111.善人、鬼娘たちと冬の森で狩りする【前編】
いつもお世話になってます!
嫁たちとスキヤキを食った翌日。
明け方。俺たちは孤児院近くの森へと、武器を持って赴いていた。
孤児院から数十分離れた場所。
森が深まっているその場所に、そいつはいた。
「……ホワイト・ベア」
魔物だ。
2メートル強ある、巨大なクマのモンスターである。
隆々とした筋肉と、真っ白な体毛。血走った目が特徴的な、そこそこ強いモンスターだ。
ホワイト・ベアは森の中を、きょろきょろとさまよい歩いている。
冬の森の中。
動物は冬眠するこの時期に、さまよい歩く動物。
何をしているかなんて、ひとつしか無い。飯を探しているのだ。
「……よし、2人ともいいか?」
俺は振り返り、小声で言う。
そこにいるのは、ふたりの美少女だ。
長身の一花。
ロリ巨乳の弐鳥。
どちらも鬼の母・桜華の娘であり、今は狩りの相棒だ。
ふたりは神妙な顔つきで、こくりとうなずく。
「……そんじゃ弐鳥。一花。手はず通りに」
そう言うと、ふたりの鬼はこくりとうなずいて、さっ……! と姿を消す。
瞬く間に消えてしまった。
鬼は人間よりも、身体能力に優れるのである。
俺は木の幹に体を隠す。
手を上げて合図を送ると……。
ビュンッ……!!!
と、枝の上から、矢が凄いスピードで、ベアめがけて飛んでいった。
「GIOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
ベアの悲鳴が、静かな森の中に響き渡る。
どうやら矢が命中したようだ。
俺は腰から剣をぬいて、バッ……!
とベアの前に躍り出る。
「GIOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!GIOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
眉間から血を垂らす、白い熊。
血走った目を俺に向け、敵意を飛ばしてくる。
どうやら矢を打った人物(敵)が、俺だと誤認しているようだ。
「空腹で脳に血が回ってないな」
だからこそ早朝、1番腹が空いてる時間を狙ったのである。
「GIOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
ベアが俺を目がけてツッコんでくる。
思考力が低下しているので、
「よっと」
半身をずらしただけで、簡単に避けられた。
つんのめるベアの背中に、俺は剣で浅く切りつける。
仕留めるつもりはない。
相手を挑発できればそれでいい。
「GIGUI…………!!!」
「どうしたクマ五郎。俺を食うんじゃないのか?」
「GIOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
「……つっても言葉通じないんだけどな」
怒髪天といった感じで、ベアが口からよだれを垂らしながら、再度俺に向かってツッコんでくる。
俺は剣を投げ捨てて、全力で後ろに向かって走り出す。
正面を向きながら、バック走で駆け抜ける。
目的のポイントまでおびき寄せて……。
「よいしょっ……!」
俺は身をかがめて、後に向かって、勢いよくジャンプ。
ベアはジャンプせず、そのまま走って俺に近づいてくる。
あと少しで俺に爪が届く……と、そのときだ。
「GIGUUUUUUU…………!!!」
べしゃぁああああああ!!!
と、ベアが派手に、転んだのだ。
何かに足を取られて、前につんのめるような体勢で倒れ伏す。
よく見ると、白く塗られたロープがあったことに気づけるだろう。
だが知能が元々低い上に、血糖値の低い状態のベアは、俺の仕掛けた罠に気づけなかったようだ。
「一花。頼む。慌てずにな」
俺は雪の積もった地面に向かって、声をかける。
もこっ……っと雪が隆起し、そこから一花が顔を出す。
「了解さね!!!」
被っていた白いマントを脱ぎ捨てる。
同じ色で塗られていた大斧を手にとって、大きく振り上げる。
無様に転ぶベアの、無防備な首に向かって、
「ッッッッッッッラアァアッ!!!」
と一花が大斧を振り下ろす。
ザシュッ……!!!
「GIGU…………!!!!」
一花の一降りで、ベアの首は切断。
悲鳴を上げるまもなく、2m強の大熊は、その命を散らしたのだった。
一仕事終えて、俺たちはふぅ……と安堵の吐息をつく。
「すげえ怪力。たいしたもんだ」
俺は一花の側に寄る。
「悪いな、狩りを手伝ってもらって」
「なに、気にしなさんな。この時期の魔獣は危ないからねぇい。狩らないと子供たちに危険が及ぶからね」
俺たちがやっているのは、狩りだ。
冬になると、動物は冬眠する。
だがこうして、エサを十分に確保できなかった個体は、外に出てうろちょろする。
エサが確保できてない動物・魔獣ほど、危険な物はない。
だから俺たちは、その動物たちを狩っている次第だ。
ちなみに武芸の心得のある一花と弐鳥に、手伝ってもらっているのである。
さておき。
一花はニカッ……! と笑うと、俺の肩を抱いてくる。
「たいしたもんなのは兄ちゃんじゃねーかよぉ!」
そこに木の枝の上から、弐鳥が降りてくる。
「うんっ! ほんとほんとっ♪ おにーさんってばすご~い」
俺の腰に、小柄な弐鳥が抱きついてくる。
肩に一花の、腰に弐鳥の大きな乳房が、それぞれあたる。
南国の花を彷彿とさせるような、むせかえるような甘酸っぱいにおいが鼻孔をついた。
「ホワイト・ベアをこうもあっさり。アタシらふたりだけじゃ無理だったさね」
「うん! おにーさんがいてくれたからだよ。さすがおにーさん! 頼りになるな~!」
ぐりぐり、と一花たちが、自分の乳房を惜しみなく、俺に押しつけてくる。
厚着をしていても、その柔らかさは十二分に伝わってくる。
汗でしっとりと服が濡れており、生暖かな感触までも伝わってきた。
つん……と甘い汗のにおいがして、くらくらとする。いかんいかん。
「いや、俺だけの力じゃないよ。おまえたちふたりが俺の言うことちゃんと聞いてくれたおかげだ。ありがとな」
俺はスッ……と身を引いて2人に言う。
「くく、ほんと、凄いのに偉ぶらない。お母ちゃんは本当に良いオスをものにしてくれたね」
「うん! 強くてたくましくて、その上体力もすごい!」
2人が笑顔で、そんなことを言う。
「優良物件過ぎて怖いさね」
「ね、ね、おにーさん。はやく娘のあたしたちも美味しく食べてよ~」
ギラギラとした目をしながら、ふたりが俺の両腕をガシッとつかんでくる。
一花たちは、俺の筋肉や腰のあたりを、するりするり……とヘビのような手つきで愛撫してくる。
長い舌で、ちろちろ……と俺の首筋に這わせる姿は、獲物を前に下まさにヘビだった。
俺は吐息を付いて、ぐいっ、とふたりを押しのける。
「前から言ってるけどそう言うのは愛のあるもの同士でな」
するとふたりは、きょとんとした表情になる。
「愛はあるさね」「あるよ愛たっくさん!」
「けど性欲の方が勝ってるんだろ?」
「「当たり前じゃん」」
何言ってるの、みたいな顔をされてしまった。
……鬼は希少種。
一時は絶滅寸前まで、その数を減らした。
だからだろう。鬼は、メスの鬼は、非常に繁殖欲が強いのだ。
まあもっと簡単に言えば、メス鬼たちはとつもなくスケベなのである。
一花も弐鳥も、そして桜華も。例外なく全員が。
……ああ、3女は違うみたいだけど。
後編は明日、土曜日の12時に投稿します。
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次回もよろしくお願いいたします!




