85.善人、子供とエルフ嫁と写真を共有する【後編】
雨の日の孤児院。1階のホールにて。
俺たちはスマホで撮った写真を、ノートパソコンにアップロードすることにした。
方法は簡単だ。
スマホで撮った写真を選択する。
写真の部分を長押しして、シュッ、と指で前に弾くようにする。
今の動作を発動条件に、【転写】の魔法が発動。
スマホからこのノートパソコンへと、写真が送られる。というふうに、動作命令を書き込んだのだ。
「みんなやってみよう。しゅしゅっ、とね」
コンがスマホを持ったまま、指でしゅしゅっとする。
「しゅしゅっとー!」「しゅしゅーっと」「しゅしゅっと」
キャニス、ラビ、そしてコレットが、写真を選んで、コンと同じ動作をする。
ノートパソコン上に、彼女たちが送った写真がアップロードされていた。
「ほら、みんな見てごらん」
俺はソファの前のテーブルに、ノーパソを置く。
子供たち、そしてコレットが、食い入るように、パソコンを見やる。
ぴーん! と彼女たちの耳が立つ。
「すごいわジロくん! 私の選んだのがこの箱の中に入ってる」
「おー! ぼくのベストショットが、ちゃんとうつってやがるです!」
「わぁ! コンちゃん、すごーい!」
「ふふ、でしょだしょ。でもいちばんすごいのは、これつくったにぃだからね。そこ、かんちがいしないでよねっ」
コンがぷいっ、とそっぽ向く。
「ツンデレか?」「つんでれよ」「なんでまた」「そーゆーきぶん?」「そうですかい」
コンが両手を伸ばしてくる。
俺はキツネ娘をよいしょと抱っこ。
コンが俺の首筋に鼻を押しつけて、すんすんとにおいをかぐ。
「ほぅ……。あいかわらず、よきかおりですな」
「いつもそれ言うけど、そんなに良いにおいするか?」
「にぃはわかってない。みーははながきく。そのみーがよきかおりといってる。じしんもつべき」
「そうか。ありがとな、褒めてくれて」
コンのしっぽがクルクルと動く。
その間に、キャニスたちはスマホから写真をアップしまくっていた。
「キャニス、これはいつ撮った写真なのかなっ?」
コレットが画面の前で顔を赤くしている。
厨房で俺とコレットが、こっそりキスしている写真だった。
「おー、これな。このあいだはらへったーってみにいったら、おにーちゃんたちがちゅーしてたから、撮ったです!」
無邪気に笑うキャニス。
一方でコレットは、エルフ耳を先っちょまで真っ赤にしていた。
「もう、いけませんよキャニス。こんな盗撮みたいなことしちゃ」
コレットがまじめな顔で、犬娘に注意する。
「うう……ごめんなさい……」
ぺちょん、と犬耳が垂れる。
「まあまあコレット。キャニスも悪気あったわけじゃないだろ? 俺たちが仲よさそうにしてたから、撮ったんだよな。あとで俺たちに見せて喜んででもらうために」
「おー! さすがおにーちゃん! わかってやがるです!」
ぱぁっとキャニスが晴れやかな表情になる。
「さすがにぃ。こどもごころ、わかってるね」
「にーさんは何でも知ってるのです!」
子供たちが俺に抱きついてくる。
「おいこらコン。おめーもっとはじっこよれや。ぼくとラビがおにーちゃんに、くっつけねーです」
「のん。ここはみーのポジション。ぽじしょんぜろ」
「はう……くっつきたいのです~」
わあわあ、と子供たちが俺にくっついてる。
「ジロくん大人気ね。では失礼して」
コレットが俺の真横に座ると、腕にぎゅーっと抱きついてくる。
大きくて柔らかい乳房を、美少女エルフがおしみなくくっつけてくる。
「へいみんな。なかよさそうだね。しゃしんまんのみーが、しゃしんとるよ」
コンが俺から降りると、スマホを持って、ちょっと離れる。
「いくぜいみんな。じゅんびおけー?」
「「「おっけー!」」」
コンがスマホを構えて、「はい、ばたー」と言う。
パシャッ。
シャッターが切られる。そしてすぐに、コンがノートパソコンに、写真をアップする。
コレットたちは、テーブルに置かれたパソコンを見やる。
「すごいわねこれ」
「おくさんおくさん。これだけじゃないんですよ」
コンがコレットの膝の上に乗っかって言う。
「ぱそこんのしゃしんを、じぶんのスマホにうつすことも、できるんですぜ」
「そうなの? ジロくん」
「ああ。ちょっと待ってな」
俺はパソコンを操作。
カーソルで写真を選択。
クリックすると、誰のスマホへ送るのか、という選択肢が出てくる。
コレット、とキーボードで入力し、エンターを押す。
すると【転写】の魔法が発動。
コレットのスマホに、写真が送られる。
ピリンッ♪
「わわっ、私のスマホが鳴ったわ」
コレットが両手でスマホをつかむ。
「どうだ?」
「すごい! ちゃんと写真が送られてる!」
コンがさっき撮った写真が、コレットのスマホのアルバムの中に入っていた。
「おにーちゃん! いまのぼくのにもおくれやです!」
「らびにもおくってほしーです!」
俺は同じ手順で、写真をキャニスたちに送る。
「すげー!」「すごいのです、にーさん!」
わあわあと楽しそうな子供たち。
「へいにぃ。これってだぶるくりっくして、そーしんさきをにゅーりょくするだけ?」
コンがパソコンの前に移動し、俺を見て尋ねてくる。
「ああ。パソコン使えるか?」
「もちのうぃーずりー」
「? ……ああ、もちロンってことか」
「そゆこと」
ぴっ、とコンが指でピストルを作って俺を指さす。
「みーもやっていい?」
「いいぞ。やってごらん」
コンがパソコン上の写真を選択し、キーボードを打つ。
ずばばばばば!
と画面を見た状態で、凄い勢いで、キーを打った。
「すごいなコン。ブラインドタッチか」
「ふふ、みーのたっちんぐぎじゅつに、ほれるといいよ」
ややって、コレットと入力し、コンが送信ボタンを、ッターン! と押す。
「今の動作に何の意味が……?」
「ったーん、はおとこのろまん」
「よくわからん……」
するとコレットのスマホが、また鳴る。
「わわ、また送られてきた……って、これはっ!」
コレットが顔を赤らめる。
さっきキャニスがアップロードした、俺とコレットがキスをしている写真だった。
「こ、コンが送ったのっ?」
「いえーす。まみーがほしそーにしてたからさ」
きらーん、とコンがどや顔で言う。
「もうっ、コンってば。良くやったわ!」
コレットが笑顔で、コンを手招きする。
コンがエルフの膝の上に乗っかると、その頭をきゅーっとハグする。
「おう。でっかいぱいおつ。おぼれてまうやろー」
コンが気持ちよさそうに目を細め、しっぽと耳をぺちょんと垂らす。
「はえ~……やっぱおねーちゃんのおむねはでけーなです」
「いいな~、コンちゃん、らびもままにはぐされたいのです……」
ラビが物欲しそうに、コレットたちを見やる。
「へいまみー。ラビとちぇんじ」
コレットがうなずいて、コンが降りる。
ラビの側までやってくると、タッチ、と触る。
「ラビ、ゆくがよい」
「コンちゃん……いいのです?」
「まみーはみんなのまみー。ラビのまみーでもある。えんりょするこたない」
「コンちゃん! ありがとー!」
にぱっと笑って、ふたりでハグする。
その後ラビは嬉しそうにコレット膝の上に乗っかる。
「ラビおいで。ほら、ぎゅーっ」
「ぎゅーっなのです!」
ふたりがハグしてるシーン。
「写真撮って良いか?」
「どうぞどうぞ。ジロくんとって!」
「とってー!」
俺はパシャッ、とスマホで写真を撮る。そしてパソコンにあげる。
コンがすばやく、自分とそしてキャニスのスマホに写真を送った。
「コン! つぎはおめーのばんです。おにーちゃんとならべやです!」
「てんきゅー。ではにぃ、チェキきしよ?」
「お前ホント何歳なんだよ……」
俺はコンと並んで座り、キャニスに写真を撮ってもらう。
「あ、その写真私ほしい!」「らびもー!」
「了解だ」
とまあ、こんなふうに、写真共有システムを導入したことで、思い出つくりがより楽しくなったのだった。
いま新連載やってます。
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ではまた!




