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【完結】善人のおっさん、冒険者を引退して孤児院の先生になる 〜 エルフの嫁と獣人幼女たちと楽しく暮らしてます  作者: 茨木野


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97.善人、雪が降ってはしゃぐ子供たちに、寒さ対策を施す

いつもお世話になってます!




 コレットと朝の見回りをした、翌日。


 明け方、ついにこの国に、初雪が降った。


 話は雪が降って数時間、午前7時の出来事だ。


 俺は朝食の準備をコレットに任し、子供たちを起こしに行く。


 ドアを開けて、子供たちの部屋へ入る。


「おーい、みんな。朝だぞー」


 暖房の効いた暖かい部屋では、子供たちが全員、すやすやと眠っていた。


「おーい、朝飯だぞー」


「「「…………」」」


 子供たちは目を覚まさない。

 部屋が暖かいせいだろうか。


 比較的目覚めの良いキャニスとコンですら、くぅくぅと、寝息を立てていた。


「起きない。どうしたもんか」


 俺はとりあえず、カーテンを開け見てることにした。


 日の光で子供たちが起きる……かと思ったのだが。


「そういえば雪降ってたんだった」

「「「…………」」」ぴくっ。


 空はどんよりと、灰色の分厚い雲に覆われていた。


 日の光なんて届くわけがなかった。寝ぼけてるな、俺。


 と思っていたそのときだ。


「「「雪だってー!?」」」


 ガバッ……!


 と子供たちが、いっせいに目を覚ました。

「おにーちゃん! 雪ってマジか、ですっ?」


 茶髪いぬっ子のキャニスが、俺に向かって走ってきて、抱きつく。


「ああ。ほら見てごらん」


 俺は白く曇っている窓ガラスを、手でふく。

 窓の外では、雪がしんしんと、天空より舞い降りていた。


「! ほんとだっ! おめーらすげーぞ! 雪だ雪ー!!」


「「「ほんとー?」」」


 子供たちがダダダっ、と窓際にいる俺たち目がけて、走ってくる。


「にぃ。だっこ。みせて。窓の外っ!」


 銀髪キツネ娘のコンが、珍しく声を大にしてぴょんぴょん飛び跳ねていた。


 しゅるん、と素早く俺の体に登ると、肩に乗って、外を見やる。


「おう。ほんまや! 雪ふってるー!」


 ぶるんぶるん、とふさふさのキツネ尻尾を、コンがヘリコプターのように振り回す。

「らびもみたいのですー!」

「おいらもー……ぉ」

「アタシもっ!」


 俺は兎獣人のラビ、赤鬼姉妹のあやねとアカネを、よいしょと持ち上げる。


「ほんとだー!」「雪だねー……ぇい」「あねきっ! あねきっ! 雪だ雪! すげー!」


 わあわあ、と子供たちが目を輝かせて、外の景色に見入っている。


「みんな雪好きなんだな?」

「「「だいすきー!」」」


 子供たちが笑顔で答える。

 

「そっか。じゃあみんな、朝飯食ったらちょっと外で遊ぼうか」


 俺がそう言うと、子供たちが「「「えー!?」」」と不満げに叫んだ。


「いま! 今雪降ってやがるです!」

「なう。いま遊びにいきたい」

「「「いきたーい!!」」」


 どうやら子供たちは、早く雪が降っている外に出たいみたいだ。


「なーなーおにーちゃん。ちゃんと飯はくうです」

「だからお外にいってもよかですかい?」


 待ちきれないのだろう。

 子供たちの目はキラキラと輝き、獣人たちはしっぽや耳を激しく、動かしていた。


「そうだなぁ。うん、じゃあ少しだけな」


 俺がそう言うと、子供たちがさらに、笑顔を明るくする。


「やったー! おにーちゃんだいすきー!」

「にぃのその、優しいところ、みーすきやで。きゃ、告白してもーた」


「にーさんっ! ありがとうなのです!」


「あんちゃんはほんとー……ぉに、やさしいねー……ぇい」


 きゃっきゃ、と喜ぶ子供たち。


「それじゃその前に、ちゃんとお着替えするんだぞ」


「「「りょーかいっ!」」」


 かくしてお外に出ることになった。


 俺は子供たちに、まずはインナーを着せる。


 保温性と伸縮性に優れたインナーとタイツを、子供たちにはかせる。


「にぃ、これヒートなてっく?」

「ああ。【成形モデリング】を使って、コンたちの体のサイズに合うものを作ったんだよ」


「なるへそ。あたたかし」


 インナーとタイツを着せた後、次は厚手のスカートやシャツ、ジャケットを着せる。

「おにーちゃんっ! まだかっ? まだなのかっ?」


 キャニスのしっぽが、ブンブンブン! と激しく動く。


「まだだよ。ほら、ダウンジャケット着ようか」

「おうよ!」


 キャニスが赤色のダウンを身につける。


 俺は彼女の頭に毛糸の帽子をかぶせる。

 これはコレットが編んだ特注の帽子だ。


 犬耳がすっぽり入るように、コレットが編んでくれたのである。


 俺は彼女に帽子と、そして耳当てをつける。

 首にマフラーと、そして手には手袋をはめる。


「あちー! あちちです!」

「これくらい着込まないと風邪引くからな」


 俺は他の子たちにも、同様に、インナーとダウン、そして防寒着を着せる。


「にぃ。【加熱ヒーティング】かかってるの、これ?」


 コンが防寒着を指さして言う。

 水色のマフラーで首元と口元を覆っていた。


「いや、低温火傷するからな。魔法はかかってないよ」

「なるへそ。にぃの配慮、いいね。ぷらす5ぽいんつ」


 ぐっ! とコンがお指を立てる。

 何のポイントなんだろうか……。


 その後ラビ、あやねアカネ、レイアに防寒着をしっかりと着せる。


「おにーちゃん! これでおっけーだろっ? 早く外行かせろや、です!」


 キャニスが体をうずうずさせて言う。


「まった。その前にみんな、後をむいて、俺に背中を向けてくれ」


 子供たちが、素直にくるっ、と身を反転させる。


「にぃ、なにするの?」


 コンが首だけ、俺に向けて言う。


「外にでても暖かくなるよう、これを貼ろうと思ってな」


 俺はマジック袋から、【それ】を取り出す。


 コンはそれを見て、ぴーんと、しっぽを立てる。


「カイロさまやんけー」


 うぉおお、と両手を挙げるコン。


「なんです、それ?」


 キャニスが首をかしげる。


「まー、ひゃくぶんはいっけんにしかず。にぃ、張って」


「あいよ」


 俺はしゃがみ込んで、キャニスの背中に、カイロを貼る。


 張るタイプのカイロを、インナーの上、シャツの上に張る。


「? べつにあったかくなんねーです」

「ふふ、すぐに効果が出るから、あわてなさんなや」


 コンが意味深に笑う。


 全員にカイロを貼り終えて、厚手の靴下をはかせる。


 靴下に張るタイプのカイロも張って、準備完了。


「よし、行くぞみんな」

「「「よっしゃー!」」」


 子供たちが、元気よく、子供部屋を出て行く。


「ま、まって~……」


 足の遅いラビが、一歩で遅れる。

 俺はラビをよいしょと抱き上げる。


「えへっ♪ にーさんありがとなのですっ!」


 きゅーっと、ラビが俺の胸にしがみつく。

 にぱっと笑った表情が、実に愛らしい。


「気にすんな。行こうか」

「はいなのです!」


 俺はラビを連れて、部屋を出る。


 2階から階段を使って、1階へ。

 そしてホールを抜けて、ガラス戸を開く。


「わぁ……! 雪だぁっ! にーさん、雪がふってるのですー!」


 胸の中で、ラビが興奮気味に言う。


 白いニット帽子の下で、うさ耳がぴょこぴょこと動いていた。


 扉を開くと、とたんに寒さが、露出した肌にあたる。


 びょぉおお……と風に乗って雪が舞い上がる。


 曇天の下で、雪が絶え間なく降り注いでいた。


「ゆきじゃー!」

「コンコン、あられやコンコン。そしてみーはコンコン」


 キャニスとコンが、裏庭で、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。


「あんたたち子供ね-」

「レイアちー……ゃん。たのしそうだねー……ぇい」

「めっちゃ喜んでんじゃん」


 レイアは翼を広げて、空をビュンビュンと飛び回っていた。


 鬼姉妹は黒猫(クロという。本当は魔獣)を抱っこしていた。

 どうやらレイアの頭から、ずり落ちてしまったらしい。


 子供たちが楽しそうに、雪空の下ではしゃいでいる。


「にーさんっ、にーさんっ! らびもっ!」

「おう。行っておいで」


 俺はラビを下ろす。

 

 彼女はぴゅーっ、と子供たちのもとへと走って行った。


「ラビちー……ゃん。さきにいっちゃってごみんねー……ぇ」


 ラビに気付いた姉鬼あやねが、ぺこっと頭を下げる。


「あ、アタシのほうこそ……ごめん。姉貴は悪くねえんだ。アタシが、はしゃいで先に行ったんだ……」


 しゅん、と妹鬼アカネが肩をすぼめて反省する。


「ううん、良いのです! 雪がたのしみなのは、ラビも一緒なのです!」


 ラビがアカネの手をつかんで、にっこりと笑う。


「遊ぼうなのです!」

「ああっ!」

「仲良いねー……ぇい」


 うさぎっこと鬼姉妹は、手をつないで、とてててと走り出す。


 俺は子供たちのもとへと、歩いて近づく。

「なあなあおにーちゃん!」


 キャニスが笑顔で、俺に向かって走ってくる。


 まだ雪はそこまで積もっていない。

 だがキャニスの鼻の頭は赤くなっていて、寒そうだ。


「どうした、キャニス?」


 俺はしゃがみ込んで、キャニスと目を合わせる。


「なんか背中が、とってもあったけーです!」


 くるくるくる、とキャニスが自分の背中を見ようと、走り回る。

 だがカイロは、背中に張り付いているので、見ようと思って無理だ。


「ふふふのふ、それがカイロだよ」


 コンがキャニスの近くによって言う。

 しっぽでおひげを作っていた。


「カイロすげーな! とってもあったけーです! ぽかぽかするです!」


 にぱーっと、キャニスが明るい笑みを浮かべる。


「寒くないか?」


「ばっちりです!」


「そっか。ならよし。元気に走ってこい」


「おー! いくぞコン!」

「口あーんて開けて、かきごおりごっこしようぞ」


 だーっ! と犬娘と、きつねっこが、走って行く。


「にーさーん! 足下がとってもあったかいのですー!」


 しゃがみ込んで雪を集めていたラビが、俺に向かって声を張る。


「あんちゃんのおかげでー……ぇ。とってもあったかいよー……ぉ」


「「「ありがとー!」」」


 子供たちがニコニコしながら、寒空の下で楽しそうにしている。


 その笑顔が見れただけで、俺は満足だった。

書籍版11月15日に発売です。


発売までに色々と情報公開してます。


今日はこのあと10分後くらいに、活動報告にて、キャニスちゃんのキャララフを公開します。


次回もよろしくお願いいたします!

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