イノシシはともかくヤギは毒草も食べてしま可能性があるから取り去らんとな。
さて、子ヤギも無事に生まれ、母ヤギの乳を吸ってすくすくと育っている。
それにより余ったヤギの乳を搾乳して水瓶にためておくことで、ヤギの乳を飲むことができるようになったし、さらに余ったら多少なりとも保存ができるように、鹿の胃袋などを使ってチーズに加工したりもしている。
「あとはお前さんたちが、間違って食わないように小屋の周りの毒草を除去しておかんとなぁ」
「んめー」
子供がいるメスヤギは草などを食べる量が多いので、特に注意が必要だ。
子ヤギは草に対する嗜好性が狭く、草のえり好みするのでさほど心配ではないのだが。
ドクゼリやトリカブトなどは特に危険だが、ワラビやセリといった人間はあく抜きをして食べることができる野草もヤギが食べるとやばかったりするし、梅、沈丁花や金鳳花、石楠花、馬酔木、ギシギシといった植物も危険だったりする。
とはいえ、野生に近いヤギには自分で毒のあるなしをより分ける能力が最低限はあるようではあるのだが。
「こういう時はお前さんたちが頼りになるな」
「きゅぴー」
「じゃあ野草を積むついでに、毒草を刈り取ってくるからな」
「はい、気を付けていってきてくださいね」
マオが微笑んでそういうと二人の子供も見送ってくれる。
「いってらっしゃー」「らっしゃー」
「んじゃ行くぞ」
「きゅぴー」
猪も雑食性だが、かなり鼻がきくこともあって毒のあるものを食べることはほとんどない。
なので親と一緒に瓜坊たちを連れて毒草を刈り取りに行く。
「これはドクセリか、さっさと除去しとかないとな」
ドクセリはトリカブト並みに危険な毒草であるのだが、食べることのできるセリと結構似ているので危険だったりする。
こういった食べられる野草に似ている毒草が結構多かったりするんだよな。
トリカブトも食べられ、薬にもなるヨモギに結構似ていたりするしな。
そんな調子でセリを中心として、食える野草を摘みつつ、毒草の除去も進めていく。
まあ、そんなに焦ってやらないでも、小屋の周辺から少しずつ進めていけば大丈夫だろう。
「あとは鴨か鴈でも狩りに行くか」
冬に暖かい場所へとやってくる渡り鳥はもうすぐ北へと帰って行ってしまうからな。
俺は食える野草とイノシシたちを小屋へ置いていき、弓矢と小刀をもって沢へと行く。
「お、いたいた」
蒼い首をしたマガモが沢を泳いでいるが、食用としてカモ肉の中でもマガモの肉は質、量ともに最高のものでもある。
俺は弓に矢をつがえて、引き絞りそれをマガモに向けて放つ。
”ギャ”
と、鴨に矢が刺さり俺は仕留めることに成功した。
鴨は人間に対する警戒心が弱いうえに動きも機敏でないので狩猟対象としては重宝するのだな。
それでも鴨が絶滅したりしないのは繁殖力が高いからというのもあるが、渡り鳥で生息範囲が広いというのもあるのだろう。
そして、仕留めた鴨だがまずは速攻で冷やすために縄でくくって沢に投げ込み、よく冷えたら手近な木に逆さ吊りにして、頸動脈を切って放血し、排泄口すぐ上を小刀で内臓が見えるように切開する。
そして腸の排泄口直前のところをつまみ、そのままちぎり取り、肺以外の内臓をすべて出す。
内臓と腹腔内を水で洗浄してあとは小屋へ持って帰る。
「もどったぞー。
今日はセリと鴨で鴨鍋だ」
旬の時期のセリと鴨に肉の鍋は滅茶美味いんだよな。
「はいはい、では料理してしまいますね」
「ああ、頼むぞ」
という訳で鍋の準備はマオに任せ、その間に俺は鴨の内臓を狼たちに食わせる。
「だいぶ射貫けてるが我慢してくれな」
「きゅーん」
狼たちはがつがつ食べてるが量的には足りないので多分、あとで狩りに出かけるだろう。
野兎や野ネズミも活発に動き出してるから獲物に困ることはないはずだ。




