表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

フェンス

作者: 空波ナユタ

 小さく小さく押さえ込んだ想いなど、アナタは気づく余地すらなくって。それでもいいと思える諦めたアタシがいて。小さくしぼんだ想い達が、わーんって泣いてた。

 フェンス越しは、いつも、なんだか、壁を感じてしまう様で嫌いだけれど、まるで、それは、私と彼の距離をしっかりと、反映してくれてる様で少し安心した。

 ガットに当たって、バウンドする黄色いテニスボールを目で追うより、アナタの額から流れる汗ばかりを、目で追う事になれてしまったから、私は審判が出来ないね。

 黒のラケット、PrinceのO3 Hybrid 27 MP。覚えちゃったよ、ラケットの名前。

 

 少し笑って少し笑って少し笑って、少し泣く。


 あの頃は、あんなに仲良しだったのに、どうしてだろうね。

 クラスとか時間とか意外にも、そんな隔たりは、けっこう大きな壁だったんだね。

 そう心の中で呟いて、立ち上がる。

 けれども、何かがアタシを引き止めてくれた。


 「おーーーーーい、田口!そのボールとって!」


 足元を転がる黄色いボール。アナタが打ってた黄色いボール。ずいぶんと、オーバーなショットしたね。

 後ろで申し訳なさそうにする彼を一瞬見て、彼の友達にオーケーサインを出す。


 「分かったー!投げるよー!」


 草むらで横たわる古びたラケットを持って、テニスボールを掴む。

 フェンス越しの彼らは、少し驚いてた。

 手で投げると思った?

 少し笑って、構える。テニスボールを宙に上げる。

 空が見える。

 心地のいいショット音と、心地のいいラケットに当たったボールの感触。そして、ボールは、フェンス越しに舞い降りた。


 「サンキュ!うまいなー、お前!」


 「ありがと」


 そう言って半べそになって、教室に戻る。

 やっぱり、昔には戻れないみたいよ。


 「・・・田口!待って」


 振り返って 手招きされて 近づいて



 フェンス越しにアナタがいて



 柄にもなく緊張して



 彼のラケットのグリップを見つめて



 グリップまでPrinceかよ、って思って



 アナタの額の赤いにきびをみて


 

 少しだけ、ドキリと、胸がなった。



 「田口、うまくなったな」


 そういい残して、コートに戻ってた。


 「言い逃げかよ」


 小さく呟いた私の笑いの混じった声は、風に流されてしまった。

 向こう越しのフェンスは相変わらず遠いけれど、アタシと彼の距離は、少しだけ近いようにさえも感じれる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 詩の様な空想的な感じのする作品でした。この作品はケータイで書きましたか?不自然な句読点があったのでつい…。短編として大切な、『短い話の中で、いかに伝えきれるか』ということが良く出来ていると思…
[一言] はじめまして、灯夜って言います。 読みやすくて、個人的に好きな感じの作品でした。 フェンスと距離を、上手く使えていると感じました。 後は、句読点や三点リーダ(…の事)の使用など、文法を直すと…
[一言] 内容に関しては良かったです。ただ文章面ですが、『、』の使いすぎにより読みにくくなっています。折角の内容を崩してしまう原因にもなりうるので、必要なヶ所にのみ打つようにしましょう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ