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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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155.善人、子供たちとおせちを食べる【前編】



 年末から年明けにかけて、俺たち孤児院メンバーは、王都へ旅行に来ていた。


 初日の出を見てから、数時間後。

 俺たちの泊まっている、ホテルの、子供たちが使っている部屋にて。


 俺はまだ眠っている子供を起こしにて来た。


「すぅ~……すぅ~……むにゃぁ~……」


 でかいベッドがひとつあり、その上では兎娘が、安らかな寝息を立てていた。

 

 彼女はラビ。兎獣人ワーラビットの少女である。


「ほらラビ~。朝だぞ~」


 俺はラビのとなりまでやってきて、彼女の肩を揺すり起こす。


「あぅう~……やぁ~……」


 ラビが顔をしかめて、頭を布団の中に潜り込ませる。どうやらまだ眠っていたいようだ。


 無理に起こすのもかわいそうだ。

 が、他の子たちも、そしてみんなもの起きている。さてどうするかな……とおもっていたそのときだ。


「へいにぃ、お困りのようですな」

「おいらたちがー……ぁ、お手伝いするよー……ぉ」


 ひょっこりと、ベッドの上に、ふたりの幼女が現れた。


 ひとりは銀髪でマロ眉なキツネ娘、コン

 もうひとりは赤髪で垂れ目な鬼少女、あやね。


「ありがとなふたりとも。けどどうするんだ?」

「ふふっ。まぁにぃは見ててくださいよ」

「おいらたちがー……ぁ、ラビちゃん起こしてあげるー……ぅ」


 そう言って、コンとあやねが、一緒に布団の中に潜った。

 邪魔しちゃいけないなと思い、俺は動向を見守ることにする。


【へいラビ。うぇいくあっぷ!】

【ラビちゃー……ん。起きてー……ぇ】


 くぐもった二人の声が聞こえる。

 だがラビはまだ眠っているようだ。


【ラビ。はやおくおきないと、ラビを置いてみんな孤児院に帰っちゃうよ?】


 と、コン。


「え、えぇええええ!?」


 バッ……! とラビが布団を押しのけて、顔を出す。


「どどど、どーゆーことなのですコンちゃん、あやねちゃん!?」


 ラビがびっくり仰天して、ふたりを見やる。

 コンたちは神妙な顔で言う。


「ラビ……きみは今日何月何日かわかるかい?」

「えと……1月1日?」


 はぁ~……っとため息をつくコンたち。


「ちがうよー……ぅ。今日はー……ぁ、3日の朝だよー……ぅ」

「もう今日はみんなでごーほーむする日ですぞ」

「う、うそーーーーーーーーー!」


 ラビが目をむいて叫ぶ。

 うさ耳がぴゃーっと立っていた。


「ラビぐっすり寝過ぎ。みんな楽しくお正月を満喫しちゃったぞい」

「そ、そんなぁ~……」


 ラビが泣き顔で、耳をペちょんと垂らす。

「だいじょうぶだよー……ぉ。ラビちゃん。お写真いっぱいとったからー……ぁ、あとで一緒に見ようねー……ぇい」


「ふ、ふぇえええん……そんなぁ~……」「「うっそぴょーん」」


「……………………へ?」


 ラビがきょとん、とする。

 俺はラビを抱っこする。


「コンたちの冗談だって」

「じょうだん……え、じゃあにーさん、今日は何日?」

「まだ1月1日だ。大丈夫、まだ旅行は終わってないぞ」


 よしよし、と俺はラビの背中を、ぽんぽんと撫でる。


「よ、良かったぁ~……」


 ラビが心からの安堵の吐息をつく。


「コン、あやね。ラビを起こすの手伝ってくれてありがとうな。けど冗談とは言えびっくりさせちゃったんだから、謝ろうな」

「「はーい!」」


 コンとあやねが、俺の体をよじ登って、肩に座って言う。


「へいラビ。あいむそーりー」

「ラビちゃんごめんねー……ぇ。こうしたらすぐ起きるかなー……ぁって」


 ふたりが頭を下げる。


「ううん、らび、気にしてないのです。おこしてくれて……ありがとー! おかげでしゃっきりおきられたのですっ!」


 にぱーっとラビが笑う。


「ラビは賢くて偉いな。ちゃんとふたりに悪気があってやってないってわかってやれるんだもんな」


「えへへ~♡ わかるのです~♡ だってコンちゃんたち、やさしーもん!」


 ぱたたっ、とラビがうさ耳を羽ばたかせ、笑顔で言う。


「おう……笑顔がまぶしー」

「ちょっとむねがいたむねー……ぇい」


 うっ……と心臓を抑えるふたりとも。


「楽しんでやってたなぁ、ふたりとも」

「「ちょこっとね」」

「まったく……いたずら好きだなぁふたりとも」


 俺はコンとあやねの頭を撫でる。


「いたずらしても許してくれる、にぃがだいちゅき」

「おいらもあんちゃんだぁいすき~……ぃ」


 にへーっと笑うコンとあやね。


「あうあう……あのぉ~……にーさーん……」


 ちらちら、とラビが俺を見上げてくる。


「おっとにぃ。ラビが物欲しそーに見ているよ。どうすればいいか、わかってるかね?」


「あいよ、コンさん。ほらラビ」


 わしゃしゃっ、とラビの茶色い髪を撫でる。


「あぅ~♡ はぅううん……♡ にーさんのなでなで……だいすき~……♡」


 ふにゃふにゃと、ラビが嬉しそうに笑う。

「にぃのてくでラビがしょうてんしてる……さすがにぃ」

「あんちゃんはー……ぁ、テクニシャンだねー……ぇい」


「ふたりとも意味わかって言ってるのか?」

「「あんまり」」

「だろうなぁ」


 俺は苦笑する。


「さてラビ、そろそろ起きれるか。コレットたちが朝ご飯作っておまえが来るの待ってるぞ」


「! そうだ! おせちだー!」


 ぱぁああ……! とラビが表情を明るくする。


「いえーす。じゃぱにーずおせーち。めっちゃうまうーま」

「おぞーにもー……ぉ、あるよー……ぉ」


 コンもあやねも、両手を挙げて言う。

 ラビもまたバッ……! と両手を挙げて、喜びをあらわにしていた。


「起きてるか?」

「うんっ! おせち……おぞーに……たのしみー!」


 うれしそうに笑うラビ。

 俺は三人を連れて、コレットたちの待つリビングへと向かうのだった。

夜に後編アップの予定です。


また、新作をはじめました。


「自由を奪った状態で倒すなんて、この卑怯者!」と追放された最強の暗殺者、人里離れた森で魔物狩りしてたら、なぜか村人たちの守り神になってた

(https://book1.adouzi.eu.org/n9668fp/)


最強の影使いの暗殺者が無双するお話です。頑張って書いたので、読んでくださると嬉しいです。


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