明ける。
壊れた家族。歪んだ愛。
誰もが秘密を隠し、誰もが傷を負っていた。
普通を望みながら普通になれなかった三人が辿り着いた答えは。
「完全破壊家族」

ドラゴン相手に示談交渉、悪党には損害賠償。
法の力で世界を論破する、リーガル・バトルファンタジー。
「悪徳弁護士、異世界へ行く」

曇らせ大好きな青年が魂転移してしまったらしい……
「曇らせる男」

勇者が魔王を倒そうとしなかったらどうなる?
「勇者に放置された魔王の末路」

「愛しい陛下。貴方はただ、その玉座で綺麗に微笑んでいてくださいな」
隣国帝国の八万の大軍が迫る国家存亡の危機。
震えながらも民のため城に残ることを選んだ美貌の国王テリオンに対し、王妃サリィナは優雅に扇子を開いた。
かつて「人形のように退屈」とテリオンに婚約破棄された彼女は、実家公爵家による苛烈な『再教育』を経て、毒を以て毒を制す冷徹な謀略家へと変貌を遂げていた。
「黒薔薇の嗜み」

冒険者パーティ『碧空の翼』の荷物持ちバジルは醜く無能な中年男だ。
そんなある日、彼は仲間に囮として森に捨てられた。
絶望の淵で彼が手にしたのは、若き美女へと変貌する奇跡の力であった。
復讐を誓ったバジルは美貌の魔術師「ジル」となり、かつて自分を見下した男たちの前に現れる。
何も知らない男たちは、かつて蔑んだ男とも知らず、彼女の愛を求めて争い、堕ちていく。
「無能な中年男、男をたぶらかす魔女となり、自分を捨てたパーティメンバーに地獄を見せる」

帝都ティランの会員制サロン「銀枝亭」に集った五人の貴族たち。
話題は庶民の間で流行する「婚約破棄譚」への痛烈な批判だった。
設定の杜撰さ、人物造形の稚拙さ、読者の被害者意識……舌鋒鋭い文芸誌編集主幹カタリナを中心に、知識人たちは存分に嘲笑を重ねていく。
だが談話の果てに浮かび上がったのは──
「阿呆鳥の連環」

呪いの動画を見てしまった。
私は一週間後に死ぬらしい。
でも大丈夫(?)。
地球が三日後に滅びるそうだから、怖くない。
「メテオリック・エクソシズム」

妻を癌で亡くして以来、男は自分が生きているのか死んでいるのかすら判然としないような日々を送っていた。
だが故人をAIで再現するサービスを知り、膨大な写真やメール、声の記録を入力して亡き妻を蘇らせる。
画面越しに再開した会話は空虚だった日常を少しずつ温かく満たしていく、が。
「電影」

ある日を境に、日本中で不可解な事故死が激増した。
一人でいると死亡率が跳ね上がる異常事態。
国民すべての運が急激に悪化したのだ。
かつて「他人と関わるな」が常識だった社会は一変し、人々は見知らぬ者同士で命を預け合うようになった。
「運の尽き」

あるところに女の子がいました。
女の子はもう死にます。
「光り、きらきら」

「私たち四人は対等なの」──女の提案で始まったのは、三人の男が一人の女を共有する異常な日々だった。
弁護士の真司は漁師の啓二、バーテンダーの了と共に、愛する妻・莉子と暮らしている。
かつては嫉妬に狂い、互いに殺意すら抱いた男たち。
しかし奔放な妻に振り回され、同じ苦しみを共有するうちに、敵同士だったはずの三人の間には奇妙な連帯感が芽生え始める。
「オープンマリッジ」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ