表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/189

14.善人、車を改造して、猫娘を探しに行く

お世話になっております!




 孤児院で働くことになってから今日までで感じた、アムの印象について少し触れておこう。


 ここに来たばかりの俺は、ここでのルールや決まり事、どこになにがあるか等を、まったく知らなかった。


 コレットに聞けば丁寧に教えてくれる。


 だが彼女は年少組たちの世話があって、なかなか日中は話す機会が少ない。


 話そうと思ってもそこにキャニスたちが来て、話しが中断させられることも多々あった。


 そんなとき、誰が色々と教えてくれたかというと、アムだった。


 彼女は15歳。


 コレットより年下だが、年少組たちより年齢が上。


 自分も孤児院の子どもであるはずなのに、結構孤児院のことを手伝ってくれている。


 だから孤児院の構造や何がどこに置いてあるか等をよく知っており、俺はそのたびアムの世話になっていた。


 何か俺が困ると、すかさずアムが近づいてきて「どうしたの?」と聞いてきてくれた。


 アムは困っている子を放っておけない性格らしい。


 俺だけに限らず、年少組が泣いてたら抱っこしてあやしたり、コレットが大量の洗濯物を干すのに手間取っているときは、それを手伝ったりと。


 自分も孤児院の子どもとして、養われる立場にあるにもかかわらず、職員のように手伝ってくれているのだ。


 俺が来るまで職員はコレットひとりだけ。

 だからこそ、手を貸してくれるアムは非常に重宝されていたらしい。


 俺がここに就職し、職員が増えてコレットとアムの負担は減った。


 が、俺は来たばかりでミスが多い。


 皿を割ることもしょっちゅうだ。


『なにやってるのよ、まったく!』


 皿を割るたびアムはキッ! とにらんでくるが、結局は自分も手伝ってくれる。


 掃除にしろ洗濯にしろ、アムはなにかと俺のフォローをしてくれた。


『なんで手伝ってくれるんだ?』


 と尋ねたことがあったが、


『あんたが使えなさすぎるから手伝ってるだけだし』


 と大変手厳しい意見をくれた。


 アムは口が悪い。


 が、それは表面上そう聞こえるだけで、


『ばかっ、乾いた皿はこっちの戸棚にいれるのっ。もう、かしてっ』


『マグカップの位置が違うわよっ。ほんとに何度やっても覚えないわねっ。キャニスは赤色、コンは青、ラビは黄色よ。あああもうっあたしが変えておくわっ』


 俺の失敗こうして丁寧に指摘し、そしてフォローしてくれる。


 俺はアムと一緒にいると、俺がだらしのない父親で、アムがしっかりした俺の娘、みたいな、そんな気分になる。


 アムは、普段母親の家事を手伝ってくれる孝行娘のような存在。


 父親役である俺と、みんなの母親であるコレット、その間にいる娘がアム。


 俺にとってアムは、そんな娘的な存在であり、俺にとっては大事なひとだったりするのだった。



    ☆



 孤児院の修繕を行ったその日の夜。


 飯を食ったあと、俺はアムの部屋の前までやってきていた。


 と言ってもアム個人の部屋ではない。


 ここは子どもたちの部屋なのだ。つまり、キャニスたちの部屋でもある。


 しかしキャニスたちは、リビングでコレットとともにデザートを食べている。


 俺は子ども部屋のドアをノックする。


「アム。だいじょうぶか?」


 ドアの向こうにいるはずのアムにむかって声を張る。


 いきなり入ることはしない。いくらアムが子どもでも、15歳の女の子だからな。


 いきなり大人が許可もなく部屋に入ってきたら、怒るだろう。


【…………なんかよう?】


 やや間があってから、アムの声が聞こえてきた。


 声にいつもの活力がなかった。心の底から疲れてるような、疲労感が声に滲み出ていた。


「いや、おまえが食欲ないっていうからだいじょうぶかと思ってな」


 アムはキャニスたちと違って、特別に食欲が旺盛であるわけではない。


 それでも食事を抜く場面は、俺がここに来てからは見たことが無かった。


 それだけにアムのことが心配になってしまう。


「風邪か? 腹痛か? それくらいだったら薬を複製して持ってくるぞ」


 するとアムがうめくような声で、


【…………いらないわ。熱があるわけじゃないし。だから放っておいて】


「いやでも」


 俺が言う前に、アムが遮るようにして、


【いいから。ひとりにして。ひとりになりたいの。そういう気分なの】


 強い調子でそう言った。


「そうか……。わかった。なにかあったら俺に言ってくれよ。普段おまえには世話になってるからな、悩みがあるなら俺に相談してくれ」


 じゃあ、と言って俺が部屋の前を立ち去ろうとした、そのときだった。


【ねえ】


 とドア越しにアムが、俺を呼び止めてくる。


【さっきアンタ、コレットと……キス、してたじゃない】


 俺は立ち止まって部屋の前まで行く。


【それとアンタ、この間から指輪するようになったでしょ。コレットも同じタイミングで、同じ指輪をはめるようになってた】


 どうやらアムは、指輪をするようになっていたことに、気づいていたみたいだ。


【それって……。ピクシーが言っていた、結婚指輪ってやつ?】


 獣人にはプロポーズの時に、指輪を渡す習慣はないと、前回先輩は言っていた。


 だから知らなかったのだろう、指輪の意味を。


「ああ」


【…………。そっか。アンタとコレットって、昔からの知り合いなんだっけ】


 アムはコレットが昔、俺の村で働いていたことを知っている。


【コレットとアンタが再会したのって、つい最近じゃない? ということは……ジロは、昔からコレットのこと好きだったの?】


 アムが俺に問うてくる。


 確かにそうじゃないと、あのときコレットと再会してからプロポーズまで、1週間ほどしかたってないからな。


 下地がない状態でいきなり一目惚れからのプロポーズは、さすがに変だと、アムは考えたのだろう。


 俺がそうだと答えると、アムはしばしの沈黙を経た後、


【……そっか】


 とだけ言うと、また押し黙ってしまった。

「アム。本当にどうしたんだよ?」


【ごめん、なんでもない。ひとりにして、ほんと】


 アムが苦しそうにそう言った。


 なんでもないという感はない……が、だが彼女は俺に話したくないみたいだった。


 アムは年頃の娘だからな、父親に言いたくないことくらいあるのだろう。


 俺がその場を後にしようとすると、


【ねえ】


 とアムが俺を呼び止めてくる。


【ねえ、ジロ。アンタにとって、あたしって……なに? あたしのことって、ジロはどういうふうに、思ってるの?】


 アムの声には切実さがこもっていた。


 冗談とかじゃなくて、真剣にどう思ってるかを聞いてきているのだろう。


「アムのことは……大事に思ってるよ。大切だと思ってる」


【っ! ほ、ほん】


「大切な、俺たちの娘みたいなもんだと思ってるよ」


【…………!!! ………………。……………………………………そっか】

 

 アムは何かを押し殺すようにして、ひとことそう言った。


【そうなんだ。娘なんだ。アンタから見てあたし、子どもだって思われてたんだ】


「ああ。いやただの子どもじゃないぞ。すごく大事な仲間だって思ってるし、それに」【もういいよ】


 俺の言葉を、アムが遮る。


【……もういいよ。わかったよ。もうわかった。ごめんね、ひきとめて。あたしのことは、ちょっとほっといて】


 そう言ってアムは、もう何も言ってこなかった。


 気にはなったが、まあ本人が放っておいてというのなら、そうしてやるのが1番だろう。


 俺は後ろ髪を引かれるような思いをかかえたまま、子ども部屋を後にする。


 ……さて。


 リビングで子どもたちとデザートを食べて、コレットと子どもたちと竜の湯に入り、そしてさあ寝ようか……となった。


 コレットと俺の部屋を、誰かがノックした。


 ドアを開けると、ラビがいた。


「あ、あのあのっ、にーさんっ」


 ラビは動揺しているようだった。


 青い顔をして、震えている。


「たいへんなのですっ!」


「どうかしたのか?」


 俺はしゃがみ込んでラビの頭を撫でてやりながら尋ねる。


 ラビは幾分落ち着きを取り戻したのか、比較的冷静に、状況を端的に述べた。


「いないのですっ!」


「いない? 誰が?」


「アムねーさんが、いなくなったのですっ!」



    ☆



 どうやら子どもたちが風呂からあがって、自分たちの部屋に戻って、アムがいないことに気がついたらしい。


 トイレかなと思ったらしいが、ラビたちがいくら待っても部屋に、アムは帰ってこなかった。


 異変を感じて俺の元へとやってきたらしい。


 子どもたちの部屋へ行くと、閉じてあったはずの窓が開き、カーテンが薄く波打っていた。


「状況から察するに、アムは窓から外へと出て行ってしまったんだろうね。靴もないし」


 先輩がベッド脇に置いてあるはずの靴を見ながら言う。


「どうしましょう……アムが……」


 コレットが顔を真っ青にして、唇を震わせている。


 俺はコレットの肩を抱いて、「子どもたちのことを頼む。俺が捜してくる」


 と彼女に告げる。


 コレットは了承。


 俺は上着を羽織って孤児院の外に出る。


「あの子を探しに行くのかい?」


 背後を振り替えると、ガウンを羽織った先輩がそこにいた。


「もちろん」


「ほぅ、なるほどなるほど。だがジロー。きみにひとつ聞いておきたいんだけど」


 先輩が俺を見上げながら、俺に近づいて言う。


「それはキミが職員で、あの子がこの孤児院の子どもだからかい?」


 先輩がよくわからないことを言う。


「そんなの当たり前じゃないですか。アムは大事な俺たちの仲間だし、俺たちの子どもですよ」


 急いでいるため、俺はそれだけ言うと、孤児院の近くに止めてある車のところまで行く。


 今は夜。


 暗がりの中で彼女を捜すなら、【飛行フライ】で飛ぶよりこっちの方がいいだろう。


「ジロー。ちょっと待つんだ」


 ぐいっと先輩が俺の手を引く。


「なんですか? いそいでるんで手短に」


「そうか。じゃあ簡潔に。ジロー、あの子はどうして、出て行ったと思う?」


 どうしてって言われても……確かによくわからなかった。


「その顔じゃあわかってないね。その状態であの子のもとへいっても逆効果だよ。……やれやれ、キミは本当ににぶいな。しかたない」


 こほん、と先輩が咳払いすると言う。


「アムはね、ショックだったんだよ」


「ショック? いったいなにがです?」


「だから、キミとコレットとが付き合ってたこと。もっと言えば、キミたちがもう婚約まで済ませていることに対してさ」


 先輩は淡々と語る。


「……? それがどうしてショックなんですか?」


 先輩はひとつため息をついて、言った。


「だからね、アムはキミに懸想してたんだよ。キミのことが好きだったんだよ」



 ……。

 …………。

 ……………………はぁ?


「その様子じゃまったく好意に気づいてないようだね。まあもっともわかってたけどさ」


「え、アムが……え? 俺を? なんで? 父親役のこと好きなんだよ」


「だからそれが思い違いなんだよ。アムは若いが子どもじゃない。女の子であっても娘じゃない。アムにとってキミは、頼りになる異性なんだよ」


 異性……と言われても……。


「実感がないかい? じゃあ本人に聞いてみるといいよ。さてじゃあいつまでもこうしてぐだっててもしょうがないから、探しに行こうか。私もついてくよ。心配だからね」


 先輩はそう言って俺の腕を放す。

 

 どうやら一緒にアムを捜してくれるらしい。


 俺は運転席に座り、先輩は助手席に座る。

 俺はエンジンキーを回す。


 車のナビが同時に起動し、ぼわぁっと室内が淡く光る。


「さて当てはあるのかい?」


「いや、まったく」


「だろね。さてどうするつもりだい? 森の中を当てもなく車を飛ばす? ただでさえガソリンは減ってるみたいだけど」


 先輩がメーターを指して言う。


「なんで満杯じゃないんだ? ああ、私のところまで来るのに車を使っていたね」


 ひとり納得する先輩。


「まだ残っているけど、当てもなく走っていたらガソリンはそこを尽きるな。どうするんだ?」


「いちおう方法は思いついてます。先輩にそのときは助力をお願いしたいんですが、いいですか?」


「構わないがどうするんだ?」


 俺は前々から考えていた。


 ガソリンがなくなったとき、車をどうするかと言うことを。


 今のところ2パターンの方法を考えている。


 が、今はこの場でできる方の方法をとる


「確か先輩は【動作入力プログラミング】の魔法って使えましたよね」


「使えるよ」


動作入力プログラミング】とは無属性超級魔法のひとつ。


 無機物に命令を入力し、動かすことができる魔法だ。


 ボールに動作命令プログラムを組み込めば、勝手にコロコロと転がるようになる。


 条件設定は細かくできる。手を叩けばボールが転がるようになる、みたいにな。


 俺はそれを踏まえてどうするかを先輩に説明する。


「なるほど。そうか、ガワだけあればいいのか。なるほどね」


「そういうことです、いざとなったらお願いします」


「まあ、それはいいけど、さてじゃあ肝心のアムはどうやって捜すんだ?」


 この森の構造をそもそも俺は完全に把握してない。


 このまま当てなく走ったら、アムを捜す前に俺がまよってしまうだろう。


「ナビを使います」


「ナビ? カーナビかい?」


 俺はうなずく。


 俺の車にはカーナビが設置してあるのだ。

「衛星がないんだ。ナビなんて使えないだろ?」


「ええ。そこで先輩の出番です」


「? …………。ああ、そういうことか」


 一瞬で先輩が、俺の意図を悟る。


 先輩はナビに手をやると、


「【付与】開始→無属性魔法【地図表示マッピング】」


地図表示マッピング】は周囲の地理を羊皮紙などに書き写す魔法だ。


 本来の使い方は紙に地図を書き出す。


 しかしこれをカーナビに付与すれば……。

「ん。できたね」


 ナビの画面を見ると、周囲の地理情報が表示されるようになっていた。


「あと【探査サーチ】の魔法も付与してください」


「そう言われると思ってパパッと付与しておいたよ」


 さすが先輩、話が早い。


【地図表示】と【探査】をナビに付与することで、地図上に対象物アムの位置情報がピンとして表示される。


 あとはカーナビに従って、アムのもとへいけばいい。


「【探査】は便利だけど魔法を使った時点での位置しかわからないからね」


「そう、移動してる場合はその都度魔法を使わないと行けない」


 けど【探査】をカーナビに付与しておけば、俺がいちいち魔法を使わなくても、こうして自動でアムの動きを追ってくれるのだ。


 俺はカーナビの表示に従って、アムのもとまで車を走らせる。


「自分でやらずに私にやらしたのは、温泉の外だと複製ができないからだろ」


「それもありますし、俺はすでにあるものに魔法を付与することはできませんから」


 あくまで俺の付与は擬似的なものだ。


 物体を作るときに、一緒に魔法を混ぜないといけない。


 つまり複製時にしか魔法を付与できない。

 あとから物体に付与することができるのは、付与術士エンチャンターの先輩だけなのである。


 カーナビはアムまでの位置を計算し、アムの元につくまでの最適なルートを俺に指示してくれる。


 アムはかなりの速度で走っているようだった。


 普通にトロトロ走っていては追いつかない。


 さらにアムは小柄で、木の間をすり抜けられるが、こっちは無理だ。


 どうしても迂回路を使う必要がある。


 こうしてなかなかおいつくことができず、順調にガソリンが減っていく。


 あと少しでガソリンがなくなりそう……と思ったそのときだった。


「いたっ!!」


 前方を走るアムを見つけたのだ。


「アムっ!!!」


 俺は窓を開けて、彼女の名前を呼ぶ。


 アムは俺に気づくと、だっ! と速度を上げた。


「車を降りてアムを追え。彼女は枝伝いに跳んでるみたいだ。車だと遠回りになる。走って行け」


 先輩のアドバイスに従い、俺はくるまを止めておりる。


 俺の靴には【高速化ヘイスト】と【飛行フライ】、そして【筋力増強ビルドアップ】が付与して作ってある。


 俺はぐっ、と身をかがめて、アムが走り去っていった方に向かって、枝伝いにジャンプする。


高速化ヘイスト】の魔法がかかっている俺の方が、アムより早かったらしい。


 すぐにアムに追いついた。


 森の中の、少し開けた場所にて、アムの腕を掴んで足を止めさせる。


「離してっ!!!」


 げしげし、とアムが俺の脚を蹴ってくる。


 彼女は興奮状態にあるようだ。


 耳がピンとたち、ふーっ、ふーっと荒い呼気を吐いている。


 髪の毛が心なしか立っているように見えた。


「アム。教えてくれ。なんで家を出て行ったんだよ」


「あんたにっ! 関係ないでしょ!!」


 蹴りの強さが増す。


 俺はさっき先輩から聞いたことを、アムに尋ねてみることにした。


「なあアム……。ひょっとして、おまえ、俺のこと好きなのか? 父親としてじゃなくて、異性として」


 するとーー


 ーーぴたり。


 とアムが動作を止める。


 その顔が真っ赤に染まり、ややあって、


「〜〜〜〜〜〜〜!!!!そうよっ!!! わるいっ!!??」


 と吠えた。


「あたしはあんたのこと好きなのよっ!! どうして気がつかないのよっ!! バカッ! バカッ! バカッ!!」


 げしげしげし、とアムが俺の脚を強く蹴る。

 

【筋肉増強】されてさほど痛くはないんだが。


 しかし……そうか。先輩の言葉は、本当だったのか。


 蹴っていたアムが、疲れたのか、その蹴りが徐々に弱まっていく。


 そしてアムは俺の体に抱きつく。


 胸板に頭を寄せながら、


「……どうしてもっと早く気づかないのよ、ばか」


 と悲しそうな声で、そう言った。


 それに対して、俺は。


 俺は……深く反省した。


「アム。すまん」


 勝手に俺は思い込んでいたのだ。


 アムは娘で、俺は父親役だと。


 だってありえないだろ?


 相手は15,高1だぞ?


 JKだぞ?


 それが出会ったばかりのおっさんに、思いを寄せてるなんて、思わないじゃないか。


 ……だが、彼女は俺が好きだとハッキリ言った。


 女子高生が、36のおっさんに、告ったのである。


「おまえの好意に気づいてやれなかった。異性としてみてなかった。……ごめんな、にぶくて」


「……ほんとよぉ。……もぉ。ばかぁ……。にぶすぎんのよぉ……ふぇええ~……ん」


 わんわんと泣くアム。


 俺はその頭を撫でてやる。


 しかしどうしたものか……。


 と困っていたそのときだ。


「ジロー。追いついたようだね」


 そう言って、先輩が車を走らせて、俺たちのもとへとやってきたのである。


「先輩」


「まったくこの体は不便だ。向こうと違って脚がとどきにくいことこの上ないよ」


 ぶつぶつ文句を言いながら、先輩が車を降りてくる。


 先輩は前世で免許を持っていた。車を運転できるのだ。


「話しは済んだ?」


「いや……まだです」


「そうか。まあとりあえず家に帰ろう。落ち着いて今後について話せば良い」


 先輩はアムの肩をぽんとたたき、車の後部座席に座らせる。


 ドアを閉めて先輩が言う。


「あのことちゃんと話し合うんだよ。……ああ、わかってると思うけど、この世界は重婚オッケーだ。けど付き合うならきちんと自分の嫁に事情を説明するんだよ」


 そう、この世界は地球と違って、一夫多妻制を取っている。


 普通に何人もの女の子と付き合っている男がいるのだ。


「さてじゃあ帰るか。ジロー、さっき言ったとおりガソリンが切れたんで、きみに指示されていたとおりのことをしておいたよ」


 俺が運転席に座る。


 エンジンキーを回すが、ガス欠を起こしていてエンジンがかからない。


 が……。


 俺はアクセルを踏む、すると、車が動き出すではないか。


「しかし面白いことを考えるね。まさか【動作入力プログラミング】を車にかけて、アクセルを踏めば、タイヤが回るようにするとはね」


 燃料がないと車は動かない。


 しかし無機物に命令を入力し、動かすことができるようになる【動作入力】の魔法を使えば、


 こうして燃料を使わずに、【タイヤを動かす】ことが可能。


 そう、魔法を使えば、ガソリンがなくても、こうして擬似的に車を動かすことができるのだ。


 先輩はさっき、車に【動作入力】の魔法をかけて、【アクセルを踏むとタイヤが動く】というふうに動作命令プログラムを組んでくれたのだ。


 こうして俺はガソリンをふかすことなく車を動かすことに成功。


 エンジンがかからずナビが使えないので、記憶力が抜群に良い妖小人ハーフリングの先輩に道案内してもらい、


 俺たちは孤児院までたどり着いたのだった。



お疲れ様です!!


次回で3章終了です。


アムの好意に気づいた主人公。果たしてアムちゃんとはどうするのか、みたいな話になるかなと。あまり妙に捻らず、ストレートな展開にするつもりです。この世界は地球じゃなくて異世界ですしね。


そんな感じで次回もよろしくお願いします!!


よろしければ下の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!ちょー励みになります!!



では!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一周回って気持ち悪いな 鈍いってレベルじゃねぇぞ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ