表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/189

155.善人、子供たちとおせちを食べる【後編】



 ラビを起こして、俺たちはホテルのリビングに着ていた。


 キッチンとの壁はなく、開放感のあるリビング。窓ぎわには大きめのガラステーブルがあり、そこに孤児院メンバーが集まっていた。


「あー! ラビおめー、やっとおきたかー!」


 犬娘キャニスが、俺とそして抱きかかえられているラビを見て言う。


「おそいじゃない! 何してるのよ、れいあを待たせるとは……いいどきょうね!」「みー!」


 ドラゴン娘レイアと、黒猫のクロが頬をくらませる。


「ご、ごめんねぇ~」


 ぺちょん、とうさ耳を垂らすラビ。


「ま、しゃーねーや!」


 にかっ、とキャニスが笑って言う。


「ラビほらこっちすわれやです!」

「うんっ!」


 俺はラビを下ろす。

 キャニスのとなりに腰を下ろす。


「あの……にーさぁ……ん」


 ちらちら、とラビが俺を見上げる。


「らびのとなりに……座って?」

「あとでな。俺は料理の準備してくるから」


 俺はリビングからキッチンへと移動。

 そこには嫁たちがいて、せわしなく動いていた。 


「ジロくんお疲れ様」

「ああ。料理の準備大丈夫か?」


 金髪のハーフエルフ、コレットがエプロンをして立っている。


「うん。あとは出すだけだよ。おねがいできる?」

「もちろんだ」


 俺はキッチンに置いてあった重箱を持って、リビングへと向かう。


「飯にするぞー」

「「「まってたーーーーーー!!!」」」


 子供たちがキラキラとした目を、俺に向ける。

 

 俺は職員たちと手分けして、テーブルの上に料理を並べる。重箱を置いて、箱を並べる。


「おいコン! みろよすげー! なんか……すげー弁当箱にはいってやがる!」


「のん。弁当箱じゃない。重箱っていうね……ちょ、みーのしっぽひっぱらないでよ」


「わあ……! わぁ……! きれいなおべんとばこに、きれいなおりょーりいっぱいなのですー!」


「だからお弁当箱じゃなくてね……ああだからしっぽひっぱらないでぷりーず」


 獣人たちの耳やしっぽが、ぱたたっ、とせわしなく動く。


「きれいなおべんとばこだねー……ぇい」

「だなぁ。きんぴかでかっけーこの弁当箱」


 鬼姉妹も重箱に興味津々だった。


「にぃ、みんながみーのいうこと聞いてくれないのん……かなしす」


 ひょこっ、とコンが俺の肩に乗っかって言う。


「みんなお腹すいてるんだよ。別に無視してるわけじゃないから」


「にぃ……ちゅき♡」


 ちゅっ、とコンが俺のほっぺにキスをする。


「ありがとな、コン。俺も大好きだよ」

「おうこれはそーしそーあい。けっこんかいけん秒読みまであるね」


「将来はもう少し真剣に考えような。さて、ほら、じゃあ降りてめしにするか」


 あれこれ準備を整えて、飯の時間となった。


「さぁジロくん。新年の挨拶おねがいね♡」

「え? なんだそれ……聞いてないぞ」


 コレットを見て俺が言う。


「新しい年が始まったんだから、こういう挨拶は必要でしょう?」


「いやそれより子供たち早くご飯食べたいんじゃないか? あいさつとか」「「「ききたーい!」」」「………そうか。じゃあそうだな」


 俺はよいしょと立ち上がって、みんなを見渡して言う。


「あー……。えっと、新年が始まったな。今年もみんなが喜んでもらえるよう、俺たち大人もたくさん頑張ろうと思う。みんなは思う存分、今この瞬間を楽しんでくれ。……それじゃ、明けましておめでとう」


「「「おめでとー!」」」


 挨拶がすんだので、みながいっせいにおせち料理を食べ始める。


「うめー! この卵のあめーやつちょーうめー!」


「ほぅ……この黒豆、いいね。昆布も……うん、良い味してる」


「はぐはぐあぐあぐ……ん~~~~♡ おいしー!」


 子供たちが小皿に取ったおせち料理を、実においしそうに食べている。


「姉貴っ、つぎはエビくいたい!」


「よー……ぉし、おねえちゃんがー……とってあげるよー……ぅ」


 いつもは料理を、大人たちが取り分ける。だが今日は各自すきなもの、好きなようにとって食べているのだ。


 ……ちなみにこの料理だが、事前に孤児院で作ってきた物だ。それをマジック袋にいれておいたのである。


「お雑煮たべるひと~」 

「「「はいはいはーい!」」」


 コレットがキッチンからそう言う。

 子供たち全員が手を上げる。


「みんな、おもちは何個くらい食べるか?」


 すると「「「え?」」」と子供たちが目を丸くする。


「お、おにいちゃん……何個ってど、どうゆーことです?」


 キャニスが困惑顔で、俺に聞いてくる。


「ん? いや……文字通りだぞ。お雑煮に何個おもちいれるかって意味だ」


「えとえと……おもちは、いつもひとり一個までだったのです」


 なるほど……。

 去年までの経済状況は、かなり酷かったからな。餅を買うお金がなかったのだろう。


「大丈夫だ。もちはたくさんある。各自好きなだけ食べて大丈夫だからな」


 俺がそう言うと、ぱぁああ……! と子供たちの表情が明るくなる。


「おいきいたかおめーら! 好きなだけいいってさ! いいってさー!」


「「「おおー!」」」


 子供たちがパチパチと拍手する。


「にぃ、ふとっぱら!」

「わーい! らび……たくさんおもちたべるの夢だったんだぁ~♡」


「姉貴、ここほんとすごいよ……天国みたいだ」

「そうだー……ぁね。最高だー……ぁねぇい」


「れいあ……じゃあ2個! 2個ほしいわ!」


「ん。了解」


 コレットがお雑煮を茶碗に入れる。そこに焼いた餅(餅もトースターも家から持ってきている)を2個入れる。


 俺は茶碗を持って、レイアのもとにおく。

「お、おー! じゃ、じゃあぼくは……ぼくは……3個!」

「「「おおー!」」」


「じゃじゃあ……らびは、らびは……よ、よっつ!」

「「「まじかー!」」」


 戦慄する子供たち。


「ら、ラビちゃん大丈夫か? よっつもたべたらお腹お餅になっちゃうぞ?」


 妹鬼アカネが、ラビに気遣わしげに言う。

「いいのっ! だっておもち……だいすきだから!」


「そ、そう……あ、アタシは1個でいいや」

「おいらもー……ぉ」

「みーもー」


 各自おもちを入れて、お雑煮を子供たちの前に出す。


「ずずず……うめー!」

「ほう……だしがきいててまろやか」


「おもちおいしー! 何個でも食べれるのです-!」


 うまうまー、とラビがお餅を頬張って言う。


「コンは1個で良いのか?」

「よい。おもちって、こんなちっちゃくてお茶碗いっこぶんくらいあるから、ふとっちゃうし」


 むにむに、とコンが自分のお腹をつまんで言う。


「そんなの子供のうちから気にしなくていいんじゃないか?」

「そーしてると将来こまるんですよ……」


 遠い目をするコン。

 彼女は転生者、つまり前世が地球人である。


 ここへ来る前に、何かあったのだろうか……。


「お正月明け……体重激増……くっ……!」

「そ、そうか……まあ自分の好きなように食べると良いぞ」


 その後孤児院メンバー全員で、のんびりと食事を取る。


 ややあって、食後。


「「「くったぁ~……」」」


 子供たちが、仰向けに倒れて言う。

 その顔は実に満足そうだった。


「ゆめみてーな時間だったです……」

「おもち……たくさん……けぷ」


「あ、姉貴……アタシのほっぺつねって。夢じゃないよね?」

「つねれないよー……ぅ。だー……ぁいじょうぶ、夢じゃあないからさー……ぁ」


 はぁ~……♡ と満足そうに吐息をつきながら、余韻に浸る子供たち。


「みんな。そろそろ起きて支度しような」

「「「したくー?」」」


 俺が言うと、子供たちが首をかしげる。


「おにーちゃん、したくって、何の?」

「これから初詣をしに、みんなでお出かけだ」


「「「おー!」」」


 がばッ……! と子供たちが体を起こす。ラビだけ「うごけない~」とおきれなかったので、俺がよいしょと抱き上げる。


「さ、みんなでお着替えしましょうね~」


 コレットがニコニコしながら言う。


「「「はーい!」」」


 ……かくして俺たちは、朝食を終えた後、初詣へとでかけることになったのだった。

夜に後編アップの予定です。


新作をはじめました。


「自由を奪った状態で倒すなんて、この卑怯者!」と追放された最強の暗殺者、人里離れた森で魔物狩りしてたら、なぜか村人たちの守り神になってた

(https://book1.adouzi.eu.org/n9668fp/)


最強の影使いの暗殺者が無双するお話です。頑張って書いたので、読んでくださると嬉しいです。


広告の下↓にリンクが貼ってあります。タイトルをクリックすると小説のページに飛べます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ