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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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107.善人、子供たちにソリ遊びを教える【前編】

いつもお世話になってます!



 雪下ろしをした、数時間後。


 午前中。

 俺は子供たちを連れて、孤児院の外にいた。


 今日はこの子たちに、新しい遊びを教えるつもりである。


「雪だー!」


 バッ……! と両手を挙げて、犬しっぽをぶんぶんと振り回す。

 この子はキャニス。

 犬の獣人だ。


「雪と言えばコンコン。あられやコンコン。どうもコンコンです」


 同じく両手を挙げて、うぉーっと平坦な声で言うのは……キツネ獣人のコン。


 長く艶のある銀髪に、もふもふのきつねしっぽ。

 そしていつも眠たげな半眼に、【へ】の字口が特徴的な少女である。


「雪くらいでおおげさね、あんたら。まったく子供なんだから」「みー!」


 そう言って空を飛んで、びゅんびゅんと空を飛び回っているのは、竜の少女レイアだ。


 ぱさついた銀髪に、褐色の肌。

 腰の付け根あたりからドラゴンの翼をはやしている。


 その正体はドラゴンなのだが、今はスキルで人間の姿をしている。


 そしてその頭の上に載っているのは、黒猫のクロだ。

 レイアに懐く猫であり、実は魔獣モンスターだったりする。


 はしゃぐ3人とは別に、残りの子たちは、互いの洋服を見て笑っている。


「アカネちゃん、そのお洋服かわいいのです!」


 そう言って他の子を褒めているのは、ウサギ娘のラビだ。


 あかるい茶髪に、垂れ下がったうさ耳のロップイヤー。


 同じく垂れ下がった瞳が、気弱そうな印象を与える。

 

「……あ、あんがと。ラビちゃんのもとってもかわいいぜ」


 てれてれ……と顔を赤くするのが、赤鬼の妹、アカネだ。


 赤く長い髪をツインテールにしている。


「なかよしさんだー……ぁね」


 その隣でニコニコしている、アカネそっくりの顔をしている少女は、アカネの姉、あやねだ。


 顔の作りは妹鬼アカネと同じだが、こっちは目つきが垂れ下がっており、易しそうな印象を与える。


 赤く短い髪の上には、【ヘルメット】が載せられている。


 ……そして、姉も妹も、額には1本の角が生えている。


 彼女たちは鬼族という、亜人の一種なのだ。


「あやねちゃんのとってもとってもかわいい!」


 ラビがあやねの服を見て言う。


「うれしいね-……ぇい。ラビちゃんはー……ぁ。ほめじょうずだー……ぁね」


 子供たちの服装は、いつもと違った装いだ。


 どことなく野暮ったく、つなぎのような服装。


 手には分厚いグローブをはめており、頭には全員、ヘルメットを装着していた。


「にーさん、どうしてこのカチカチの帽子を、みんなかぶってるのです?」


 ラビが俺を見上げて言う。


「ああ、転んでぶつけないためだ。今日はこれからするための準備だ」


 さておき。


「っておい! おにーちゃん雪が! 雪がねーです!」


 俺たちがいるのは、孤児院の裏庭。


 今日は朝から、コレットともに雪かきをしたので、雪はキレイに掃除されている。


 ちなみに今朝の天気は快晴だ。


「これじゃあ雪合戦できないじゃない! どうしてくれるのよ!」


 レイアが不満そうに声を張り上げる。


「せいせい。みなのしゅー。おちつきたまへ」


 そこへきつねっ子のコンが、前に出て言う。


「今日はにぃ、別の遊びするんだよね?」


 じっ……とコンが俺を見上げてくる。


 そう、いつもは雪合戦とか、雪だるま作ったりするだけだが、今日は別の遊びを企画していた。


 そのための【その格好】だし、そのための【ヘルメット】だ。


 子供たちが俺の前に集まる。


「別の遊びってなんだー!」


「にーさんのあそび……とっても楽しみなのです!」

「あんちゃんの教えてくれる遊びはー……ぁ。いっつもたのしいからねー……ぇい」


 わくわく、と子供たちが期待に目を輝かせて、俺を見てくる。


 俺は彼女たちを前にして、宣言する。


「ああ。昨日はソリ遊びをするぞ」


 俺の言った言葉に、


「「「おー……?」」」


 と現地人いせかいじんたちは、首をかしげた。


「ソリー。そーりーそーりー、あいむそーりー。こぶちそーりー」


 ただひとり、コンだけが、楽しそうにその場でぴょんぴょんする。


「古いの知ってるな」

「みーは古典もしってるのだ。伝統ある古典部のメンバーですゆえな」

「拾うなー、ギャグを」


 何を隠そう、このキツネ娘。

 実は俺と同じで、転生者だ。


 前世に地球の記憶を持っているので、コンはソリと言ってすぐに合点がいったのだ


「してにぃ、ソリするなら、スキー場でもいくの?」

「それはまだ早いから、今日は自家製のでな」


「ほう、自家製スキー場。にぃもセレブになったもんだ」

「つってもそんな大げさなもんじゃないぞ」


 さておき。


「よーし、じゃあみんな、移動するぞ」

「「「はーい!」」」


 俺は子供たちを連れて、裏庭から離れる。

 俺たちの孤児院は、【ソルティップ】という、この人間の国の中央部にある森林地帯の中にある。


 ここは現在、俺の所有地ということになっているのだ。


 俺は商業ギルドの社長ギルドマスターをやっていたりする。


 社長として就任して、色々あり、この森を私有地としてゲットした次第だ。


 つまりこの森の中には、俺たち以外に誰もいない。

 だから子供たちは、他の人間の目を気にせず、楽しく自由に暮らせるのだ。


 俺たちは静かな森の中を、ちょこちょこと歩いて行く。


 ややあって、孤児院から少し離れた、広場へとやってきた。


「「「なんじゃこれー!」」」 


 そこにあるものを見て、子供たちが歓声を上げる。


 そこにあったのは……雪の山だ。


 と言っても、単に雪を集めて、こんもりと積み上げただけの、小規模な山である。


 山の斜面をこすって、滑りやすいように加工されている。


 つまりは……


「雪の滑り台があるです!」


 ということである。


「わぁっ! わぁっ! たのしそー!」


 雪の滑り台を見て、ラビがキラキラと目を輝かせる。


 ヘルメットをいているからわからないが、うさ耳がぴくぴくしているのだろう。


 子供たちは雪でできた滑り台を見て、駆けよろうとする。


「せいせい。まちたまえきみたち」


 それをコンが引き留める。


「んだよコン。滑り台あるなら、すべらせろやです-!」


 元気っこキャニスが、早く早くと、体をうずうずさせて言う。


 一方でコンは、


「そうするとお尻がつめたくなっちゃうでしょ」


 と冷静にコメント。


「「「たしかにー」」」


 と残りの子たちが同意の声を上げる。


「そ、それじゃあどうするのです、にぃさん?」


 ラビが俺を見上げてくる。

 他の子も首をかしげてきた。


「そこでこれだ」


 俺は子供たちの前にしゃがみ込んで、腰のマジック袋(【無限収納アイテムボックス】が付与した袋)から、【それ】を取り出す。


 子供たちの前に【それ】をおく。


「なんでやがるですこれ?」「プラスチックの箱かねぇー……い」


 するとコンが、すすす、と前に出てくる

 ぴっ、と指さして言う。


「これがソリだよ」

「「「ほー……?」」」


 ソリを前に、現地人たちが首をかしげていた。


 ソリと言っても、サンタクロースが乗るようなあれじゃない。

 スキー場でよく見かけるような、プラスチックの1人乗りのソリだ。


「にぃ、みんなよくわかってない。ここは百聞は一見に知らず的なあれをあれするべき」


「そうだな。じゃあコン。一緒に来てくれるか」

「にぃとならばどこまでついていくわ。きゃっ。みーってば尽くす女ね」


 というわけで、一度実践して、子供たちに見せることになった。


 俺はコンを抱っこし、ソリを引っ張りながら、雪山を登る。


 斜面の隣には、掘って作った階段がある。

 雪の滑り台も階段も、俺があらかじめ作っておいた物だ。


加熱ヒーティング】が付与されてないスノーダンプでえっちらおっちらと、雪を積み上げていったのである。


 ややあって、階段を上り終えて、滑り台の頂上へとやってくる。


 大人の俺からすれば、そこまでの高さはない。

 斜度は実に緩やかだ。

 あんまりスピード出したら、子供たちが怖がるからな。


 初めては、楽しい思い出にしてあげたい。

 俺は頂上にソリをおいて、そこに俺が座る。


「よいしょ。ほら、膝の間に座ってくれ」

「そーじゅーは?」


「まずは俺が」

「おっけーボス。きみがあるじで執事がみーでってことね」

「比喩がわからないが、まあそういうことだ。ほら、おいで」


 コンが俺の膝の間に座る。

 ソリの手綱を俺が握る。


「行くぞ」「いつもでもかもーん」


 体重を前にかけ、俺たちを乗せたソリが、斜面を滑り出す。


 しゃーーーーーーー………………。


「ふぉおおおおおおお! しゅべるううううううううううう!!!」


 コンが大きな声を上げる。

 この子は普段、あまり声を荒げないタイプなのだが。


 それだけハシャイでいる、ということだろう。嬉しいもんだ。


 ややあって、ソリが平地へと帰ってくる。

 地上で待機していた子供たちが、俺たちのもとへと集う。


「どうだった、なぁ! コン、どうだった!」


 コンはソリから降りる。

 子供たちの前で……ぐっ! と親指を立てる。


「最の……高!」

「「「おおー!!!」」」


 俺もソリから降りて立ち上がる。

 するとキャニスが、真っ先に俺に向かって走ってきた。


「なぁなぁおにーちゃん! おーにーいーちゃーん!!!」


「よし、じゃあキャニス。行こうか」


 キャニスとともに、俺は滑り台の階段を上る。

 彼女は自分でダダダッ! と登って頂上へと到着していた。


 俺はソリに乗り、膝の間にキャニスが座る。


 しゃぁあーーーー……………………。


「ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおおう!!!」


 斜面を勢いよく滑っている間、キャニスが楽しそうな歓声を上げる。


 ややあって、地上へと帰還。


「どうだったのよ!」「どうだったのです?」

「すげー! めっちゃはえー!」

「「「おおー!」」」


 地球人コンが先陣を切り、現地人キャニスが楽しそうにしたことで、子供たちが【楽しいものだ】と認識してくれたようだ。


 残りの子たちが、いっせいに自分も自分もと手を上げる。


 まずはレイア。


「次はれいあね!」「みー!」

「クロは落ちないのかそれ?」


 頂上で俺が尋ねる。

 クロはレイアの頭の上に乗っかっているのだ。


「クロがそんなやわなわけないでしょう!」

「みー!」


 レイアを連れて斜面を滑る。


 しゃぁああー………………。


 続いてラビ。


「あやねちゃん、次どうぞなのです!」

「いいよー……ぉ。ラビちゃんどうぞー……ぉ」


「いいのですっ?」

「うん。おいらは後でー……ぇ。アカネちゃんと一緒に滑るー……ぅ」


 ラビを抱っこして、頂上へとやってきた俺。


 膝の間にラビを乗せて、準備完了。


「怖くないか?」

「大丈夫なのです! にーさんがいるから……すごく安心!」


 ラビを連れて、斜面を下る。


 しゃぁああーー……………………。


「わー!」


 地上へと帰ってきたラビに、すすす、とコンが近づく。


「ラビ選手、初めてのソリ、どーでしたか?」


 マイクを持っている【てい】で、コンがラビに尋ねる。


「えとえと……ぴゃーってなって、びゅうんってなって……えとその……とっても楽しかったのです-!」


「ありがとうございます。以上、現場のコンでした。いったんCMです」

後編は19時にアップの予定です。

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