表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ勇者は捻くれている  作者: 星長晶人
第一章 最初の街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/104

外套の剣士は試し斬りをする

 ミスティ――ではなく剣の邪精霊・夜魔烏(ヤマガラス)として、クリアが俺に対して剣を購入した。要らなくなった鋼の剣は世話になったという事でミスティの剣バージョンで粉々に切り裂いた。勿論その後、鉄クズとしてギルドで換金させてもらったが。

 ……その際にミリカとユニだけには事情を説明しておいたのだが、何故かミリカもユニも少し不機嫌だった気がする。まあ他人の、それも女性の考えている事は分からない。読み取ろうなんて事自体が間違っているんだろう。


 ついでに俺は手にある紋章を隠すために両手の黒い革手袋を購入した。残念ながらミスティを買った鍛冶屋にはなかったので俺がクエストに出る時などに着る外套を買った骨董品店で見つけたスキル付きのヤツだ。

 スキルは『自動洗浄』と『呪力増幅』。『自動洗浄』は外套と同じで汚れを自動的に綺麗にしてくれる便利スキルだし、『呪力増幅』はミスティに言われるがまま購入した。その方が自分は強いから、という事らしい。

 ステータスの追加もあり防御力プラス二十一と器用さプラス三十四がある。


「……」


 俺は無言で右腰の鞘から夜魔烏(ヤマガラス)を抜き放つ。


『あら。私の試し斬りでもするの?』


 ミスティが頭に直接話しかけてくる。ミスティの言葉に応じて鍔の間に埋め込まれている菱形の赤い水晶のようなモノが明滅していた。


(……ああ)


 俺は心の中で話すようにすると声を出さずにミスティと会話が出来ると言われそうしていた。今ではすっかり慣れて普通に会話するのと同時並行出来るまでになった。……常日頃から考えて喋るという事をしてきたおかげかもしれない。

 ミスティは俺の心に常に触れていると言う感覚らしく俺がどう言う人物なのかという事も分かっているようだ。ウザいギリギリを狙って俺に言葉を投げかけてくる。


(……それよりミスティ。お前って『実体化』は出来るのか?)


 ずっと剣でも良いのだが、聞いてみた。……『実体化』と剣化(?)を交互に使えば囮として使えるからな。二対一――と見せかけて独り。みたいな?


『出来るわよ。剣になってる方は『精霊化』で、『実体化』する事も可能よ。だって私、自分の剣を『実体化』した自分に持たせて戦えるもの。持ち主が必要なのは、私以上に剣を上手く扱えて強い者がいれば更に強くなるからよ』


 ミスティは俺の声と心の両方に応えた。……『精霊化』はまだ見てないと言うべきなのか、俺は剣から『実体化』したミスティを見てはいるが、剣はそのままだった。つまりは分離という事になる。だから『実体化』を解いただけであって『精霊化』したとは言いにくいだろう。


(……それなら良い)


 俺はそれだけ言って、ミスティに言われて判明した技術、『魔力感知』というスキルを手に入れたので周囲数十メートルに居る生物の居場所を魔力で感知出来る。そのため周辺に居るモンスターを見つけてそっちへ行くという今までよりも効率の良い狩りが出来るようになったのだ。


 因みに俺が今居る場所は泉の森――ではない。アンファニアから名前を変更したいが良い案が思い浮かばずまだ名前のない街。その近くにある泉の森の街を挟んで反対側に位置するガールディン山。その左側にあるネーメラ沼に来ていた。


(……ミスティの力で翼を生やす事って出来るか?)


『出来るわよ? ほら』


 グチャグチャ度が増えてきて靴の泥を洗うのが面倒なレベルになりそうだったので聞くと、あっさり出来ると言われ外套越しに翼が生える。人間にはない筋肉を動かす感じではなく、自分の意のままに飛べるようになっているようで、俺が頭でイメージした通りに飛ぶ事が出来た。羽ばたくのは必要な分羽ばたいてくれるようだ。もしかしたらミスティの助力があってこそかもしれない。

 ……手加減出来るようになったとは言え『神風魔法』及び『疾風迅雷』などの勇者一行が持つスキルは通常の魔法よりも魔力の消費が大きい。無駄な消費が多いと言うべきかもしれないが。その点俺の近くに風系統の魔法を持っているヤツが居ないため俺は魔力の無駄遣いをしているという事になる。だから必要最低限の魔力で飛べる方法がないか、と飛ぶ専用の魔法がないかと聞いた訳だ。


「……便利だな」


 俺はしっかりと『観察』させてもらう。


『でしょ? 『烏羽(からすば)』って言うスキルよ』


 俺が声に出して言うとミスティは得意気に言った。……俺が言った便利ってのは今後も俺が『模倣』した時に便利っていう事だ。まあそれを口に出す程俺はバカじゃないが。


『……酷いわね。実際と心で口に出さなくても私とクレトの心は繋がってるのよ』


 全部聞こえてるわ、とミスティは言う。……そうなのか。じゃあ早々に心を読まれないようなスキルを『模倣』しなければならない。俺が手に入れる努力をすれば良いって? 面倒だろ。他人のヤツを『模倣』した方が単純だし簡単だ。


『……クレトって意外と酷い人なのね』


 ミスティは唇を尖らせたような拗ねた口調で言った。


(……心を覗かれるのは嫌なもんだ。それに、自分より他人がやった方が楽で良い)


 俺はミスティにそう言って、ネーメラ沼に居た討伐クエスト対象の蟹や蛭などを狩った。面白いように狩れるため、三十体討伐のクエスト三つ分以上の成果を上げてしまったが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ