第二章16 再来! 「かも」が多い人!
突如、虚空を無数の紫電が駆けた。
器用に魔術師達を避け、騎士達に降り注ぐ。
荒れる雷光。轟く雷鳴。
青白い光は槍の如く、盾をいとも容易く貫通し、騎士達を刺し穿つ。騎士達は悲鳴を上げる間もなく絶命。
燻る煙が晴れた後に、二の足で立っている者など、ただ一人としていなかった。
たった数秒で、形勢逆転。
一気に不利な状況に立たされた。
「こ、これは!?」
「そんな……」
「ちっ……やはりか」
惨憺たる光景から、雷閃が飛んできた方向に目を移す。
魔術師達の向こう。左手に〈契約奴隷〉を抱え、右手を掲げる一人の男がいた。
「真打ちの登場……かも」
その男は、どこかで聞いたことのある間抜けそうな声を発しながら、ゆっくりと近づいて来る。
「あ、あんたは!?」
その男の顔を認識した瞬間、僕は思わず声を上げた。
「久しぶりかもね」
「え? なになに? おにいあの人と知り合いなの?」
喰い気味に袖を引っ張ってくるフィリアに「まあ」と短く返して、その男に向き直った。
「昼間、西地区であったモブCじゃないか!」
「な、名前を知らないからって、その雑な名前はやめてほしいかも。僕の名前はカモミール=カモンヌかも」
「名前ややこしいよ! せめて名前に「かも」は要らないでしょ!」
「五月蠅いかも。好きでこんな名前じゃないかも」
カモミールは不服そうに口を尖らせる。
「おいカース」
「なに?」
不意に口を開いたロディの方を見る。
瞬き一つせず、ロディはカモミールを睨みつけていた。その額には、似合わない脂汗が微かに浮いている。
「さっきも言ったが、気ぃつけろよ。こいつ、ふざけた名前をしてるが、腹立たしいくらいデキるヤツだ」
「どうやら、そうみたいだね」
たった今、次元の違う攻撃を見せられたからわかる。盾を貫通する雷撃魔法の威力に加えて、数十本同時に起動し、味方を避けて敵だけに当てるコントロール能力。
魔術には詳しくないけれど、ため息が出るほどの超絶技法だということだけはわかる。王宮魔術師団の頂点に君臨するレイシアが捕らえ損ねたのも、納得せざるを得なかった。
「こりゃあ、俺達二人でかかっても勝てるかわかんねぇな」
「ちょっと。なんでフィリアは入ってないの?」
「お前は戦力外だからだ」
「泣くぞこらぁ!」
強敵を前にして実に平常運転なロディとフィリア。
なんというか……緊張感がなさ過ぎて心配だ。
「二人で闘うってことに関しては、ある意味正解かも」
だが、不意にカモミールが水を差した。
「それってどういう……」
「あっちを見て欲しいかも」
カモミールは顎をしゃくり、西の方向を示した。
「あっち?」
僕達は、西地区の方に目を向ける。
刹那。
激しい地鳴りと共に、王宮魔術師団が防衛に当たる西地区の方向で、一際大きな爆炎が上がった。




