マオとその子供たちとの出会い
さて、寒い地域では冬の漁は水面に張った氷を切り取り、漁網を投げて魚を獲ることになるが幸いこの辺りは暖かく湖面が一年中凍り付くことはない。
大した道具もないのに氷を切るとか一人でやるのは正直しんどいしな。
もっとも寒いときに水の中に落ちるのは勘弁ではあるが。
「よっと!」
岸から網を湖に海に投げてから綱を引いて引き寄せると網の中には40センチほどの大きさのコイや淡水にすむタラであるロタロタ(カワメンタイ)などが入っていた。
ロタロタは水温の低い大河・湖・溜池に生息するナマズに似た魚であるが底生で遊泳力が低く、鰭が体に比べて小さいうえに日中は、水底に掘った巣穴の中にいることが多いため冬以外はなかなか捕まえにくいのだが冬には繁殖のため浅瀬に移動してくるのでかえって捕まえやすくなるのだな。
そして凄く美味しいのがうれしいのだ。
「よし、これだけ獲れれば十分だな」
そんなことをしていたら後ろから声がかけられた。
「あ、あの。
どうか子供に食べる物を分けてくださいませんか?」
「ん?」
後ろを振り向くと小さな子供の手を引いた若い女が立っていた。
子供は二人いて姉と弟かな?
おそらく5歳と3歳程度だろう。
「お前さんも子供もやせほそっているが一体なんでこんなところに?」
「私たちの住んでいた村が戦渦に巻き込まれまして……女子供は逃げろと村から逃げてきたのですが……」
「そうか……分かった。
ちょうど魚も取れたところだし山小屋で一緒に来てくれ」
「あ、ありがとうございます」
「ちなみに俺の名前は孟武だ」
「私はマオと申します」
そして俺たちは小屋に戻り、俺は先ほどとった魚をさばく。
頭、肝、尾、ヒレ等を落として切り身を作って、一緒に卵も入れて土器で煮込んでから食べる。
「ほれ、お前さんたちが先に食べろ」
「ありがとうございます」
「ありがと、おっちゃん」「おいちゃんありがとー」
基本的に成人は15歳で行い同時に結婚もするのが普通だが、徴兵は20歳になってからが普通なのでその間に子供を作るわけだ。
もっとも徴兵された旦那が死んだり大けがをして働けなくなったり、逃げ出して行方知れずになったりすることも少なくはないが。
「ん、脂が十分乗ってるな」
透明なスープだがロタロタから出るだしの味で十分にうまく感じる。
「で、まあお前さんたちどこか行く当てなり世話になれる親類知人はいるのか?」
俺がそう聞くとマオは小さく首を横に振った。
「いえ、もともと村から出たこともありませんでしたし」
「そうか、ならお前さんたちがよければここにいたらどうだ?
俺としても人が増えてくれた方がいろいろ助かるんだが」
「そう、ですね。
そうさせていただけると私たちも助かります」
マオがそういうと子供たち二人は素直に喜んでいるようだ。
「わーい、これでおなかすいて死にそうにならないで済むね」
「そうだね、姉ちゃん」
まあ成人して結婚している以上体力が回復すれば家事の類は問題なくできるだろうし、幼子二人を含めての4人分くらいの食料なら十分得られるだろう。
まあ最悪は猪を食べることになるかもしれないがな。




