113.善人、マチルダと子供たちと温水プールに入る【前編】
いつもお世話になってます!
子供たちとプレイルーム1で遊んだ翌日。
今日は隣の、プレイルーム2に来ている。
俺は水着姿のまま、子供たちが来るのを待っていた。
プレイルーム2は、入ってすぐが準備室みたいになっている。入って左右の壁には、着替え室がある。
奥側の広い方が、女子更衣室。
手前の狭いのが、男子更衣室だ。
まあ使うの俺しかいないので、どうしても女子更衣室の方が広くなる。
待合室の正面は壁になっており、スライド式のガラス戸がある。
「おにーちゃーん!」
ガチャッ……!
とドアが開いて、犬娘キャニスが元気に駆け寄ってくる。
スクール水着を身に纏った彼女が、俺の体に抱きつく。
「着替えてきたぞ、です!」
ぶんぶんぶん! とふわふわの犬しっぽが、お尻のところから生えている。
頭には水泳帽が被されており、普段の犬耳が収まっている。
「ひさしぶりの水着。どう、にぃ。ぷろぽーしょんくずれてない?」
続いて出てきたのはキツネ娘のコンだ。
キャニス同様、子供用の競泳水着に身を包んでいる。
「おう、ばっちりだ。今日もキレイだぞコン」
「あうん。にぃの褒め上手。ほれてまうぜよ」
コンが自分のキツネ尻尾を抱いて、きゃーっと顔を隠す。
残りの子供たちも、ぞろぞろと、更衣室から出てきた。
「あんちゃー……ん。水着になんてきがえてさー……ぁ。冬にプールなんて入るのー……ぉ?」
子供たちは夏に、プールを体験している。
水着を着る=水泳という図式は、彼女たちの頭にあるようだ。
「ああ。今日の運動は水泳だ」
「「すいえいー?」」
子供たちが、俺に疑いのまなざしを向けてくる。
「おにーちゃん。プールは夏に入るものです」
「こんな寒い時期にプール入ったら凍えちゃうのです……!」
ぶるるっ、と子供たちが自分の体を抱く。
「ふふ、みなのしゅー。あまいね」
きらん、と目を光らせて、コンがどや顔になる。
「コン! おめー……何か知ってるな!」
ビシッ……! とキャニスがコンを指さす。
「ほほほ。まああらかた想像は付いてるよ」
コンがしっぽでおひげを作る。くるっ、と俺を見上げて言う。
「にぃ。まさか作ったの? あったかプールを」
「ああ。ワドさんたちとな」
コンがしっぽを、ぴーんと立てた。
「にぃの技術力半端ねーぞ」
ひゃあ、とコンが両手を挙げて喜ぶ。他の子供たちはよくわかってないようで、首をかしげていた。
「お待たせしましたー!」
最後に、ドアが開いて、マチルダがやってきた。
彼女も大人用の競泳水着を着ていた。
白い競泳水着だ。胸の部分が、ぱっつんぱっつんに張ってる。
張りのある乳房が、薄い生地を押し上げて、その大きさを強調していた。
「えへへ、ジロさん、どうですかっ?」
マチルダが両の手で胸を挟み込んで、ぎゅーっと押しつぶす。ぶりゅんっ、と張りのある乳房がつぶされて、とんでもないことになっていた。
「夏に来ていたのとは別の水着なんだな」
夏の段階で競泳用の水着は作っていた。だがそれは確か紺色だった気がする。
だのに今は、真っ白な競泳水着。別の水着だった。
「はいっ! 前のはもうお胸がキツくて、新しいの用意したんです!」
元気よくうなずく。
ばるんっ、と水着によって拘束されているはずの乳房が、激しく動いた。凄まじい張りだ……。
「はー……ぇ。ばいんばいんだー……ぁね」
「姉貴。アタシもあれくらいおっきくなれるかなぁ……」
「なれるさー……ぁ。ばいんばいんにねー……ぇい」
赤鬼姉妹が、マチルダの胸を見て感嘆の吐息を付いていた。
「で、でっ? どうですかっ? ジロさん、この水着っ!」
「ああ、とっても似合ってるよ」
大きな乳房と真っ白いお尻。そけい部に食い込んだV字のラインが実にエロスだ。
おへその筋がうっすらと見えて、そして乳房の山の頂点が、うっすらとピンク色になっている。
見てはいけないと思いつつも、その突起を見て夜を思い出してしまう。目をそらす。
「やった♪ えへへ~♪ ジロさんの水着姿っ! たくましくってとっても素敵です!」
マチルダが晴れやかな笑顔を浮かべると、俺の腕にぎゅーっと抱きついた。
ボールのように張りがあり、それでいてとてつもなく柔らかな乳房が、俺に押しつけられる。
ぐんにょりと柔らかい感触。水着のざらざらとした肌ざわり。そしてマチルダの神から漂うシャンプーの甘い香り。そのすべてが彼女の魅力を表現していた。
「まちるだはおにーちゃんと仲良いなー」
「あう……。らびも……にーさんと仲良く抱っこしたいのです……あうう……」
ウサギ娘のラビが物欲しそうに、指をくわえてモジモジしていた。
俺はラビの頭をよしよしと撫でると、彼女はにぱーっと嬉しそうに笑った。
それはさておき。
「よしじゃあみんな。プール行くか」
「プール? お外行きやがるです?」
「違うよ。この奥がプールになってるんだよ」
「「「?」」」
子供たちがハテ、と首をかしげた。
「まあ、行けばわかるさ」
俺は正面のドアを、横にスライドする。つん……と消毒のにおいが鼻孔をついた。
控え室から、ドアをくぐる。
子供たちが後から付いてくる。
そこに広がっていたのは……。
「はぇー……」「はわわ」「何これ!」
「「「プールだぁあああああ!!!」」」
25mのプールが、室内にあった。
プールサイドは、滑らない材質のものを取り寄せて(砂利のようなもの)作ってある。
水槽は夏に作ったのと同じようにした。
スポーツジムとかにあるような、簡素な屋内プールがそこにある。
「わぁ……! すごい! お部屋の中にプールさんあるのですー!」
ラビが両手を胸の前で握りしめ、目をキラキラさせる。
「しかもおい! みんな気付いたかっ?」
ハッ……! とキャニスがいちはやく気付いて、しっぽをぴーんと立てる。
「ここ……とってもあったけーです!」
俺たちは水着一枚というかっこうなのだが、こうして立っていてもまるで寒くない。
孤児院の外は大雪であり、氷点下いくというのに、ここは暖かかった。
「たしかにねー……ぇい」「服脱いでるのに全然寒くねえな、姉貴」
ううーん、と首をひねる子供たち。
「! ダンボーさん ダンボーさんがいるのですー!」
ラビが天井を見て、びしっ、と指さす。
漏電しないよう、【固定化】の加工がなされたエアコンが設えてある。
「さすがラビ。良く気付いたな」
俺はラビの側によって、よしよしと頭を撫でる。
「えへへ~♪」
「「「いいなぁー……」」」
他の子供たちが、羨ましそうに、ラビを見やる。
「! はいはい! れいあも気付いたわ!」
バッ……! と褐色幼女のレイアが、手を上げる。
「おいどしたレイア!?」
キャニスがレイアを見やる。
レイアは水槽まで近づいて、ちゃぽ……と水の中に手を入れた。
「お水が……あったかいの!」
クワッ……! とレイアが目を見開く。
他の子供たちは、
「いやぁ」「そ、そんなことってありえるのですっ?」
と疑いのまなざしを、プール際のレイアに向ける。
「れいあを信じなさいよっ! ほら、ちゃぽってしてみなさい!」
こっち来い! とレイアが他の子供たちを手招きする。
「まさか、ンなわけねーです」「あえりえないよー……ぉね」
子供たちが懐疑的な表情のまま、プールサイドへ。
しゃがみ込んで、水槽の中に手を入れる。
ちゃぽ。「なんだこりゃー!」
ちゃぽ。「はわわっ、これはっ!」
ちゃぽ。「おやー……ぁ」
「「「あったけー!」」」
子供たちが目を品剥いて叫ぶ。
「ふふのふ。どうだね」
コンが子供たちの背後に立ち、にやりと笑う。
キャニスたちが手を抜いて、コンを見やる。
「コン! おめー……これすらも知ってやがるのかっ?」
「ふふ、物知りコンさんの名は伊達じゃないのよ」
ふふん、とコンが胸を張る。
「コン! 教えろや! このプールは一体!?」
キャニスの問いかけに、コンがちら……っと俺を見る。
「にぃ、みーが言って良い?」
「ああ、頼むよ物知りコンさん」
「まかされた。みーがみんなのインフルエンサーになる」
うなずくと、コンが子供たちを見て言う。彼女は現地人に色々と教えてくれるから助かる。ありがたい存在だ。
「みなのしゅー。これは温水プールだっ」
「「「温水ぷーるー!」」」
と、驚く子供たち。
「て、なーに、コンちゃん」
マチルダがコンの隣にしゃがみ込んで尋ねる。
「まー、こーゆーのは実際に体験するのが良いよ。ね、にぃ?」
まあな。百聞は一見に知らずというし。
「そうだな。じゃあみんな、準備体操してプールに入るぞ」
「「「はーい!」」」




