158.新しい命
ふと、俺は目を覚ます。ゆっくりと俺は体を起こし、そして周りを見渡した。
「…………? ここは……」
「あ、ジロ君。起きたの?」
俺の隣には、美しいエルフの美女が座っていた。
「コレット……」
彼女はコレット。俺の、かつての恩師。ひょんなことから再会して、彼女の経営する孤児院で、一緒に働くことになった。
そして、色々あって、人も増えて……現在。
「そっか……初詣に来てたんだったな」
俺たちは少しお高いホテルに泊まっている。
昼間は子供達と餅を焼いて食べた。
その後ホテルで遊んだりして、気づいたら夜になっていた、らしい。
「ジロ君、子供達の相手お疲れ様。一人で任せてごめんね」
コレットが申し訳なさそうにする。彼女の手には指輪がはめられてる。俺の、恋人というか、まあ……婚約者だと俺は思ってる。
「気にしないでくれよ。俺は好きでやってることだし」
キャニスやコン、ラビ達が元気に楽しそうにしてるのを見てるだけで、元気になれる。
かつて冒険者していたときには感じられなかった、仕事をすることへの楽しみ、というのが、子供達の面倒を見てるとき感じられるのだ。
「そっかぁ~……ジロ君、もうすっかり先生ねえ」
かつて先生だったコレットが、目を細めていう。
時の流れを感じているのか、しみじみとうなずく彼女。
「先生はジロ君が立派になってうれしいですな」
「……そっか。そりゃあ……よかった」
恩師に立派になった姿を認められた。それは、本当にうれしいことだった。
……って、え?
「コレット……泣いてるのかおまえ?」
「え? あ、あれ……! うそ……やだぁ……」
ぐすぐす、とコレットが泣いてる。どうしたんだ?
まさか……。
「俺が立派になったから?」
「そうね……うん。そうかも。自分の手を離れた生徒が、立派になってて、ああ、成長したなぁ、すごいなぁって感心しちゃったからかな」
そう言ってもらえるのはうれしいが、愛しい女に泣いてもらってはこまる。
俺は彼女を抱き寄せてキスをする。
コレットは一瞬驚いたものの、俺に身を委ねてる。
うれしそうに目を細め、体を預けてくる様から、俺たちの関係が昔から一歩先に進んだ物になったのだと、証明する。
「ふふ……ジロ君も大人だ。キスが上手になりましたな」
「あれからもう十何年も経過してるから、当然だろ」
「なるほど……むぅ。ジロ君はもうちょっとやそっとのことじゃ動じないかー……」
にんまり、とコレットがイジワルそうな笑みを浮かべる。
「そんなジロ君に、爆弾を投下しても?」
「なんだ、爆弾って?」
「ふっふーん……実はですね~……じゃん!」
コレットが自分のお腹をなでる。
「できちゃいました!」
……その動作に、そのセリフ。
俺とコレットは何度も肌を重ねている。
……まさかという予感が、彼女のうれしそうな笑顔を見て、確信に変わる。
「あ、赤ちゃん……か?」
「そのとおり! 赤ちゃんできたよ、ジロ君と、私の!」
【※あとがき】
長らくお待たせして、申し訳ありませんでした。
ゆっくりとですが、ゴールに向けて、更新していこうと思います。




