第22話 新型人形
「凄い⋯⋯」
僕は思わず声が出た。レーナさんの後に続いてダンジョン内へ入る。ダンジョンの中なのに、とても広々した草原が目の前にあった。
「魔獣が増えたのも、このダンジョンが原因ね。広いけれど深くはないのが助かるわね」
ビッグホーンラビットも、このダンジョンからやって来た可能性が高かった。遭遇した魔物の大半はこのダンジョンの魔物だ。時間がないのでレーナさんに借りたナイフで魔晶石だけ取った。
「レン君、リリー。探知の輪を広げてみて。シャンなら気づくはずだわ」
(────聞いたでしょ、レン⋯⋯シャンたちのイメージを思い浮かべて! アタシが思念を飛ばすからさ! ────)
言われたように僕はシャンさんたちの姿を想像する。僕に出来ることは精一杯やるだけだ。
無事でいて下さい────リリーの探索の魔法にどういう効果があるのかわからない。でも願わずにはいられなかった。
(────いた! ────)
僕にもシャンさんたちの姿が見えた気がした。無事⋯⋯だけどピンチ?
「リリー⋯⋯レン君には、わたしが魔力供与するから、これに乗って案内してくれるかしら」
レーナさんが差し出したのは、僕の世界のロボットアニメそっくりな人形だった。
「リリー、カッコいい〜」
リリーの姿は妖精型の手乗り人形と違って、鎧を着たようにも見える。
「カルミアからせしめて来た、器械式妖精人形よ。魔力出力は以前の五倍はあるわよ」
リリーが目をキラキラさせて僕とレーナさんの側をグルグル回り、シャンさんたちに向かって飛び出した。確かに速い。
「レン君、飛ばすわよ」
レーナさんがそう言うなり、僕は温かな魔力に包まれた。そして身体が浮いたと思った瞬間、遠ざかるリリーにあっという間に追いついたな⋯⋯そう見えたまま意識を失った。
「⋯⋯!!」
「⋯⋯?!」
慌てる人たちの声がする。頭がガンガン痛み、寒さと急な吐き気までして来た。この身体になってから風邪はひいたことがないので、久しぶりに身体が重怠い。
何となく身体の弱り始めた頃を思い出すと、聞き覚えのある人たちの声がした。
「レン、しっかり!」
「レン、起きるニャ!」
「レン君ごめんね、耐えられるかと思ったの」
みんなが心配して声をかけてくれる。きっと僕はまた倒れてしまったんだ。でも見捨てられることはなかった。母のようにみんなが僕を囲み声をかけてくれたので、僕は再び意識を閉ざし、眠った⋯⋯。




