167.帰還
王都で一泊して、俺たちは翌日、孤児院のある森へと帰ってきた。
「「ただいまー!」」
「「「おかえりー!!!」」」
子供達が元気よく、こっちに駆け寄ってくる。
「ラビ! おかえりです!」
犬の獣人であるキャニスが、ラビに抱きついてくる。
「へい、ラビ。王都はエンジョイしたかい?」
狐の獣人コンが尋ねると、ラビが笑顔でうなずく。
「はいなのです! まほーいっぱい、たのしかったー!」
「「いいね~!」」
ぐっ、と親指を立てる子供ら。
「れいあも、おーといきたかったわ!」
竜の子供レイアが俺にそういう。鬼姉のあやねが「まあまあ」となだめる。
「ラビちゃんはねー……え。別にあそびにいったわけじゃー……あ、ないんだよー……ぉ」
「あらそうなの?」
まあまだ子供だしわかってなくって当然か。でもさすがあやね、ちゃんと理解してるみたい。
俺はうなずいて答える。
「ラビは勉強してきたんだよ」
「うげえ、れいあ勉強きらい。だからべつにいいや」
じー、とコンが俺に期待のまなざしを向けてくる。まあ多分、お土産的なものを期待してるんだろう。
「車にみんなへのお土産は乗ってるよ」
「「「やっふーい!」」」
わっ、と子供達がお土産に殺到する。その一方で、コレットがパタパタとかけてきた。
「おかえりジロ君」
「ああ、ただいま。動いて平気なのか?」
コレットは身重だ。あんまり動いちゃあぶないんじゃ……。
するとコレットがあきれたように息をつく。
「まだ妊娠して2ヶ月よ。大丈夫」
「そ、そうか……まあそうか」
「そう。それにおなかぽっこりしても、家にこもってるのは赤ちゃんにも悪いんで、ちゃんと歩きますよっと」
さすが、医者をやっていただけあるな、コレットは。博識だ。助かる。
「それで、ジロ君。学校どうだった」
「ああ、ラビはたいそう、学校気に入ってたよ」
「そか。で、どうする?」
……そう、ここからだ。
ラビに、学校に行かせるか否か。
俺は決断を迫られている。
前の俺だったら、ラビの意思を尊重して、子供達から離れさせるようなまねはしなかったろう。
王都からここまで、かなり距離がある。
毎日の往復となると、無理だ。だから学園に通うなら、王都での寮生活をさせないといけない。
……ラビから大切な友達と、離れるようなことを言う。前の俺だったら無理だった。けど……。
デルフリンガーさんの言葉が、脳裏にちらつく。
「……1日考えて、明日結論出す」
「そか。わかった。院長は君だから、私は君に任せるよ」




