172.卒業パーティ
それから幾ばくかの時が流れた。
春。
孤児院にて。
食堂に集まっているのは、孤児院のみんな。
子供達を代表して、コンが宣言する。
「へいえぶりばでー。これから【コレット赤ちゃんおめでとう&ラビ卒業おめでとう】会、すたーとぅ!」
「「「わー!」」」
上座に座るのはおめかししたコレットと、ラビ。
テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいる。
「ラビおめー!」「おめー」「おめでとー……ぉ」
子供達がラビに笑顔を向ける。
ラビもまた、うれしそうに笑っていた。
巣立ちの時でも、みんな笑っていられる。良かった、と俺は心から思った。
……ラビが魔法学園に行くと決めた日。俺は子供達に正直に打ち明けた。
子供達はその日、わんわんと泣いて大変だったけど……。
でも、最終的には、子供達自ら、ラビを送り出すことに納得して、自分たちで……言い出したのだ。
コレットのお祝いと一緒に、卒業パーティをしたいって。
「コレットもおめでとう!」
「ありがとう、アム」
コレットのお腹は少しずつ大きくなっている。秋くらいには子供が生まれることになっていた。
それでも、コレットは孤児院の仕事をギリギリまで続けたいらしい。
ラビの決意と覚悟に触発された、と彼女は言っていた。
しばし歓談の後、コンが言う。
「へいふたりとも。みーたちから、プレゼントがありまする!」
「「プレゼント?」」
ラビとコレットが首をかしげる。
コンが子供達に目を配らせる。
すると、キャニスとあやねが、小さな箱を持って二人の前に立つ。
「ラビ! ん!」
「キャニスちゃん? なんなのです?」
ラビは箱を開ける。……なかには、木を掘って作られた、指輪が入っていた。
コレットの方には、同じく木でできたイヤリングだ。
「そつぎょープレゼントです!」
「おねえちゃんのは普通のプレゼントだよー……ぉ」
ラビが受け取って、目をキラキラさせる。
市販で売ってるものより、形はいびつだ。でも……子供達が自分たちの意思で作ったプレゼントである。
俺から言われたのではなく、自分たちで作った。自分たちで上げたいからと。
「…………」
子供達はドンドン大きく成長していく。体だけじゃない。心や、考え方だって。
俺をあっという間に追いぬいていくのだろう。これからも。でも……それでいいって思う。
「ありがとー! みんなだいすきっ!」
ラビがキャニスに抱きつく。コレットはあやねを抱きしめていた。
「大切にするわ。ありがとう」
「「「いえいえー!」」」
別れが来ても、みんな笑っている。きっとこの先も、子供が入ってきては卒業していくだろう。
キャニスも、コンも、アカネも、あやねも、レイアも……。
そして鬼の桜華の娘達や、鬼の赤ん坊たちも。
卒業のたびに、この日のように、みんなが笑っていられるようになっていてほしい。
俺はこれからも、みんなが笑顔で卒業できるような……。
そんな日常と場所を、作っていきたい、守っていきたいと、そう思うのだった。
次回、最終回です。




