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白金のハイエルフ  作者: 味醂
再会
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虚空にて

 虚空にて




 今であって今でない時。

 惑星(ほし)の重力からも解き放たれて

 あらゆるものの存在が虚ろとなっている場所。


 いや、厳密にそこはあるのだろうか?

 僅かに歪んだレンズを通した像に虚像が纏わりつくように、その世界の次元からほんの僅かばかりの位相を異にした空間で問答を繰り返す意識が存在した。


 その問答は延々と繰り返されてきたものか、或いは光が瞬くようなほんの一瞬の出来事であったのかを観測できるものは居なかった。

 しかしその問答はいつしか一方的な独白へと変化していた。


 理の外にいる者――外道で神を自称する者の独白は淡々と続いていた。


『そもそも君は何故ここへきてしまったんだい? 長い研究の末にここへ到達できたというのは、最初にも言ったけど通常ではありえない事だし、人の身でありながらというならば、それは既に偉業といっても差し障りない、それは僕が保証するよ』


『とはいえ、人の身というのは少々語弊があったかな。なにせ君の肉体はとっくの昔に朽ちてしまっているようだしね、君が君たり得る事はもう何者にも証明されないし、君自身で言ったところで、既に意味のない事なんだよ』


『そこまで不思議がる事ではないだろう? 君がいうところの意識も思考もなにもかも、ただそのように入力されたデータと区別がつかないと言えば話は早いだろ? 』


『君は少々神というものについて誤解をしているようだけれど、別に僕らは万能な存在などではないのさ。全知全能だなんて思い違いもいいとこさ。そもそも僕らは本来異なる世界に対して干渉しない存在なのではなく、干渉できない存在なのさ――あくまで正攻法の上ではね』


『世界の保有って言うのはね、神に課される義務みたいなものでね、直接とあれこれと干渉できない癖に、虚空へ世界を作り出すことはできても、次元位相が違うために低い次元から高い次元へ移るとなれば、一筋縄ではいかないんだよ。無論下の次元へ干渉することだって似た様なものなのだけど』


『そして世界というものは、自身に入り込んだ異物を世界の外へ押しやろうとするものなんだよ。いってみれば免疫機能に近いものさ。だから一度安定した世界へ介入するというのは事実上は不可能と言っても過言ではないし、その成否を確認する術すら持たないのだから』


『まあ、慌てる必要はないさ、時間などまだ今は問題にならないほどあるのだから。まあ、この虚空で時間が経過してるかと言えば厳密にはそうであるともいえるし、そうでないとも言えるんだけど、それはとてもデリケートな問題でね――まあ次元流の話は置いておいても、幸いにも今回においてはまだ僕に僅かばかりの優位性があるって事さ』




 ◇ ◇ ◇



 これまで体中を包んでいた浮遊感を感じなった時、辺り一面は白く塗りつぶされた空間であることを認識した。


「おかえりなさい」


 音として聞こえる訳ではない。ただそうであると意識が自覚する。この場において言葉は意味を為さず、また己の認識を自覚できなくなった者はただのエネルギーへと還流してしまう場所――世界の理の外。

 幾度かの体験から知り得ていた情報を思い出し、心に思い描く。


「ラスティー。ご無沙汰してました」


 ほんの僅かばかり、なんと呼ぼうかと迷ったけれど、幾分私の主観時間では神というものに対して此方の世界の人ほど真摯に向き合う機会のなかった環境に育っただけに、仰々しく平伏したり、女神様!!なんて呼んでみたりするのもなんだかしっくりとこないのだから、そのまま敬称を略して挨拶する。


「それで構いませんよエリス。あなたは貴女であるけれど、私の因子を持ったもう一人の私とも言えるのですから」


 なんだかこれまでになく饒舌な女神の言葉に少々驚きながらも、その加護により不慣れな世界でなんとかやって来れたのだからやはりもう少し敬って接しても良いのかもしれない。


「突然ですが、私がここに呼ばれたのはやはり過去の自分と会ってしまったからですか?」


 単刀直入ではあったが、まず一番気になっていた事を聞く。大抵は寝ている間に理の外へと来ていたというのに今回は覚醒したまま状態。それもその直前には少しばかり信じ難い状況を体験してきたばかりなのだから、


 僅かばかりの空白を挟んで女神ラスティーは語りだす。


「今回は緊急事態でした。世界の衝突はあなたを生み出すきっかけになりましたがその余波、つまりは返す波によって多くの者の因果が変質してしまったのです。中には因果そのものが消失してしまい、存在をかき消されてしまう者が出るほどに」


「因果、ですか。言葉としては解りますけど、それを説明できるかはまた別で、ありていに言うとよくわからないのですけど」


「そうですね、因果とはいわば世界に自己をつなぎ留める鎖です。魂の系譜と呼んでも構いません。因子により世界に楔を打たれ、因果によってそこに繋ぎとめられることにより、本来であれば異なる世界間での転生というものは起こらないのです。しかしあくまでそれは設計上の仕様ともいえるものです。事実世界を超えて旅するものが出てしまうのは、本来の輪廻の輪から因果と因子をなくしてしまう事によって元の世界よりはじき出された事に拠るものです」


「なるほど。なんとなくだけど理解できそうな気もする。あくまでなんとなく、だけど」


「構いません。現実にはもう少しだけ複雑な話にはなりますが、今回に関しては先程も述べたように緊急事態だったのです。世界とはエネルギーの一つの形である以上、たとえ位相を異にしていたとしても強く影響がでてしまうもの、それが半ば一部の物理干渉すら受けうる形で、現在進行形で衝突しているのですから、急に活性度をあげたエネルギーが理の因子すら歪めてしまったのも仕方のない事でした」


 そこで一度思念が止まったのは、伝えた内容を吟味するために女神が用意した時間らしい。




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