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第19話 英雄への一歩は手斧一本から


「まっすぐで良い子ね。カルミアが心配して意地悪したのもわかるわ」


 レーナさんは頭を撫でながら、面白そうに僕の顔を覗き込む。


「やりたい事、出来る事を順番にやればいいの。与えられた力はそのためにあるのでしょう」


「⋯⋯⋯⋯はい」


「それならすぐにシャンたちを助けに行きましょう。英雄は行動を重ねていれば、いつしかなっているものよ。腹立つ義母は次に見つけた時に懲らしめてやればいいの」


 全部はいっぺんに出来ないから悩むんだ。悩んでやれる事まで出来なくなってしまうんだ。動ける身体をもらったから、僕は考え過ぎていたんだろう。


 レーナさんは僕が一番失いたくないものを守る選択をした事を褒めてくれた。でも喜んでいられない。シャンさんたちが助けを待っているから急がないと!


「それじゃ、行きましょうか」


「えっ、レーナさんも行くの」


「当然よ。レン君は場所わからないじゃない」


 英雄の娘と一緒? リリーと訓練したから魔力について少しわかる。この人は魔力が見えない。


「リリー、この子と一緒について来なさい。プロケロとランダーは、残って迎え入れる準備をよろしくね」


「えーっ、助けに行くならレーナだけの方が早いじゃん」


「あなたの訓練も兼ねてるのよ、リリー。ガイドなのに、魔力の使い方を伝えきれていないでしょう」


「急ぐんじゃ⋯⋯」


「急ぐからよ。つべこべ言わず行くわよ」


 リリーの抵抗など意に介さず、レーナさんはリリーを僕の身体の中へ押し込めた。


「リリーは魔力を巡らせ持続する事に集中。レン君は、魔力の流れを身体に感じながら、動きを覚えること」


 ビュッと僕の身体が急速に駆け出した。レーナさんに煽られ、リリーが力を抑えずに魔力解放したせいだ。


 もの凄い速さで駆け抜けながら、僕の身体がぶつかったり転んだりしないようにレーナさんが誘導している。考えてから手足を動かしていたのでは間に合わない。


 僕は身体を動かすのではなくて、全体を把握しながら流れに任せて動く感覚を覚えた。覚えても出来る出来ないは別の話だけどね。



 森林を突っ切り山の中腹へ着くと、リリーは手乗り人形(タイニー・ドール)の身体に戻された。


「ちょっ⋯⋯魔力使い過ぎよ⋯⋯」


 リリーは魔力全開による魔力切れでゼーハーしながら、僕の頭の上でぐったりと大の字になった。本人の意思ではなかったらしい。僕も魔力の恩恵による解放感がなくなり、身体が重く感じた。


「シャンたちが待っているのよ? 休んでる暇はないわよ」


 そうだ、シャンさんたちが窮地に陥っているかもしれないんだ。リリーが頑張ってくれたので、僕が走る何倍もの速さで坑道に辿り着けた。


 リリーが休んでいる間に、僕も頑張って進まないといけない。


「リリー、寝ながらでも探知でレン君に位置は教えられるわよね」


「うぐぅ、レーナは鬼畜過ぎよ⋯⋯」


 リリーがブツブツと僕の頭の上で唸った。坑道の中は暗い。でもリリーのおかげで、坑道の洞窟の形がはっきりと分かる。


「本来ならば帝国側まで一本道なの。でもダンジョン化で歪みがあるはず。まっすぐに進んでいるようで、そこはもう異界の中だから気をつけるのよ」

 

 レーナさんが言うように、英雄はなりたくてなるものではないんだとわかった。僕は英雄になりたいな、と思った。でも手斧一本でダンジョンへ行って、大切な人たはちの救出へ向かうことになるとは思ってなかったよ。


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