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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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154.善人、子どもたちと新年を迎える




 年越しそばを食べた、約一時間後。あと10分ほどで、新しい年が明けようとしている時。


 王都のホテルの、リビングにて。


「みなのしゅー。ちゅーもーく」


 キツネ娘コンが、ソファにすちゃっと立って、他の子どもたちに言う。


「そろそろ年が明けますね。新しい一年が始まろうとしています」


 こくこく、と子どもたちがうなずく。


「実はみー、だまってたけど……今年頭……日付が変わる瞬間、地上にいなかったんだ……!」

「「「な、なんだとー!?」」」


 コンの宣言に、子どもたちが目をむく。


「おいコンッ! ど、どーゆーことなんですっ?」

「ふふふのふ……さぁて、どーゆーことでしょー?」


 キャニスが尋ねるが、コンがもったいぶって教えてくれない。


「ち、地上にいなかったってことは……まさかっ! う、宇宙なのですっ!?」

「うちゅーだってー!?」


 ラビがうさ耳をぴんとたて、他の子たも両手を挙げて驚きを表現する。


「ふっ……」


 コンは答えず、にやりと笑う。立ち上がり、壁一面のガラス窓のもとへとことこと歩いて行く。


 夜空を見上げ、コンがぽそりと呟く。


「地球は……青かった」

「!!!!!!!!!」


 子どもたちがかっ……! と目を見開く。


「ほ、ほんものっぽい……」

「まさかほんとなのかしら!?」

「コンちゃんすごーいのですー!」

「すごぉいねー……ぇ」「すごすぎる……」


 きらきらきらー、と子どもたちが尊敬のまなざしを、コンに向ける。


 コンはふっ……と笑い、そして言う。


「うそぴょーん」

「「「コンちゃーーーん!!!」」」


 子どもたちが一斉に声を張り上げる。


「んだよおめー、嘘かよぉ」

「コンちゃんはー……ぁ、おちゃめさんだー……ぁね」


 ぶーっ、と口ぶるをとがらすキャニスと、相変わらずニコニコ笑顔のあやね。


「せいせい。実は百パー嘘ってわけじゃあないんだなぁ」

「「「?」」」


 子どもたちがはて、と首をかしげる。


「おいどーゆーこったです?」

「まあ見てて」


 コンはそう言うと、ソファの元へ行く。よいしょとソファにのって。


「だーいぶ」


 ぴょんっ、とコンがソファから飛び降りて、すちゃっと着地する。


「こうする」

「「「?」」」

「あっ、あっ、らびわかったのですー!」


 ラビがにぱーっと笑う。


「ほぅ。ではラビくん。解説はよ」


 コンはラビの元へ行くと、キツネしっぽをウサギ娘に向ける。どうやらマイク代わりのようだ。


「えとえと……つまり、日付が変わる瞬間……0時になった瞬間に、ぴょんっ! てするのです。そうすれば……地上にいないことになるのですー!」


 ラビがそう言うと、


「ラビ……せいかい」

「わーい!」


 ぴしっ、とコンがラビを、しっぽで指す。ラビが両手を挙げて喜ぶ。


「そこに気付くとか……ラビ、やはり天才か」

「「「天才かー!」」」


「えへへ~♡」


 子どもたちが手をたたく。ラビが照れくさそうに笑っていた。


「まあ今ラビくんがいったとおり、日付が変わる瞬間、こう……ぴょんっとするのだ」

「「「いいねー!」」」


「にぃ、あとどれくらいで新年?」


 俺は腕時計で日付を確認する。


「お、あと30秒だな。ほら、みんないそげー」

「よーし! おめーらソファにのるんだー!」

「「「っしゃー!」」」


 子どもたちが一斉に、よいしょとソファの上に乗る。横一列に6人が並んでも、十分なほど、ソファは広く大きかった。


「にぃ、あと何秒?」

「あと10秒だな」


「かうんとだうん、プリーズ!」

「はいよー。ごー」


 俺がカウントダウンをすると、他の子たちもそれに続く。


「よーん!」とキャニス。

「さーんなのですー!」とラビ。

「にー……ぃ」とあやね。


「いーち。よし、みなのしゅー、いくでー!」


「「「ぜろーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」


 ぴょーんっ!


 子どもたちはいっせいに、ソファからジャンプする。ゆるく放物線を描き、子どもたちが着地する。


「なぁなぁおにーちゃんっ! どうだったー!」

「らびたち地上にいなかったのです-?」


 子どもたちが、キラキラした目を、俺に向ける。俺はうなずいて返す。


「ああ、ばっちりだ。みんな年明けの瞬間、地上にいなかったぞ」


 俺はぐっ……! と親指を立てる。すると子どもたちもまた、ぐっ……! と親指を立てた。


 子どもたちは輪になると、


「「「いえーい!」」」


 とハイタッチする。


「ぼくたち地上にいなかった……かっけー!」

「姉貴っ! アタシもかっけー?」

「うんー……。かっけー……ぇい」


 えへへ~♡ と子どもたちがにこやかに笑った。


「はっ! そーだっ! おにーちゃんおにーちゃんっ!」


 キャニスが笑顔で、だだだーっ! と俺の元へやってきて、飛びついてくる。


「どうしたキャニス?」


 俺はキャニスを抱き留めて、よしよしと頭を撫でる。


「ジャンプに気を取られて言えてなかったです」


 キャニスはにかっと笑うと、


「おにーちゃんっ! 明けましておめでとー!」


 すると他の子たちも、俺の元へとやってくる。


「はーぴにゅぅいやー、はーじめましてー。おーばらーん」

「にーさん明けましておめでとうなのですー!」


「あんちー……ゃん。今年もよろしくねー……ぇい」

「よ、よろしく……」


「れいあも今年も、なかよくしてあげるわっ」

「みー!」


 子どもたちが楽しそうに、俺に新年の挨拶をしてくれた。俺はしゃがみ込んで、子どもたち一人一人の頭を撫でる。


「あけましておめでとう。みんな、今年もよろしくな」

「「「ことよろー!」」」


 かくして俺たちは、新しい年を迎えたのだった。

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