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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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130.善人、キツネ娘から欲しいものを聞き出す

いつもお世話になってます!


 桜華と風呂に入り、美雪の問題を聞いた翌朝。


 その日は朝から吹雪いていたので、子供たちは家の中で過ごしていた。


 午前中は子供たちをプレイルーム1で運動させ、その後室内プールへとやってきた


「キャニス! れいあとナンバーワンの座をかけて、勝負よ!」


 びしっ! とドラゴン娘レイアが、プールサイドに立つキャニスに指を立てる。


「ばっかおめー。ぼくに勝てると本気で思ってやがるです?」


 いぬっこキャニスが、ふっ……と勝ち誇った顔になる。


「むきー! その顔ちょーむかつくわー! れいあがその顔、けっちょんけっちょんにしてあげるんだから!」

「いーどきょーでやがるです。こてんぱんの返り討ちにしてやんよ」


 不敵に笑うキャニス。レイアとともにプールサイドに立つ。


「おにーちゃん! スタートの合図!」

「はいよ。了解」


 俺はキャニスたちのところまでやってくる。ととと、とウサギ娘が、俺の隣へとやってきた。


「ふ、ふたりとも、ケンカはダメなのです……」


 ぺちょん、とうさ耳を垂らすラビ。


「ばかねラビ。これは真剣勝負。けんかじゃないわ。安心なさい」

「そーです。女同士のガチばとる。ケンカとかそーゆーだっせえまねはしねーです」


 うんうん、と犬娘とドラゴン娘がうなずきあう。


「良かったぁ……」


 にぱーっと、ラビが目に涙をためて微笑む。


「みんななかよしきよしだー……ぁね」

「姉貴。こよしだと思うぞ」

「あえてだよー……ぅ」

「そっかあえてか」

「素直じー……ゃ」


 鬼姉妹がプールサイドに座って、キャニスたちの様子を見守っている。さて残るキツネ娘はと言うと。


「みーはここから観戦する。おーでぃえんすコンちゃん」


 ジャグジーに入って、キャニスたちを見ていた。……都合が良いな。


「よし、じゃあふたりとも。位置について、よーい……どん!」


 俺が合図すると、キャニスたちがいっせいに、プールへ飛び込む。


「ぼくの華麗なるクロールを見よ!」

「れいあの犬かきのほーがすごいんだからね!」


 ふたりとも、同じくらいのスピードで、プールの中を泳いでいく。ざばばばばば! とあっという間に、プールサイドの端から端まで、往復した。


 あっという間だった。結果はと言うと……。


「ぼくのかちー!」

「くっそー!」


 キャニスは圧倒的な速さだった。さすが体力の鬼。


「よくやったなキャニス。すごいぞ」


 俺はプールサイドから上がってきた犬娘の頭を撫でる。


「わふ~♪ もっともっとなでろや~♪」


 よしよしよし、と犬娘の頭を撫でる。気持ちよさそうにしっぽがぶんぶんと揺れた。

「くっ……! どうすればれいあ、キャニスに勝てるのっ?」

「ったく、しゃーねーなー。ぼくが泳ぎをレクチャーしてやるです」


 そんなわけで、犬娘がレイアに、およぎのコツを教えることになった。


「ラビちー……ゃん。一緒にぷかぷか競争しよー……ぉ」

「うん! いいよー!」


 ラビは鬼姉妹とともに、プールの端っこへ行く。背中にビート板をひいて、誰が一番ぷかぷかしてられるかを競う勝負だ。


「…………」


 俺は気を見て、ジャクジーへと移動。そこにいるコンの隣へ腰掛ける。


「へいにぃ。おぬしもジャグラーになりにきたん?」


 銀髪のきつねっこが、俺を見上げて言う。

「なんだ、ジャグラーって?」

「ジャクジーに入る人って意味。決してボールとかお手玉する人じゃない」

「そうかい」


 俺はコンと一緒にジャグジーに入る。コンが「ふぉおおおお…………」と泡の出るところに背中をあてて、気持ちよさそうに声を上げる。


「にぃ。ジャクジー最高だね。肩こりとかによくきくよ」

「そりゃ良かったが、コン。若いんだから肩こりとは無縁だろ?」


「そんなことはない。みーだって肩くらいこる。みーくらいのきょぬーになると、肩がこるのだ」


 はーやれやれ、とコンが肩を回す。


「5歳児に胸なんてあるわけないだろ」


 コンの頭を撫でる。


「背伸びしたいの。そーゆー年頃なの。乙女心、わからないかな?」

「すまん。わからん。男だからな」

「せーてんかんする? てぃーえすものってはやってるじゃん」

「俺には無理だ。男でいたい」


 そんなふうに雑談を交えつつ、俺は探りをいれていく。


 今日の目的は、この子から、クリスマスプレゼントを聞き出すことだ。


「最近なにか悩みとかないか?」

「悩み……あるよ」


 コンが俺を見上げる。


「そーだんしてよい?」

「おお。良いぞ。遠慮せず言ってくれ」

「では……」


 コンが俺の正面へ行く。そして腕を組んで、シリアスな顔になる。


「実は、みーね」「おう」「転生者……なの」


 くわっ! とコンが目を見開いて言う。転生者、つまり前世に地球人の記憶を持つ人間のことだ。


「え、あ、うん……。知ってる」

「なんと。バレてたの?」

 

 くわっ! とまた目を見開くコン。


「いやバレてるもなにも、もうだいぶ前にそのやりとりやっただろ」


 コンが転生者であることは、夏くらいに知った。


「そーだったけな?」


 はて、とコンがしっぽで【?】を作る。


「そうだよ。今更じゃないか」

「でも読者の人たちは忘れてるかもしれないかなって」

「誰の目を意識してるんだお前は……」

「読者を意識した作品作りしないとね」


 この子はクリエイターか何かなのだろうか……?


「それで悩みはないか?」

「ないのん。毎日ちょーたのしい。毎日みちたりてて、なにふじゆーない生活。ここが天国といっても過言ではないね」


 うむうむ、とコンがうなずく。


「ありがとう。そう言ってくれると、頑張ってる職員のみんなが喜ぶよ。冥利に尽きるってさ」

「それはにーも含まれる?」


「もちろん俺も嬉しいよ」


 俺はコンの頭をよしよし撫でる。キツネ娘のしっぽが嬉しそうにくねる。


「特別に、しっぽさわってもよいよ」


 コンがキツネ尻尾を向けてくる。


「みーのしっぽはこだわりポイント。それを触らせるってことは、にーは特別な存在ってことだよ。こーえー?」


「ああ、光栄だな。ありがとう」


 俺はコンのしっぽを撫でる。さらさらとした手触りだった。


「見事な毛並みだな」

「にぃ、わかってる。にぃはわかってる!」


 ぶんぶんと嬉しそうにしっぽを回すコン。

「違いのわかる男だね」

「どうもありがとうな。しかし……そうか、何不自由ないかぁ」


 これは欲しいもの探るのも難しそうだ。


「何か足りないものとかないか。欲しいものとか」

「…………」


 コンがじっ……と俺の目を見てくる。


「なんできゅーに、そんなこと聞くの?」


 じーっと、コンが俺を見据えてくる。しまった。露骨すぎたか……?


 察しの良いこの子のことだ。きっとプレゼントをさぐってると気付いたのだろうか。

 こうなったら逆に開き直ってこう言ってみるか。


「実はサンタさんから頼まれたんだ。おたくのお子さんのプレゼントを聞いてきてくれって」


 嘘を言うのは気が引けた。しかし子供の夢を壊さないためだ。必要なウソもあるだろう。


 俺の言葉を聞いたコンが……。


「それかー!」


 と笑顔になると、ぶんぶんぶん! としっぽを振るう。


「そんな時期か。もーそんな時期な!」

 

 コンが嬉しそうに笑うと、俺の胸にばしゃっと飛びこんで来る。


 俺の胸に体を寄せて、顔をぐいっと近づける。


「あのねあのね! みーは万年筆! かっこいい万年筆が欲しいの!」

「万年筆か? いやに渋いチョイスだな」


 コンは声を潜める。


「ここだけの話だよ。みーはね、将来、小説家になりたいんだ」


 周りを気にしながら、コンが言う。他の子に聞かれたくないのだろう。


「小説家?」

「うむ。全国をあんぎゃして、おもしろいものを見て回る。それを素材にして本をよに出したいの」


「旅の作家ってことか?」

「そゆこと」


 ぴっ、とコンが手でピストルを作る。


「いいなそれ。すごいカッコいいな」

「ふふふ、でしょだしょ?」


 コンのしっぽが、ヘリコプターのように回る。


「そっか。小説書くための万年筆か」

「そ。あ、でも子供っぽいやつはだめだよ。かっこいい、おとなっぽい、渋いデザインの万年筆が欲しいな」


 コンがわくわくしながら、俺にいう。


「わかった。ちゃんとサンタさんに伝えておくよ」

「うん!」


 コンが大きくうなずく。


「あ、でもにぃ。小説家のことは、いっちゃだめだよ」


 しーっ、とコンが口の前に指を立てる。


「わかってるよ。俺とおまえの秘密な」

「シークレットめいくすウーマンうーまんだね」


 くすくす、とコンが笑う。俺も笑って、彼女の頭を撫でるのだった。  

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