第六章18 息つく暇なき連携
その瞬間。
「やらせん!」
凜とした声が、辺りに響き渡る。
声の主は、ネイルから数十メートルほど距離を取った場所に立つ、レイシアだった。
彼女の足下には、五芒星と四つの光の輪が組み合わさった、複雑な魔法陣が展開され、音を立てて駆動している。
(そ、その魔法陣は……ッ!)
僕は驚きに目を見開く。
間違いなく、テレサに勝利した際使ったものと同じ。
九つの水晶と、膨大な量の魔力を組み合わせて起動する、レイシアの必殺技だ。
どうやら、一回目の攻撃を放った後、すぐに魔法陣の構築を始めていたらしい。
魔法陣は既に起動状態。
空を見上げれば、火球より更に上空の位置に、巨大な氷塊が浮いていた。
『なっ、いつの間に!』
「悪いな、カース達が貴様に攻撃を仕掛けている間に、必殺技の準備をさせてもらった」
レイシアはにやりと笑い、呪文を唱える。
「《必殺―第九園―堕天の氷塊》ッ!」
刹那。
浮いていた氷塊が、ネイルの火球めがけて落下。
燦然と輝いていた炎が、白い冷気に包まれ、瞬く間に光を失っていく。
消えていく炎。
溶けていく氷。
炎と氷は互いを打ち消し合いながら、遂には双方共に消滅してしまった。
『おのれぇえええ!』
地面に降り立ったネイルは、額に青筋を立てて、レイシアを睨みつける。
指先に炎を灯し、レイシアに向けて放とうとして――
「させませんわ!」
今度は、ネイルの背後にまわっていたテレサが、口早に呪文を唱える。
「《削命法―暴風―三連符》ッ」
渦巻く突風の槍が三つ、ネイルへ肉薄する。
『なんだと!?』
ネイルが振り返ると同時に、突風が彼の背中を激突する。
『ぬぉおおおおおッ!』
続けざまに二発、ネイルの身体を直撃。
突風に巻き込まれてもみくちゃにされながら、吹っ飛んでいくネイル。
「カース様、今ですわ!」
「了解です! じゃあ、変化!《女》ッ!」
テレサの合図に合わせて、魔法の言葉を唱える。
身体の構造が作り変わり、女の状態へ。
それと同時に、体内に流れる魔力をはっきりと感じた。
懐から琥珀を取り出して、人差し指と親指の間に挟む。
それから左目の前に、指で挟んだ琥珀を持ってきて、突風に翻弄されているネイルの姿を琥珀の中に映した。
魔術触媒をレンズ代わりにした、攻撃姿勢。
いわゆる、狙撃の体勢である。
「《珠玉法―琥珀・光輝》ッ!」
呪文を括ると同時に、琥珀が輝きだし、眩い閃光となって一直線に駆け抜ける。
闇夜を裂く一条の光は、ネイルの腹部に直撃。
『ぐぉッ!?』
ネイルはくぐもった声を上げて、口から赤い飛沫を吐く。
そのまま地面の上を転がって行った。




