169.結論
王都から帰ってきた翌日。
俺はコレットやほかの職員に、結論を口にした。
彼女たちは俺の決定を尊重してくれた。その後、俺は本人のところへ行く。
「ラビ」
「すやぁ~……」
この日のラビは寝坊していた。コレットから聞いたのだが、昨日は遅くまで、魔法の勉強をしていたらしい。
やっぱり、彼女は魔法が大好きなのだ。好きこそ物の上手なれという。
彼女の才能を一番伸ばす環境に……俺は入れるべきだと、そう結論を出したのだ。
「ラビ、ほらおきなさい」
「あうぅう~……おふぁよぉー……」
眠い目をこするラビ。
俺は彼女を抱っこしてあげる。
「ほら、もう昼前だぞ」
「! わわわ、おねぼうさんなのです!」
ラビが怒られると思ったのか、怯えた表情になる。だが俺は彼女の頭をなでてあげて、なだめる。
するとラビの表情も、ふにゃりと柔らかいものになった。
こうするだけで、俺が怒っていないと伝わってくれたのだろう。言葉ではなく行動で意思が伝わるようになった。
これが成長だと、うれしい。
「ラビ。コレットから聞いたぞ。魔法の勉強してたんだってな」
「はいなのです! デルフリンガー先生の、ごほんが気になったのです」
「そっか……」
そう語るラビの顔は実に活き活きとしていた。問題ないだろうと思って、俺は口にする。
「ラビ、こないだの学校……本格的に通ってみたくないか?」
「え! がっこーに!? いく!」
……まずは一段階だ。次に俺はラビに説明する。
「じゃあ、ここを卒業しないといけない」
「そつ、ぎょー……?」
賢いこの子のことだ、たぶん説明すればわかることだろう。
俺は、なるべく感情を混ぜずに説明する。
「学校のある王都から、この森まで、かなり距離がある。ここから通うんじゃ、授業に間に合わない。だから学校に通うのなら、ここを出て、王都で暮らさないといけない」
「…………」
ラビの表情がこわばる。多分今の説明で、伝わったのだろう。
本当に聡い子だ。デルフリンガー先生が、1000年に一人の逸材だと言うだけある。
「卒業って行っても、永遠にここに戻ってこれないわけじゃない。でも、孤児院はあくまで、身寄りの無く、一人で暮らしてけない子供達の面倒を見るところだ」
これだけ言えば、ラビはわかるだろう。 学校に通うとなれば、寮に入ることになる。
デルフリンガー先生が行っていたが、生活の保障やサポートはしてくれるらしい。
学校に通うのなら、もう孤児院には属せない。力と立場を、得るのだから。
「らび……らびは……でも……じゃあ……みんなと……」
ラビが悲しげな顔になる。卒業するとみんなにもう会えないと、直ぐに理解したのだ。
俺はラビをぎゅっと抱きしめる。
さぁ、ここからが、孤児院長である俺が……頑張る番だ。




