156.善人、子供たちと初詣へ行く【前編】
年末年始、俺は孤児院のメンバーで、王都にやってきている。
王都のホテルに泊まり、今日は元旦。
この世界でも、年始はみんな集まって、年始を祝うお祭りをするのだ。
と言っても寺社仏閣の類いはこの異世界にはないので、お寺はないんだがな。
さて。
ホテルの一室にて。
「ジロくーん。みんなのお着替え終わったわよー」
嫁のエルフであるコレットが、女子部屋から出てきていう。
「おにーちゃん!」「にぃ」「にーさん!」
まず出てきたのが、獣人チーム。
犬娘のキャニス。
きつね娘コン。
そしてうさぎ娘のラビだ。
三人はそれぞれ、黄色、青、ピンクの子供用着物に身を包んでいる。
ソファに座る俺の前に、三人がやってくる。
「おにーちゃん! ぼく、どうでやがるですっ?」
キャニスが犬しっぽをふりふりしながら聞いてくる。
「かわいいぞキャニス」
「わふ~♡ もっとほめろやですー」
続いてコンが、俺の前でかっこいいポーズを取る。
「へいにぃ。いまのみー、クール?」
「ああ、普段よりもかっこいいぞ」
「みーが一番かっこいいとわかるとは、にぃ、お目が高い」
きらん、とコンが目を光らせ、ふふんと得意げに笑う。
「あの……あのあの……その……に、にーさん? らび……どうかなぁ?」
ラビが顔を赤らめ、もじもじしながら、俺を見上げていう。
「最高にかわいいぞ」
「え、えへへ~♡」
ラビがウサ耳をぴょこぴょこと動かして喜ぶ。
「おー! ラビ、やったなおまえ!」
「やったねらび。これでにぃのハートもゲッチュー。そのままゴールインしちゃえ」
「あわっ、あわわわっ、そそそそ、それはまだはやいよぅ~……♡」
三人が楽しそうにしていると、今度は赤い髪の女の子がそろって、俺の前にやってくる。
赤毛の双子。
ただし片方は垂れ目で、片方はつり目。
額には角が生えている。
「あんちゃー……ん。おいら、どー……ぉ?」
「……あ、アネキ。その……はずい……」
双子の鬼姉妹。
姉のあやねに、妹のアカネだ。
ふたりは鮮やかな紅色の着物を着ている。
おそろいのデザインの物だ。
「ああ。ふたりとも大人っぽくてとってもいいぞ」
「にひー……ぃ。ほめられちったー……ぁ」
「…………」
あやねはぽやぽやと笑い、アカネは恥ずかしそうに、姉の後に隠れた。
「へいへい、にぃ」
ひょっこり、とコンが俺の肩に乗って言う。
「みんなにかわいいかわいいいってるけど、結局誰が一番なのさ」
「「「!」」」
子供たちが俺をたちを見て、だっと駆け寄ってくる。
みんな目をキラキラさせて俺を見ていた。
「「「気になるー!」」」
「みんなが一番だよ」
「「「やったー!」」」
全員が手を上げて喜ぶ。
肩に乗るコンだけが、ふぅとため息をついた。
「やれやれ。ゆーじゅーふだんな男は嫌われますよ」
「そう言ってもみんなかわいいからな。優劣なんてつけられないよ」
「ふふん。でもそんなみんなに優しいにぃのこと、嫌いじゃないですぜ。きゃっ、こくはくしてもーたー」
コンは表情を崩さないまま、くねくねと体をくねらせる。
俺はコンの頭を撫でる。
「あー! ずっりー! おにーちゃんぼくも撫でろやです!」
「ら、らびもぉ~……」
「おいらもー……ぉ。そんでアカネちゃんもー……ぉ」
「あ、あたしは別に……別に……だし」
子供たちがワッ、と俺の前に集まってくる。俺は全員の頭をよしよしと撫でた。
「ほほう、ジロくんモテモテですなぁ~」
ハーフエルフのコレットが、ニコニコしながら、俺たちの元へやってくる。
「コレットもとっても似合ってるぞ。その着物」
彼女はミント色の着物を身につけている。
首にはファーのついた襟巻き。
長い金髪をアップにしている。
「ジロくんってばみんなに似合うっていうのね。さっきもマチルダたちにも似合うっていってたし」
つんっ、とコレットがそっぽを向く。
「おねーちゃん、しゃーねーです。おにーちゃんそーゆーひとです」
「そーだぜまみー。にぃは博愛主義者ってやつなんだ。みんな好き好きせーじんなのよ」
「コンちゃんすごい! むずかしーことば知ってるのです!」
「ほほほ、まぁ孤児院のデータバンクとはみーのことよ」
子供たちが楽しそうにする一方で、コレットがスススと近づいてくる。
「ジロくんが優しいのはしってるけど、女の子はいつだって、好きな男の人の一番でありたいってものなのよ」
きゅっ、とコレットが俺の腕に抱きついてくる。
着物越しでも、この子の胸の柔らかさは伝わってくるからすごいな。
「おー! おねーちゃんそれな!」
「まみー、いいこというね」
子供たちが俺の体に抱きつてくる。
「あのあの! ら、らびはぁ……にーさんがいちばんなのです!」
「おいらもあんちゃんが一番すき~……ぃ♡」
「ありがとなみんな。俺もみんなが一番好きだよ」
すると全員が、はぁ……とため息をつく。
「にぃは一番って意味まちがってつかってる」
「そうねーコン。ジロくんってば大人のくせにそんなのもわからないんてねー」
「「「ねー」」」
ふぅやれやれ、とみんなが呆れたように首を振る。
「いやでもなぁ……順位なんてつけられないよ。みんな平等に俺の中では1番だ」
「「「むぅ」」」
全員が不満そうにしていたが、すぐに表情を柔らかくする。
「ま、しゃーねーな」
「ゆーじゅーふだんな男をゆるす。それがいーおんなってもんよ」
「コンちゃんかっこいいのですー!」
「まぁ仕方ありませんね。優しいジロくんに免じて、今日はこれくらいにしてあげます。ふふっ♡」
コレットが微笑んで、俺につよく抱きついてくる。
「そんじゃそろそろ、みんなで出かけますか」
「「「おー!」」」




