99.善人、エルフ嫁と旧校舎で語らう【後編】
旧校舎の雪かきをした後。
俺は【飛行】の魔法を使って地上へと降り立つ。
旧校舎の中へ入る。
コレットの姿は……無かった。
「コレット?」
部屋の中を探し回る。
と言っても、敷地面積が広いので、すぐに彼女は見つかった。
昔、コレットが使っていた、物置小屋。
彼女はそこのベッドに腰を下ろしていた。
「おかえり」
「ただいま」
俺はコレットの隣へと座り込む。
「……ごめんね。寒かったでしょう」
「いや、そんなことないさ」
するとコレットが、俺を……というか、俺の手の先を見てくる。
彼女が両手を使って、俺の指をつかむ。
かじかんでいた指が、コレットの体温によって暖められる。
「……ウソばっかり」
「いや、別にウソじゃなくてな」
「ジロくんのそういう、優しいところ、好きだよ。……けどやせ我慢はしてほしくないな」
彼女がまっすぐに俺を見てくる。
「……ごめんな」
「ああごめんなさい。謝らないで。別にとがめてるわけじゃないから」
わたわた、とコレットが首を振るう。
それに……と続ける。
「元々私のせいで、ジロくんに寒い思いさせちゃったからさ。ごめんね」
彼女は申し訳なさそうに、エルフ耳をぺちょっと垂らす。
「気にすんなって」
「ふむ……。えいっ!」
コレットがそう言うと、俺の肩に手をかけて、ベッドに押し倒してくる。
ベッドに置いてあった毛布をつかむと、俺にかけて、自分も中に入ってくる。
「体を温め合う的なあれしよ?」
「ああ、うん。そうだな」
俺たちはもぞもぞ……と濡れた服を脱いで、肌を付き合わせて、抱き合う。
彼女の肌が、しっとりと俺の肌に吸い付いてくる。
ぷりんと張りのある乳房が、俺の胸板に潰れて、ぐにょっと形を変えていた。
ふわりと甘い、花の蜜のようなにおいがする。
コレットは長い足を、俺の足にからめてきた。
むっちりとした太ももが、俺の太ももにあたって気持ちが良い。
「こうしてるとね、昔を思い出すの」
コレットが俺の体に抱きつきながら言う。
「昔?」
「うん、去年の冬。雪が降って、とっても寒くてね。孤児院の子たちみんなで、肩を寄せ合って寝たの」
去年、つまり俺がここへ来る前のこと。
彼女たちの経済事情は、あまり良くなかった。
なにせ借金があったくらいだしな。
「建物もこの通り古くてね。すきま風がびゅうびゅう吹いてくるの。だから毛布を被って、こうやってみんなで暖め合ってたわ」
「……裸同士で?」
「違うわよ。もう、ジロくんのえっち」
微笑んでコレットが、俺の背中をぺちんと叩く。
「そう言えば聞いたぞ。寝ずに湯たんぽを作ってくれていたんだってな」
「あー……。そんなこともあったかなー」
子供たちが寒さで震えないよう、彼女は湯たんぽを作って、お湯が冷めたら、そのたび新しいものを補充したそうだ。
「やっぱすごいよ、コレットは。強くてさ」
そんな調子じゃ、まともに眠れないだろうに。
夜はそんなふうに暖めて、朝になったら子供たちの面倒を見る。
それをこの細腕、細い体でこなしたのだが……。
コレットの胆力は、そうとうのものであった。
「いやいや、照れますぜ」
なはは、と笑った後、コレットが微笑む。
「けど……今年はジロくんがいる」
コレットは目を細めて、俺の体に、ぎゅっと抱きついてきた。
柔らかな肌の感触と、女性の甘い肌のにおい。
彼女の吐息が肌にかかってくすぐったい。
「ジロくんのおかげだよ。今年の冬、快適に過ごせるのは。あの子たちにもう、寒い思いをさせないであげられる。それがとっても嬉しいの……」
ぐす……とコレットが鼻を啜る。
俺は彼女の頭をぎゅっと抱き寄せて、頭を撫でた。
「ありがとう、ジロくん。あなたがいてくれて、本当に良かった」
「……どういたしまして」
俺はコレットと抱擁を交わす。
彼女の肌は、ぽかぽかとして暖かかった。
ぐにょりと潰れた乳房は生暖かく、しっとりと濡れており、とても気持ちが良い。
彼女のふとももが、もぞもぞ……と動く。彼女の股の付け根に、俺の太ももが挟まれるような体勢だ。
「……ジロくんや。思い出しますな」
コレットが俺を見上げてくる。
その顔は真っ赤だ?
熱でも引いてるのか、ってくらい体が熱い。
俺は彼女のつるりとしたおでこに、額を合わせる。
風邪は引いてないようだ。
「何を?」
「この部屋。ジロくんと初めて結ばれたお部屋ですねっ」
ウキウキしながら、コレットが言う。
晴れた日の青空のような、澄んだ瞳が、俺をまっすぐに見てくる。
「あー……そうだな。あれからもう半年か」
冒険者を引退し、コレットと森で再会した。
そこで彼女とで会い、子供たちと触れあい。
そして……ここで思いを告げた。
「あれから半年か」
「そうそう。それから何度も、ここでジロくんに優しく抱いてもらったわけですよ」
にこーっと笑って、コレットが首筋に顔を埋める。
ちゅっ、ちゅっ、と俺の首に、コレットがキスしてくる。
俺の胸板を、彼女の滑らかな手が撫でる。
「……ダメ?」
「コレット。もう数時間後には朝になるぞ」
「わかってるもん。でも……体がとっても熱いの。……だめ?」
潤んだ瞳で、コレットが見上げてくる。
「わかった。おいで」
「ふふっ♪ ありがとジロくん」
楽しそうにそう言うと、コレットが俺の体に上に乗っかってくる。
そのまま2人で向かい合うようにして、抱き合う。
「……大好き、ジロくん。これからもずっとそばにいてね」
「ああ。俺も好きだよ。俺の側に、ずっといてくれ」
俺たちは笑い合うと、ちゅっ……とついばむようなキスをする。
その後は唇同士を寄せ合って、長く熱い、口づけを交わすのだった。
次回で12章終了となります。
また活動報告のほうで、キャララフ公開してます。
今日はコンちゃんのラフを公開する予定。このあとすぐにあげようと思ってます。
また、新連載やってます。
下にリンク貼ってます。タイトルをクリックすれば飛べるので、よろしければぜひ!
ではまた!




