表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/189

120.善人、子供たちの遊び相手になる【後編】



 休日。俺は子供たちの遊び相手を務めることになった。


 孤児院1階のホールにて。今日は天気が悪く、外で遊べない。なので中で遊ぶことになっている。


 俺はまず、ラビの相手をする。


 こたつに入り、ラビが選んだ絵本を読む。彼女は俺の膝の上に座り、俺の朗読を聞いていた。


「わわっ! 毒リンゴ! だめなのです! たべたら死んじゃうよぉ……」

 

 くすん、とラビが涙を流す。俺はハンカチを取り出して、ラビの目元をぬぐってやる。


「ラビは本当に、人の痛みがわかる良い子だな。優しい子だ」

「にーさん……。えへっ♪ うれしいのです!」


 ラビの頭をよしよしと撫でる。ロップイヤーの耳が、ぴょこぴょことうれしそうに羽ばたく。


「しかしラビ。おまえもう異世界語は完璧にマスターしてるよな?」


 異世界語。つまり地球の言語のことだ。この世界から見えれば、地球が異世界と言うことになるからな。


 ラビは聡い。子供たちの中で、誰よりも早く字を覚えた。


「えへへっ。でもね、らびは、にーさんにご本を読んで貰うの、だぁいすきなのです! だから読んで貰いたいのです」


「そっか。そうだったんだな。ありがとう、ラビ」


 ラビがハニカムと、もじもじ……と身をよじる。


「あのね……あのね、にーさん。その……」

「ん? ああ……。いいぞ」


 ラビが笑うと、俺の胸にきゅっと抱きついてくる。俺はラビを抱っこしながら、テーブルの上に置いた絵本を読み上げる。


 ラビは俺に抱っこされながら、絵本を見て、時に笑い、時にハラハラしながら、俺の朗読に耳を傾けていた。


「こうして白雪姫は幸せに暮らしましたとさ」

「わぁ! 良かったぁ……。良かったのです!」


 にこーっと笑ってラビが言う。


「そうだな。ハッピーエンドが一番だ」

「うん! にーさん、読んでくれてありがとー!」


 続いて俺は、キャニスとコン、レイアの4人と、テレビゲームをすることになった。


 俺の複製スキルは、作成する物体が良く知るものなら(使ったりやったことのあるものなら)、何でも作れる。


 たとえそれが家電であろうと、テレビゲームであろうと、可能なのだ。……原理はわからない。ゲームの内部構造なんて把握してないしな。

 

 ただそれでも、俺が子供の頃、よく遊んだゲームソフトやゲーム機は、複製できた。


 家電は【雷魔法】と組み合わせることで、普通に、電源がなくても使えるようになった。


 俺たちはテレビの前に座り、コントローラーを持って、レースゲームに興じる。


「みなのしゅー。みーの華麗なるコーナリングを、みよ」


 コンの操作する緑恐竜が、がががががっ、とコーナーを曲がる。


「おー、やるじゃん」「結構うまいわねあんた」「ふふ、でしょだしょ」


 コンがどや顔でコーナーを曲がる。


「さあコン選手。あとは直線だ。いま……ごーる」


 コンの操作したキャラが、ゴールテープを過ぎていった。


「ありがとー。いやありがとー」


 両手を挙げてコンが喜ぶ。


「あー……うん。んじゃ、次のレース行くか」

「コン、おめー、おせーぞです」

「もっと練習しなさいよね」


 そう、実はコン、最下位だったのだ。俺たちは先にゴールして、コンがゴールするのを待っていたのである。


「ごめんなそーりー……」


 ぺちょん、とキツネ耳を垂らすコン。この子、カードゲームとか頭脳使う系は得意だが、こういうレースとかは弱いのである。


「謝ることないさ。良く最後まで投げ出さずにゴールできたな」


 俺はコンの、銀髪を撫でる。ふぁさっふぁさっ、とコンのキツネ尻尾が揺れる。


「にぃ……。なぐさめてくれるの……? ちゅき……。ほれちゃうわ」


 平坦な口調のまま、コンが俺を見上げて言う。


「ありがとう。俺もコンのことは好きだよ」

「まじかい。これはそーしそーあいじゃん。まみーと三角関係やん」


 きゃあ、とコンがうれしい悲鳴を上げる。


「あれでもラビを含めれば、四角関係?」

「コン、お前なんで知ってるんだ……?」

「おっとそいつはタダじゃあ教えられないなぁ……」


 ふふふ、とコンが口元をしっぽで隠して笑う。あいかわらず謎の多い女の子だった。


「おいコン。さっさとコントローラーもてやです」

「次のレースが始められないでしょ!」「みー!」


「おっとすまんね。ではねくすとげーむ」


 コントローラーを持ち、次のレースが始まる。


「おらおらー!」


 最も得意なのはキャニスだ。ばんばんアイテムを使って、がんがんと他のマシーンを抜いてく。


「やるじゃないキャニス! さすがれいあのえいえいのライバルじゃない!」「みー!」


 レイアはあまりアイテムを使わない(というかアイテムを取っても使い方がわからないらしい。必要性を感じないそうだ)。


 ただ一度も減速したり、他のマシーンにい当たったりしないので、スピードがまったく落ちない。


 見事な操作テクニックで、先頭のキャニスを追い越したり追い抜かれたりしてる。


「ぐぬぬ……。スターを今使うべきか……否か……まよう……」


 コンは筋が良いのだが、いかんせんアイテムを温存しすぎるきらいがある。最後の最後まで取っておいて、しかし使う前にレースが終了している。


「やっりー! またぼくが1番!」

「あー! お兄ちゃんに抜かされたわ!」


 俺が2位。レイアが3位。そしてコンが4位だった。


「ぐぬぬ……。いかん……いかんぞぉ。勝てない……」


 がっくし、とコンが肩を落とす。キャニスとレイアが立ち上がって、ぽん! と肩を叩く。


「なに凹んでんだ、です!」

「そーよ! 凹んでたってうまくなんないわよ!」


 強い言葉で、コンを励ます2人。


「かちてーなら練習あるのみ、です!」

「なんどもやれば勝てるわよ!」

「み、みなのしゅー……」


 うるうる、とコンが目を潤ませる。


「みーは……勝てるかな」

「「勝てる勝てる!」」


「れんしゅーすれば、勝てるかなぁ」

「「当たり前じゃん!」」


 コンの瞳に、闘志がやどる。俺はコンの頭をぽんぽんと撫でる。


「ふたりの言うとおりだ。諦めなければ絶対に上手くなるよ」

「にぃ……その言葉、信じる!」


 コンが奮い立つと、テレビの前に座る。そしてキャニスたちからアドバイスを受けて、再びレースに挑む。


 果たして結果は……。


「みーが、かったー!」


 なんと初めて、コンが1位を取った。


「「おめっ!」」 

「おめでとう、コン」


 キャニスたちと俺は、コンに拍手を送る。コンはうれしそうにキツネ尻尾を、くねくねと動かす。


「これはみーだけの勝利じゃない。みんなが支えてくれたから、勝つことができたよ。みんな……てんきゅー!」


 わーっ、と子供たちがもりあがる。俺も拍手すると、コンがうれしそうにVサインを向けてきた。


 ……その後。


 アウトドア組とレースゲームしたあと、俺は鬼姉妹と遊ぶばんになった。


 俺はホールのこたつの前に座る。鬼姉妹たちは俺の膝の上に乗っかっていた。


「それで、何がしたい?」


 ふたりに尋ねると、妹アカネが、


「えっとぉ、折り紙だろ、お絵かきだろ? ああもうやりたいことたくさんあって困るぜ!」


 と悩む。一方でポワポワ笑うあやねに、俺は聞く。


「あやねは何がやりたい?」

「そー……ぉだねー……ぇい」


 うむむ、と考えた後、ふへっ、と笑って言う。


「おいらはいいやー……ぁ。あやねちゃんがー……ぁ、やりたいことやりたいなー……ぁ」 


 姉がそういうと、アカネが「いいのかっ!」と目を輝かせる。


「じゃあじゃあ、兄ちゃん! 折り紙!」

「はいよ」


 ホールには子供の遊び道具がいくつも置いてある。俺は折り紙を取り出し、3人で折って遊ぶ。


「姉貴姉貴っ、鶴おって!」

「はいよー……ぉ」


 しゅぱぱっ、と俊敏な動きで、あやねが折り紙で鶴を作る。あっというまに1羽の鶴が完成した。


「すごいなあやね。器用だな」

「だっろー! 姉貴はすげえんだぜ! たぁくさんいろんなもん、作れるんだよ!」


 アカネが喜々として、姉の良いところを褒める。


「いやー……ぁん。アカネちゃん、そんなに褒めると、おいら照れちゃうなー……ぁ」


 ふへっ、と笑って、あやねが妹の頭を撫でる。アカネが気持ちよさそうに目を細める。


「良い姉妹だな、ふたりとも」


 妹思いの姉に、姉思いの妹。ふたりはとても仲良しだった。


「あんちゃんはー……ぁ。折り紙苦手だなー……ぁ」

「う……。こういうのあんま得意じゃなくてな」


 どうにも上手く作れない。


「兄ちゃん! あれやってあれ! もでりんぐ!」

「そうだな。見てな」


 俺は複製スキルを発動させる。この複製というスキルは、物体の生成だけじゃなく、魔法でさえも、コピー可能なのだ。


「【成形モデリング】」


 無機物の形を変える魔法を使う。すると折り紙が東京タワーや雷門。パンダにキリン……と。


 変幻自在に、紙の像ができる。


「すげー! 兄ちゃんのこれマジすげえマジ最強だぜ!」


 きゃっきゃ、と喜ぶ妹鬼アカネ


「でもー……ぉ。これってー……ぇ。折り紙じゃなくなー……ぁい?」


 ふわふわ笑いながら、冷静なツッコミを入れる姉。


「いいんだよ姉貴! やっぱ兄ちゃんすげえ! 姉貴もすげえ! あたしの周りすげえやつばっかりだ!」


 キラキラとした目を、姉とそして俺に向けてくる。俺とあやねは、アカネの頭をよしよしと撫でた。


「それじゃあやね。次はお前の番だな」

「んぇ? おいらー……ぁ?」


 ぽわんと笑いながら、あやねが首をかしげる。


「ああ。言ったろ、みんなと遊ぶって。それにはおまえもちゃんと含まれてるさ。ほら、言ってごらん」


「…………」


 あやねがふへっ、と笑うと、


「じゃー……あ。ドッジボール、したいなー……ぁ」


 (意外と)内気な妹と対照的に、おっとりとしても、姉は活動的だったりするのだ。


「むっ。みなのしゅー、ききましたかっ」


 ゲームをしていたコンが、すくっ、と立ち上がる。


「ああ! 聞いたぜコン!」

「ドッジボールってきこえたじゃない!」「みー!」


 アウトドア組が立ち上がり、きらきらとした目を向けてくる。


「らびもドッジボールしたいのですー!」


 子供たちが、俺たちの元へとやってくる。


「へいあやねる。みーたちもトゥギャザーしてもよいかい?」


 コンがあやねに尋ねる。姉鬼はフヘッと笑うと、


「うんー……ぅ。一緒にとぎゃぁざ、しよー……ぉ」


「「「おー!」」」


 獣人たちがブンブンとしっぽを振るう。ラビがぴょこぴょことうさ耳を羽ばたかせる。


「よし、じゃあみんなでドッジボールだ。着替えてプレイルーム1に集合な」

「「「りょーかい!」」」


 その後、俺は子供たちを連れてボールを遊びをする。元気な子供たちを相手にして、だいぶくたくたになった。


 だが不思議と、気持ちの良い疲労感だったように、俺は思えた。子供たちが喜んでくれたからかな。

書籍版11月15日発売です!

今週の木曜日が発売日となってます!


書籍版には書き下ろしエピソードや、大幅な加筆がなされてます。具体的な内容は活動報告に乗せてますのでご確認ください!


Amazonやそのほか通販サイトでもまだまだ予約受付中です!買ってくださるととても嬉しいです!買ってくださいお願いします!


ではまた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ