表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された王太子と公爵令嬢が冒険者になる話  作者: 埴輪庭
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/48

第23話 幽霊屋敷③

 ◆


 二人は資料庫を出て、受付へと──向かわなかった。


「え!?」とセフィラが驚いたようにシャールを見る。


「どうなさったのですか。依頼を受けに行くのではないのですか」


「いや、その前にもう少し調べておきたいことがある」


 シャールは足を止め、広間の喧騒を見渡しながら言った。


「さっきの記録には違和感があった」


「違和感、ですか」


「ああ。アウストラ家の屋敷は債権者によって差し押さえられたと書いてあった。だが、その後の所有者については何も記されていなかった」


 セフィラの瞳がわずかに鋭さを帯びる。彼女もまた、その点に気づいていたのだろう。


「確かに……入居した者が次々と不幸に見舞われたという記述はございましたが、現在の所有者が誰なのかは書かれておりませんでしたわね」


「百年も前の話だ。債権者たちはとうに死んでいるはずだし、相続が繰り返されていれば所有権の所在も複雑になっているだろう。だが」


 シャールは顎に手を当てた。


「誰かがあの依頼を出している以上、所有者は存在するはずだ。それが誰なのかを突き止めなければ、この依頼の本質は見えてこない」


「どこで調べますか」


「まずは登記所だな。この街の不動産に関する記録はすべてそこに保管されているはずだ」


 ◆


 ラスフェルの登記所は街の中央広場に面した石造りの建物であった。


 ギルドほどの規模はないが堅牢な造りをしており、重要な公文書を保管するにふさわしい威厳を備えている。正面の扉を押し開けると、インクと古紙の匂いが鼻を突いた。


 窓口には中年の男が座っていた。眼鏡をかけ、禿げ上がった頭頂部を手で撫でながら、何やら書類を睨んでいる。


「すまないが、不動産の所有権について調べたいのだが」


 シャールが声をかけると、男は顔を上げてこちらを値踏みするように見た。


「冒険者か。何の用だ」


「旧アウストラ商会の屋敷について知りたい。現在の所有者は誰だ」


 その名を聞いた瞬間、男の表情がわずかに強張った。


「アウストラ……あの幽霊屋敷か」


「そうだ」


「何故そんなものを調べる。あの屋敷に手を出すつもりか」


「清掃の依頼が出ていたのでな。受ける前に調べておきたかった」


 男はしばらくシャールの顔を見つめていたが、やがて小さく溜息をついた。


「……まあいい。調べてやる。少し待て」


 男は椅子から立ち上がり、奥の書庫へと消えていった。


 待つこと数分。男は埃を被った革装丁の帳簿を抱えて戻ってきた。


「これだ。旧アウストラ商会所有不動産に関する記録」


 帳簿を開き、ページをめくっていく。黄ばんだ紙面には細かな文字がびっしりと並んでいた。


「ここだな」


 男の指が一点で止まった。


「王国暦四百二十五年、アウストラ家当主アルベルトの死去に伴い、屋敷の所有権は債権者である商人ヘルマン・ガイストに移転。同年、ガイストの死去に伴い競売にかけられるも買い手がつかず。翌四百二十六年、再度競売。落札者なし。四百二十七年、三度目の競売にて……」


 男の声が途切れた。


「なんだ」


 シャールが促す。


「……冒険者ギルドが落札している」


 セフィラが息を呑む気配がした。


「ギルドが?」


「ああ。王国暦四百二十七年、冒険者ギルドが銀貨百枚で落札。以降、所有権の移転は一切行われていない」


 シャールとセフィラは顔を見合わせた。


「待ってくれ。競売で、と言ったな」


「そうだ」


「それは本当か。直接取引ではなく?」


 男は帳簿を見直し、眉をひそめた。


「いや……待て。ここに注釈がある」


 ページの隅に小さな文字で何かが書き込まれている。


「『本件は競売の形式を取るも、実質的には当時のギルド長とアウストラ家当主アルベルトとの間で事前に締結された売買契約に基づく』とある」


「事前に締結された契約?」


「どういうことだ。アルベルトは借金苦で自ら命を絶ったのではなかったのか」


 男は首を横に振った。


「俺に聞かれても分からん。ここに書いてあることを読み上げているだけだ」


 シャールは黙って考え込んだ。


 事前に契約が結ばれていた。それはつまり、アウストラ家の当主は死ぬ前に屋敷をギルドに売り渡す約束をしていたということだ。


 なぜだ。言うまでもない、借金の返済のためだろう。だが。


「もう一つ聞きたい。アウストラ家を騙した商人たちについて、何か記録はあるか」


「商人?」


「ああ。アウストラ家の資産を食い物にした連中だ」


 男は再び帳簿をめくり始めた。


「……ここに名前が出ている。ヘルマン・ガイスト、フリードリヒ・シュタイン、カール・ブラウン。いずれも当時の有力商人だったようだな」


「彼らはどうなった」


「待て、調べる」


 男は別の帳簿を引っ張り出してきた。商人名簿と書かれた表紙が見える。


「ヘルマン・ガイスト。王国暦四百二十五年、アウストラ家の屋敷を差し押さえた翌日に変死。原因不明」


 シャールの眉が動いた。


「フリードリヒ・シュタイン。同年、自宅の階段から転落して死亡。事故死として処理」


「カール・ブラウン。同年、深夜に路地裏で遺体が発見される。強盗に襲われたものと推定されるも、犯人は不明のまま」


 男は帳簿を閉じた。


「三人とも同じ年に死んでいる。アウストラ家の一族が首を括った直後にな」


 なるほど、だがそれならば金はどこへ行ったのか。三人に渡ったのか、それとも。


 沈黙が落ちた。


 セフィラが小声で呟く。


「復讐……でしょうか」


「分からん」


 男は首を振った。


「だが噂はあった。アウストラ家の亡霊が仇を討ったのだとな。それ以来、あの屋敷に近づく者は誰もいなくなった」


 シャールは礼を述べて登記所を出た。


 外に出ると、陽光が眩しかった。だが二人の心には晴れない靄が立ち込めている。


「シャール」


 セフィラが口を開いた。


「この依頼、やはり普通ではありませんわね」


「ああ」


「依頼主が不明なのではなく、依頼主は冒険者ギルドそのものなのかもしれません。あの屋敷を所有しているのはギルドなのですから」


 シャールは頷いた。


「だとすれば、これは……」


「試し、でしょうか」


 セフィラの言葉にシャールは同意するように目を細めた。


「ギルドが新人冒険者の資質を見極めるために仕掛けた試験。そう考えれば辻褄が合う。報酬が異常に高いのも、依頼主が不明なのも、すべては意図的なものだ」


「ですがそれだけでは説明がつきません」


 セフィラの声が低くなる。


「アウストラ家を騙した商人たちが次々と不審死を遂げている。これはギルドの試験とは関係がない。もっと別の、もっと暗い何かが絡んでいるように思えてなりませんわ」


 シャールは黙って空を見上げた。


 雲が太陽を遮り、街に影が落ちる。


「屋敷の見取り図が手に入らないだろうか」


 不意にシャールが呟いた。


「見取り図、ですか」


「ああ。建物の構造を事前に把握しておきたい。中に入ってから右往左往するのは危険だ」


「ですがそのような古い屋敷の図面など、残っているものでしょうか」


 シャールも同意見だった。百年も前の個人邸宅の設計図など、とうに散逸しているはずである。


 だが念のため確認してみる価値はある。


「建築事務所を当たってみよう。この街で古くから営業しているところがあれば、何か記録が残っているかもしれない」


 ◆


 結果として、見取り図は驚くほど簡単に手に入った。


 街の東区画に店を構える老舗の建築事務所「ヴェーバー設計院」。そこの主人は白髪の老人で、シャールが訪ねた用件を告げると、意外にもすんなりと応じてくれたのである。


「アウストラ家の屋敷か。懐かしい名前だな」


 老人は事務所の奥から古びた筒を持ってきた。中には丸められた羊皮紙が入っている。


「これはうちの曾祖父が手掛けた仕事の記録だ。アウストラ家がこの街に来た時、屋敷の改修を依頼されてな。その時に作成した図面がこれだ」


「貸していただけるのか」


「構わんよ。どうせ誰も見向きもしない古い紙切れだ。返してくれればそれでいい」


 シャールは礼を述べ、図面を受け取った。


 宿に戻り、二人は机の上に図面を広げた。


 黄ばんだ羊皮紙に描かれた線画。屋敷の全体像が俯瞰的に示されている。一階、二階、そして──


「地下がありますわね」


 セフィラが指で示した。


 図面の隅に、地下階の存在が記されている。階段の位置、通路の配置、そしていくつかの部屋。


「一階は応接間、食堂、厨房、使用人の居室。二階は寝室と書斎。典型的な貴族の邸宅の構造だな」


 シャールが図面を読み解いていく。貴族として育った彼にとって、この程度の間取りを理解するのは造作もないことだった。


「セフィラ、この部屋の配置を見てどう思う」


「そうですわね……」


 セフィラも図面に目を凝らす。


「応接間が玄関の正面にあり、来客をまず通す設計になっています。食堂は奥まった場所に配置され、家族の私的な空間として機能していたのでしょう。書斎が二階の角部屋にあるのは、静かな環境で仕事に集中するためですわね」


「使用人の動線も考慮されている。厨房から食堂へは裏階段を通じて直接行き来できる設計だ」


 二人は図面を読み解きながら、屋敷の構造を頭に叩き込んでいった。


 だが、一箇所だけ分からない場所があった。


「この地下室は何だろう」


 シャールが首を傾げた。


 地下階には三つの部屋が描かれている。一つは「食料庫」、もう一つは「酒蔵」と注記がある。だが三つ目の部屋には何の記載もなかった。


「用途不明の部屋……ですか」


「図面を描いた時点では使い道が決まっていなかったのかもしれない。あるいは」


 シャールの声が低くなる。


「意図的に記載しなかったか」


 セフィラの表情が曇った。


「嫌な予感がしますわね」


「ああ」


 シャールは図面から目を離し、窓の外を見つめた。


 西日が街を赤く染めている。影が長く伸び、夕闘の気配が漂い始めていた。


「セフィラ」


「はい」


「この依頼、やめにしないか」


 セフィラが驚いたように顔を上げた。


「やめに……ですか?」


「ああ。調べれば調べるほど、嫌な予感が強くなる」


 シャールは椅子に深く腰掛け、天井を見上げた。


「ギルドが所有者であること。アウストラ家と事前に契約を結んでいたこと。騙した商人たちが不審死を遂げていること。用途不明の地下室。どれも不気味だ」


「確かに……」


「何より、これはまるで誰かに誘導されているような気がしてならない」


 シャールの目が鋭くなる。


「百年前の話にしては情報が出すぎている。調べようと思えば調べられる。だがその情報はすべて、あの屋敷へと向かわせるためのものだ」


「崖に向かって整えられた道……のような」


 セフィラが呟いた。


「そうだ。歩きやすく、分かりやすく、だが行き着く先は断崖絶壁かもしれない」


 二人は顔を見合わせた。


「他の依頼を受けましょう」


 セフィラが静かに提案した。


「この依頼は見送って、もっと普通の仕事を。わたくしたちはまだ新人です。無理をする必要はございませんわ」


 シャールは暫く黙っていたが、やがて小さく頷いた。


「……そうだな。君の言う通りだ」


 図面を丸め、筒に戻す。


「明日、建築事務所に返却しよう。依頼は受けないと受付に伝える」


「はい」


 セフィラの顔に安堵の色が浮かんだ。


 夕食を済ませ、二人は早めに床についた。


 だがシャールは容易には眠れなかった。天井を見つめながら、頭の中であの屋敷のことを考え続けている。


 なぜギルドはあの屋敷を買い取ったのか。


 アウストラ家との契約とは何だったのか。


 商人たちの死は本当に亡霊の仕業なのか。


 地下室には何があるのか。


 答えの出ない問いが渦を巻く。


 結局、その夜、シャールが眠りについたのは夜明け近くになってからだった。


 ◆


 翌日の昼過ぎ、二人はギルドの大広間で別の依頼を物色していた。


「荷運びの依頼があるな。報酬は銅貨三十枚。私はこれにしよう」


「ではわたくしはこの薬草の調薬の依頼を」


 それぞれ木札を手に取り、受付へ向かおうとした時だった。


「よう、シャル」


 聞き覚えのある声が背後から響いた。


 振り返ると、ギンタマが腕を組んで立っていた。その顔にはいつもの人懐っこい笑みが浮かんでいるが、目には鋭い光が宿っている。


「タマさん」


「昨日の依頼、結局どうしたんだ。受けたのか」


 シャールは首を横に振った。


「やめることにした」


「ほう」


 ギンタマの眉がわずかに上がった。


「理由を聞いてもいいか」


「調べれば調べるほど、嫌な予感がした。何かに誘導されているような気がしてならなかった」


「それで引いたと」


「ああ」


 ギンタマは暫く黙ってシャールの顔を見つめていた。


 やがて、その口元がにやりと歪んだ。


「死ななくて済んだな」


 それだけ言って、ギンタマは踵を返した。


「待ってくれ」


 シャールが呼び止める。


「どういう意味だ」


 だがギンタマは振り返らなかった。


 片手を軽く上げ、そのまま人混みの中へと消えていく。


 残されたシャールとセフィラは顔を見合わせた。


「死ななくて済んだ……」


 セフィラが小さく呟く。


「やはり、あの依頼は……」


「ああ」


 シャールは静かに頷いた。


「本当の爆弾依頼だったのかもしれないな」


 あるいは、それ以上の何かだったのかもしれない。


 だが今となっては確かめようがない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作の長編と短編を宣伝。長編は大体ブクマ1000~1500くらいのやつ。短編は直近二ヶ月で書いたやつをポイント降順に。

【長編】

アステールの血を引く者は魔術に優れる事甚だしく、特にハイン・セラ・アステールはアステール史上もっとも強大な魔力を誇る麒麟児であった。
"本来の歴史" では彼は傲慢で邪悪な典型的悪役貴族であったのだが、並行世界では一味違う。
いや、二味違う。
一味目は、彼が極度のマザコンだという点だ。
平行世界のハインもまた本来の歴史のハインと同様に邪悪なのだが、母への愛が魔と邪を覆い隠す。
勇者も聖女も元婚約者も、彼にとってはどうでもいいことだ。
ハインはただ母と静かに安らかに暮らしたいだけで、それを邪魔する者全てが彼の敵である。
では二味目はといえば、それは彼が本来の歴史のハインよりも遙かに強大な魔力を有し、遙かに強大な魔術を操るという点だ。
愛する母に格好いい姿を見せたいがために努力を重ねた天才──ハインに不可能はない。
「悪役令息はママがちゅき」

幼い頃、家に居場所を感じられなかった「僕」は、母の再婚相手のサダフミおじさんに厳しく当たられながらも、村はずれのお山で出会った不思議な「お姉さん」と時間を共に過ごしていた。
背が高く、赤い瞳を持つ彼女は何も語らず「ぽぽぽ」という言葉しか発しないが、「僕」にとっては唯一の心の拠り所だった。
しかし村の神主によって「僕が魅入られ始めている」と言われ、「僕」は故郷を離れることになる。
あれから10年。
都会で暮らす高校生となった「僕」は、いまだ"お姉さん"との思い出を捨てきれずにいた。
そんなある夕暮れ、突如あたりが異常に暗く染まり、"異常領域"という怪現象に巻き込まれてしまう。
鳥の羽を持ち、半ば白骨化した赤ん坊を抱えた女の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったとき。
──目の前に現れたのは"お姉さん"だった。
「お姉さんと僕」

ライカード王国魔導部隊所属の魔導散兵である君は迷宮の調査探索中、怪しげなポータルを起動させてしまう。
気付いた時には一切見覚えのない風景が広がっていた。
迷宮であることは間違いないが、壁の質感、床の質感、空気の味なにもかもが違う。
未知の迷宮に飛ばされてしまったということなのだろうか。
君はいぶかしみながらも探索をすすめていく。
やがて出口が見えた。
踏み固められた街道、そよぐ木々、風。
なにより道の先にある都市はライカードのものではなかった。
そこは迷宮都市アヴァロン。
君はそこで冒険者として過ごすこととなる。
祖国ライカードへの帰還を夢見ながら
「ダンジョン仕草」

宇宙開拓時代の西暦3889年、ろくでなしの青年…君はとある大勝負に敗北する。
要するに賭けで負けたのだ。
しかし君には金もなければ家もない。
哀れ君は人身売買のブローカー経由で人体実験に参加し、サイバネ手術を受けることに。
体は機械化され、神経は拡張されるも、存在の違和感ともいうべき感覚に苦しむ事になる。
「人間に戻りたい!」
君はそう願い、再度の手術を受けるべく金を稼ぐことにした。
君が目をつけたのは「惑星開拓事業団」だ。
危険な惑星調査の仕事は金になる。
命の危険もあるが、なに、機械の体がなんとかしてくれるさと君は軽く考える。
「★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)」

【短編】

剣士カイトは勇者アルヴィンから追放を告げられた。
そして──!!!!!!
「意識高い系勇者パーティから追放された俺の末路」

「愛している」——その言葉と共に、母の刃が私を貫いた。
過保護な母に命を奪われた絵里が転生したのは、乙女ゲームのような異世界。
伯爵家の令嬢エリスとして第二の人生を歩み始めた彼女を待っていたのは、お約束の婚約破棄だった。
「愛の温度」

ヘルナロウ王国では今、婚約破棄が流行していた。
頭の悪い婚約破棄は最悪である。
当事者たちだけではなく、周囲の者たちや国そのものにも被害を与えるのだ。
ヘルナロウ王国もまた、アホな婚約破棄のせいで被害を被っていた──国家予算の一割を吹き飛ばすほどの大被害である。
「この女は我が妹をいじめた」
「前世が聖女の令嬢に心を奪われた」
貴族の子息たちは次々と愚かな理由で婚約者を糾弾し、その度に決闘、自害、領地間の経済断絶といった惨事が続発する。
頭を抱えるのは宰相グラモン侯爵。
就任一年で彼の白髪は三倍に増えた。
国王も手をこまねくばかりだったが、王妃ヘルザベスがある提案を持ちかける。
──「令嬢たちに、正しい謀略を教えましょう」
講師は「影の女公爵」と恐れられる王妃の姉クロエを筆頭に、王国屈指の策謀家たちである。
「婚約破棄亡国論」

死者三十人超──熊が人を喰い荒らすA県で、知事・熊殺三太夫は「これは戦争だ」と宣言した。
だが都会からは「熊を殺すな」の大合唱。
現場を知らぬ理想主義者たちに知事はとある決断を迫る。
「熊が来る!」

世話焼き雑用メンバーを追放するいつもの話。
「いつもの追放もの」

太平洋戦争架空戦記。
「白い悪魔」

夕暮れの駅のホーム、今にも線路へ吸い込まれそうな女性に男は全力で体当たりを食らわせた。
男の名前は藤巻俊一。
いわゆる、「ぶつかりおじさん」である。
「感電」

極端なフェミニズムが蔓延するアルカディア王国、その王太子であるシャルルはいわゆるスパダリである。
しかしそんな彼でも、さすがに国のあり方についていけないとへこたれてしまった!
その結果──
「フェミ★婚」

大学一年生の健太は突然の家庭崩壊に直面する。
父の浮気相手は部下の男性だった。
だが帰省して開かれた家族会議は、誰も予想しない告白合戦へと変貌していく。
十年以上妻に拒まれ続けた父の苦悩。
抑えきれない性欲に心療内科へ通った過去。
一方の母もまた、幼少期から実父に性的虐待を受けてきたトラウマを抱えていた。
そして健太自身も「実は僕、バイなんだ」と打ち明ける。
壊れた家族。歪んだ愛。
誰もが秘密を隠し、誰もが傷を負っていた。
普通を望みながら普通になれなかった三人が辿り着いた答えは。
「完全破壊家族」

ドラゴン相手に示談交渉、悪党には損害賠償。
法の力で世界を論破する、リーガル・バトルファンタジー。
「悪徳弁護士、異世界へ行く」

曇らせ大好きな青年が魂転移してしまったらしい……
「曇らせる男」

勇者が魔王を倒そうとしなかったらどうなる?
「勇者に放置された魔王の末路」

「愛しい陛下。貴方はただ、その玉座で綺麗に微笑んでいてくださいな」
隣国帝国の八万の大軍が迫る国家存亡の危機。
震えながらも民のため城に残ることを選んだ美貌の国王テリオンに対し、王妃サリィナは優雅に扇子を開いた。
かつて「人形のように退屈」とテリオンに婚約破棄された彼女は、実家公爵家による苛烈な『再教育』を経て、毒を以て毒を制す冷徹な謀略家へと変貌を遂げていた。
「黒薔薇の嗜み」

冒険者パーティ『碧空の翼』の荷物持ちバジルは醜く無能な中年男だ。
そんなある日、彼は仲間に囮として森に捨てられた。
絶望の淵で彼が手にしたのは、若き美女へと変貌する奇跡の力であった。
復讐を誓ったバジルは美貌の魔術師「ジル」となり、かつて自分を見下した男たちの前に現れる。
何も知らない男たちは、かつて蔑んだ男とも知らず、彼女の愛を求めて争い、堕ちていく。
「無能な中年男、男をたぶらかす魔女となり、自分を捨てたパーティメンバーに地獄を見せる」

帝都ティランの会員制サロン「銀枝亭」に集った五人の貴族たち。
話題は庶民の間で流行する「婚約破棄譚」への痛烈な批判だった。
設定の杜撰さ、人物造形の稚拙さ、読者の被害者意識……舌鋒鋭い文芸誌編集主幹カタリナを中心に、知識人たちは存分に嘲笑を重ねていく。
だが談話の果てに浮かび上がったのは──
「阿呆鳥の連環」

呪いの動画を見てしまった。
私は一週間後に死ぬらしい。
でも大丈夫(?)。
地球が三日後に滅びるそうだから、怖くない。
「メテオリック・エクソシズム」

妻を癌で亡くして以来、男は自分が生きているのか死んでいるのかすら判然としないような日々を送っていた。
だが故人をAIで再現するサービスを知り、膨大な写真やメール、声の記録を入力して亡き妻を蘇らせる。
画面越しに再開した会話は空虚だった日常を少しずつ温かく満たしていく、が。
「電影」

ある日を境に、日本中で不可解な事故死が激増した。
一人でいると死亡率が跳ね上がる異常事態。
国民すべての運が急激に悪化したのだ。
かつて「他人と関わるな」が常識だった社会は一変し、人々は見知らぬ者同士で命を預け合うようになった。
「運の尽き」

あるところに女の子がいました。
女の子はもう死にます。
「光り、きらきら」

「私たち四人は対等なの」──女の提案で始まったのは、三人の男が一人の女を共有する異常な日々だった。
弁護士の真司は漁師の啓二、バーテンダーの了と共に、愛する妻・莉子と暮らしている。
かつては嫉妬に狂い、互いに殺意すら抱いた男たち。
しかし奔放な妻に振り回され、同じ苦しみを共有するうちに、敵同士だったはずの三人の間には奇妙な連帯感が芽生え始める。
「オープンマリッジ」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ