114.善人、コレットとマチルダとプール、そしてジャグジーに入る
いつもお世話になってます!
子供たちと温水プールに入った、その日の夜。
子供たちを寝かしつけた後、俺はコレットとともに、温水プールへとやってきていた。
「ジロくーん。おいで~♪」
プールの中から、うちのエルフ嫁が俺を呼ぶ。
今日はフリルの付いた、緑色のビキニを身に纏っていた。
金髪をポニーテールにしている。白いうなじと肌が実にセクシーである。
俺は水槽の中に入り、コレットの元へ行く。
「それでどうかねジロくん?」
ちらちら、と青い瞳を、俺に向けてくる。
「とっても似合ってるよ。コレットもきつくなって、新しい水着にしたのか?」
海へ行ったときとは、また別の水着を、コレットが身につけていた。
「…………」
コレットの目からハイライトが消えた。
「私、太ったかな?」
ずぅうう……ん、と凹むコレット。あかん。地雷を踏んでしまった。
「ご、ごめんコレット。言葉を間違えた」
「へへっ。そうですよね。ほら、ジロくんの世界のお料理がさ。もうおいしすぎるから毎日ぱくぱく食べちゃうんだ。そしたら太るの、当たり前っすよね」
へっ、とコレットがやけくそ気味に笑う。
「コレット。全然太ってないって」
「ジロくんは優しいね。けど優しさは時にナイフになるのだよ……ぶくぶくぶく……」
コレットが水の中に沈んでしまった。
俺はしゃがみ込んで、エルフ嫁をお姫様抱っこする。ざばっ、と持ち上げる。
「じ、ジロくん?」
「ほら、簡単に持ち上がったぞ。軽い軽い」
するとコレットのエルフ耳が、ぴくぴく、ぴこぴこ、と嬉しそうに羽ばたく。
「そ、そうかなっ?」
「ああ。軽い。全然太ってないよ。それなのに胸は大きくなってさ。まったくうちの嫁はどこまで女の子として魅力が上がっていくんだよ」
言っていてかなり小っ恥ずかしかった。だが嘘は言ってない。事実だ。コレットは日増しにキレイになっていく。
「え、えへへっ♪ もうっ♪ なにその見え見えのお世辞~♪ も~♪ そんなこと言われても、先生うれしくないぞっ」
めっちゃ嬉しそうに、コレットがエルフ耳をパタタと動かした。
「あー! コレット! ずるいですよー!」
プールサイドからマチルダが叫ぶ。今はさっきと違って、白いビキニになっていた。
それも結構きわどいやつだ。布面積が小さくて、下手したら下の毛が見えてしまうんじゃないかというほどである。だがつるりとしたそけい部がのぞいていた。
「むっ。ジロくん。お目々がエッチですぜ」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。もうっ、ジロくんってば目の前にこんなにかわいいお嫁さんがいるのにっ。若さ? ねえ若さが足りないのがいけないの?」
コレットが俺の腕の中で、また嫉妬モードに入っていた。むーっと唇をとがらせて、脇腹をつねってくる。
その間に、マチルダがキレイなフォームで、プールに飛び込む。
ずばばばば! と水泳選手もかくやという見事な泳ぎで、俺たちの元へとやってくる。
「ジロさーん!」
マチルダはそのまま俺の前に顔を出すと、
「よいしょー」とコレットを俺から奪ってお姫様抱っこ。「よいしょー!」そのままぽーっと横に捨てる。
ざっぱーん!
と大きな音を立てて、コレットがプールの中にダイブ。
「えへへっ♪ じーろさんっ♪ ふたりきりでプールに入るなんてずるいです! わたしも一緒に遊びたいです!」
マチルダが、むぎゅーっと俺の腕に抱きついていくる。腕を押しのけるほどの張りのある乳房。
水滴が白い乳房の上に浮いて、玉のように弾いていた。なんてぴちぴちとした肌だろうか。
「もうっ、マチルダってばどうして邪魔をするのかしらっ!」
ざばーっとコレットが水面から顔を出して、歯を剥く。
「今はジロくんとふたりきりでプールできゃっきゃうふふタイムなのにっ。邪魔しないでくれるかなっ!」
コレットの得る耳が、ぴーんっ! と立つ。マチルダはぷいっと横を向いて、俺の腕に、さらにぎゅーっと抱きつく。
「それは無理ですコレット。わたしだってジロさんといちゃいちゃしたいです! 独占なんてずるい!」
むーっとふたりが顔をつきあわせる。
「2人とも仲良くしような」
するとコレットがショックを受けたような顔になる。
「……やっぱり。ジロくんは、若い子の方がいいんだ。若い子の肩を持つんだ」
しょんぼり、とコレットが落ち込む。俺はエルフ嫁の方へ近づこうとするが、
「だまされてはいけませんよジロさん! あれはコレットの演技です! しょんぼりとしてるふりですよ、ふりっ!」
だめー! っとマチルダが後から抱きついてくる。ぐにょり、と乳房が背中に当たる。
いつも思うが、柔らかさと張りを同時に感じるのって不思議だよなと思った。相反するふたつのはずなのに。
柔らかくも吸い付くような、若い乳房が背中に当たる。マチルダは自分から、乳房をぐりぐりと押しつけてきた。
「ちっ! ばーれーたーかー」
コレットはどうやら、マチルダの指摘通り、凹んだふりをしていたようだ。
「もうっ! ジロくんもそんな若い子にデレデレするなんてっ!」
コレットがバシャシャッっと泳いで、そのままの勢いで俺にのしかかってくる。
正面からコレットを受け止めて、抱っこする俺。
胸板にコレットの、柔らかな胸の感触を味わう。しっとりと濡れて、それでいて体温で暖まった若い肌が、実に気持ちよかった。
「ジロくん。言ってやれ言ってやれ! コレットはあこがれの先生なんだぜ。マチルダなんかよりずっと好きなんだぜって!」
「あー! なんですかそれっ! ジロさんっ、わたしのこと嫌いですか? わたしはジロさんのことちょうだい好きです! 身も心も全部ジロさんのものですっ!」
マチルダがコレットをドンッ! と押す。ばしゃっと落ちるコレット。
元受付嬢は、俺の左腕に抱きついて、子犬のように腕にじゃれついてくる。
「そんなこと言ったら先生だってジロくんのだもんっ! 全身余すところなくジロくんのものだもんっ!」
エルフ嫁は俺の右腕に抱きついて、惜しみなく自分の乳房をぐりぐりと押しつけてくる。
「ふたりとも、そう言ってくれるのは嬉しいよ。けど仲良く……」な、と言う前に、
バシャー! バシャー! バシャシャシャシャー!
と、嫁と恋人とが、水を掛け合っていた。
「やったわね、このーっ!」
「ジロさんはわたしのなんですっ! このー!」
子供のように水を掛け合っていた。この戦いに意味があるのだろうか……。
「あるの!」「あります!」「そ、そうか……」
しばしコレットたちが水掛け合うのを、ちょっと離れた場所から見ていた。
やがて彼女たちは、ぜぇはぁ……と肩で息を切らす。
「気が済んだか?」
「「はーい……」」
「ケンカはしないようにな」
「「はーい……」」
その後少し泳いだ後、俺たちはプールサイドの掃除に入る。
もともとはコレットと掃除をするつもりで、ここへ来ていたのだ。
ブラシを使ってプールサイドを掃除。水槽内の水は抜かない。常に継ぎ足し、常に放水というサイクルを続けている。いちいち抜くと面倒だからな。
それはさておき。
「さっ、ジロくん。お掃除終わったからあがりましょう。お風呂でいちゃいちゃしようぜ!」
「あ、ずるいですズルいです! わたしも一緒にお供しますっ!」
掃除が終わったので、コレットたちがプールから出て行こうとする。
「そうだ2人とも。ちょっとジャグジーに入っていかないか」
「「じゃぐじー?」」
はて、とふたりが可愛らしく首をかしげる。
俺は2人を連れて、プールサイドの奥へと行く。
そこにはちょっと大きめの、円形の浴槽があった。
「ジロくん。これなぁに?」
「これがジャグジーだ。まあお風呂……みたいなもん」
このジャグジーは、俺のアイディアを元に、大工のワドさんとに頼んで、設計してもらったものだ。
俺たちは浴槽内に入り、肩まで湯に浸かる。
「わっ、本当だ。プールの温水より温かいです」
マチルダが感嘆の声を上げる。
「ジロくん、竜の湯からお湯を引っ張ってきてるの?」
「いや、違う。温水プールと原理は一緒だ。水道から水を出して、それを【加熱】の魔法で暖めてる」
だがプールの水と違って、魔法をより強くかけて、より加熱している。
「これだとタダのお風呂ですよね? じゃくちーってやつはどういうのなんですか?」
マチルダが小首をかしげる。異世界人の彼女は、イントネーションがおかしかった。
「浴槽の壁から泡がぶわって出るんだよ」
「「?」」
「実際に見てみるのが早いか」
俺は浴槽の中にあるスイッチを、手探りで探し当てる。
壁に埋まるように、スイッチが付いている。俺はカチっ、とそれを押した。すると……。
ぶぉおおおおおおおおお…………!!
と、浴槽の壁や、床から、勢いよく水泡が吹き出てくるではないか。
「きゃぁっ!」
コレットがびっくり仰天。耳をぴこーんっ! と立てる。
「じ、ジロくんっ! 泡がッ! お尻の谷間に泡が入ってきたよっ!」
だきっ! とコレットが俺に抱きついてくる。塩素のつん、としたにおいと、彼女の髪の甘いにおいとが混じり合って、くらくらした。
「わぁ! 不思議です。泡がごぉおおおおって出てますね」
興味深そうに、マチルダが目を輝かせて、噴射口を見やる。
「穴が空いていて、そこから空気が出てるんですね」
「ああ。【風流】っていう初級の風魔法と、【水流】の魔法とが一緒に出るようなっているんだよ」
浴槽の床に【風流】、壁に【水流】を付与(複製合成)して、さらに【動産入力】の魔法をかける。
スイッチを押すと、魔法が発動する、という条件設定したのだ。
壁からは水が勢いよく出て、肩や腰と言った場所を刺激。
床からは泡が出て、足の裏を癒やす仕組みだ。
「浴槽の床には無数の穴が空いてあって、そこから空気が出ると、ぼこぼこってなるんだよ」
「へっー! 体に泡があたって
……んっ♪ とっても……あんっ♪」
「あっ、あっ、すごいです。んっ……♪ くすぐったくって、でも肩のこりに……んっ、んっ、ききます……」
嫁と恋人とが、気持ちよさそうな声を上げていた。
「あんっ♪ ジロくんたいへーん」
コレットがニッコニコしながら言う。
「ビキニの上が取れちゃった♪」
「え? そこまで水流はつよくないんだけど……」
「流されちゃったのっ!」
確かにジャグジーの中に、コレットの水着が浮いていた。
コレットは嬉しそうに笑うと、俺の体に抱きついてくる。こりっ、と固い何かが俺の腕にあたった。
「見られたら大変! ということで、ジロくんで隠します」
「あー! コレットずるいですよ!」
マチルダが気炎を上げる。
「ほらっ! ビキニほら! 早く着けてくださいよほらぁ!」
マチルダがビキニを回収。コレットに押しつけるが、
「水流が激しくって手が伸ばせないわっ」「いやそんなに激しくないんだが……」
「激しいのっ!」
上半身裸のコレットが、嬉しそうに笑いながら、俺に抱きつく。時折「んっ」「あっ……」と甘い声を上げていた。
「ずるいです! こうなったら……わたしはこうします!」
マチルダはというと、ビキニの上だけじゃなく、下までも脱いでぽーっと捨てる。
生まれたままの姿になって、正面から抱きついてきた。
マチルダが俺の太ももを、自分のまたで挟んで、俺の体にしなだれかかってくる。しょり……っとかすかに何かがあたる感触があった。邪な気持ちは振り払わないとな……。
「ずるいわマチルダ! こうなったら先生も脱いじゃう!」
「コレットぱくりっ! それコンちゃんとジロさんの世界でぱくりっていうんですよ!」
「ぱくりじゃないわ。張り合ってるだけよっ!」
きゃあきゃあ、と言い合いになる。
「2人とも……ケンカはやめてくれ。俺はふたりが仲良くしてる方が好きだよ」
俺はマチルダを下ろして、ふたりを抱き寄せる。右にマチルダ、左にコレット。
ふたりの肩を抱いて、抱き寄せる。するとふたりは先ほどの言い争いがウソのように、おとなしくなった。
「一時停戦ですね」
「そうね。ごめんなさいジロくん。仲良くするようつとめるわ」
すりすり……とコレットとマチルダが、俺の肩に頭を乗せて甘えてくる。
裸身をさらす美少女2人に囲まれながら、俺はしばしジャグジーに浸かるのだった
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ではまた!




