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怪力魔法ウォーリア系転生TSアラサー不老幼女新米侍女  作者: Leni
第二章 近衛侍女

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32.近未来幻想ファンタジー系魔王降臨レクイエム<6>

 私は勢いよく戦斧を振り下ろす。

 轟音と共に、戦斧は床に叩きつけられ、石造りの床に刃が食い込む。

 そして私は戦斧を手放した。戦斧は倒れることなく、柄を上にして逆さに直立している。


「さて、何から話そうか」


 私はそう言って地面に座り込んだ。

 武装解除だ。空間収納魔法に戦斧をしまわないのは、まあ一応の備えということで。


「キリン氏の武器の置き方が男らしすぎるでござる……」


 そう古風で今風という奇妙なアルイブキラの言葉で言いながら、元勇者アセトリードの顔の位置が下がる。

 身体が闇の塊なので良く解らないが、おそらく座ったのだろう。


 そんな私達二人の様子を見て、仕方がないな、という表情をしてリネが道具袋から椅子を取り出して座った。

 あ、椅子かよずるい。こっちは冷たい床に直接座っているんだぞ。


 そしてオルトは兜のフェイスガードを上げ、困惑した顔で突っ立っている。


「いや、オルトは座らなくて良いよ。私達で勝手に話すだけだしな」


 そう私が言うが。


「……いや、姫の信用する人物。私も座ろう」


 オルトはそう言って、プレートアーマーのままその場に座った。

 それを見たアセトリードは、目を細めて笑った。


「いや、話せるであるな甲冑のお方。皆が使ってる言葉からして、アルイブキラの戦士殿でござるかな? 拙者、アセトリードと申す」


「オルトだ。アルイブキラの近衛騎士をしている」


「近衛騎士でござるかー。さすが災厄戦に駆り出されるだけあって、一流どころでござるなぁ」


 これはこれは、とアセトリードが呟くと、闇の塊の中から細い触手が飛び出し、アセトリードの額をぺちぺちと叩く。手の代わりか。本格的に人間辞めちゃっているんだなぁ、彼。


「そういえばキリン氏の地元はアルイブキラでござったな。地元から援軍を引っ張ってきたでござるか?」


「いや、実は今、私、侍女をしているんだ。だからむしろ逆で、オルトに侍女として付いてきた感じだ」


 アセトリードの質問に、私は今回の関係をそのように説明した。

 侍女と言っても謎の戦闘侍女とかいうのだけど。


「侍女! 庭師からどうやったら侍女になるでござるか!? おかしすぎるでござるよ」


「ええー、そうかな。ごく普通の転職だぞ」


 予想していた反応に、私はそう返す。

 全く別の業種に転職なんて、前世では珍しくなかったけどなぁ。

 今生でも、職業選択の自由的な概念がある国だって、珍しくないぞ。


「私も姫が侍女になったと聞いて、かなり驚いたぞ」


「私もです」


 などとオルトとリネに言われる私。

 仕方なしに、私はいかに戦いに疲れ、平和に過ごしたくなったかをアセトリードに語った。


「ああ、それ解るでござる」


 と、アセトリードが同調してきた。


「緑の悪竜を倒したとき、やってやったでござるという歓喜と一緒に、もう二度とこんな戦いはごめんでござるという感情も、あったでござるよ」


 正義感の塊の勇者でもそう思うことがあったのか。


「私は悪竜を見ただけで心が折れそうになったよ」


 そう私は当時の感情を思い出して言った。

 まあ、今もそれと同じ雰囲気をアセトリードが、全開で発しているんだけれどな。

 会話していて確かに精神は侵食されていないようだが、存在は悪意の塊そのものであった。


「緑の悪竜戦か。あのときは裏方で魔物の掃討をしていただけだったが、非常に激しいものだったな」


 と、オルトが四年前の戦いの感想を述べる。


「私なんて、アセト君の仲間になったばかりに、悪竜と面と向かってバトルですよー。正直生きた心地がしませんでした」


 最強の道具使いが弱音を言ってる。

 でもキリン知ってるよ。アセトリードが悪竜にとどめをさせたのって、リネが爆弾投げまくって悪竜の動きを止めたからだって。


「懐かしいでござるなぁ。拙者がこうして悪意に堕ちた原因の一つも、悪竜との決戦前夜のことがあってでござるよ」


 悪意に堕ちたって、言いにくいこと自らぶっ込んできたなぁこいつ!

 ていうか決戦前夜って、何かあったの何それ知らない。

 私はリネの方へと顔を向けた。すると、リネは苦笑して言った。


「確か、ミミールさんに言ったんですよね。この戦いが終わったら伝えたいことがあるって。あれって愛の告白をしたかったんですよね?」


 何その戦死しそうなシチュエーション。まあ、無事に勝利しているのだが。

 アセトリードは頷き肯定の意を返し、リネは言葉を続ける。


「でも悪竜戦後、ミミールさんはエンガ君に告白されて、ミミールさんはそれを受け入れて、アセト君の恋は破れるというわけです」


 寝取られかぁ。いや、別に恋仲同士じゃなかったんだから、寝取られではないか。ただの失恋か。

 で、その三角関係を無関係ゾーンからリネは眺めていたと。こいつ本当に立ち回りが巧妙だな! 今回の魔王討伐戦だって、元勇者パーティのエンガとミミールが魔王、つまりアセトリードの居るであろう場所に直接向かう決戦班だったのに、彼女は何故か案内役とか言って私達についてきているし。こうやって裏目に出てこんなところで雑談なんかしているが。


「失恋して頭がぐちゃぐちゃになっているときに、拙者達が頑張って世界に還した善意が世界のために使われず、遠い大地の復興に使われていると女帝氏に聞いて、『幹』なんて滅びてしまえば良い、なんて思ってしまったのでござるよ」


 まさか憎しみのあまり災厄に堕ちるとは思っていなかったでござるが、とアセトリードは力なく笑う。


「世界滅べと思うと、世界を滅ぼす存在になるなど、我ながら勇者というものは難儀というか何者というかでござるよ」


 そう笑う彼に、私は以前から考えていた推測を言った。


「闇堕ちしたのは多分火の神の祝福のせいかな」


「ほう?」


 興味深そうに返すアセトリードに、私は続けて根拠を説明する。


「火の神がこの世界に送り込んでいる端末は、人の役に立とうとすれば天使になり、人に害をなそうとすれば悪魔になる。火の神の力は二面性があるんだ」


 勇者は選出、認定に当たって、世界樹の祝福とその火の神の祝福を受ける。

 世界樹は善なる存在しか許さないだろうが、火の神は人が悪に堕ちるのも許容する。

 火の神は一つの異世界だ。世界全体が意思を持つ火で、その思考は無数に分割されている。なので、人に益をもたらす思考もあれば、人に害を与える思考もある、厄介な存在だ。なので、私達この世界の住人は、人に害をもたらす思考の端末である悪魔と敵対し、消滅させる。それは火の神全体も認め許容していることだ。


「確か姫はアルイブキラで、二度悪魔を討ったことがあったな。悪魔は人型であるし浄化の魔法は効かないしで、庭師の苦手とするところなのだが……」


「私には魔人の力があるからな」


 オルトの言葉に、力こぶを作ってそう返した。

 剛力魔人の力の前では、魔物も悪魔も等しく打ち砕かれるのみだ。魔王はどうかちょっと解らないが。


 そんなことを話していたときのことだ。


「ふう、ようやく辿り付いたわい」


 世界共通語でそんな声が大広間に響いた。

 私は声の方向に顔を向けると、そこには通路の向こうから小さな幼子と全身金属で覆われた長身の女性、それと二十歳ほどの男と女がこちらに向かってきていた。

 それぞれ、女帝、無敵最強魔導ロボット、エンガ、ミミールである。


「アセト!」


「アセトさん!」


 アセトリードに向けて声を投げかける、元勇者の仲間の二人。エンガは剣、ミミールは魔法媒体の指輪を構えている。

 なお、ロボは銃口をアセトリードに向けている。それって、撃った場合、周囲に居る私達が無事に済むやつですかね?

 ただ一人、女帝は素手のまま構えず、私達の様子を見渡して言った。


「なんじゃおぬしら、座り込みよって。戦いが激しかったわけではなさそうじゃな」


「これは女帝氏、久しいでござる。拙者ら、ここで雑談していたでござるよ」


 世界共通語の女帝に合わせず、アルイブキラの言葉で返すアセトリード。


「雑談ー? なんじゃその平和な感じは……」


 すかさずアルイブキラの言葉で女帝が返してくる。女帝、この言語でも古風な喋り方するんだな……。


「いやあ、これから浄化される身でござるから、最期くらい楽しく終わりたかったでござるよ」


 そんなことを言うアセトリードのことを女帝はまじまじと見つめた。


「アセト、おぬし正気に戻って……いや、初めから正気だったのか……?」


「そのようですよ」


 そう椅子に座ったままのリネが言う。


「リネさん! そばにいないと思ったら、こんなところに! 先にアセトさんのところに来ていたのね」


 指輪を付けた手を構えるのをやめたミミールが、世界共通語で叫びながらリネのもとへと駆け寄った。


「どうも、ミミールさん。よくここが判りましたね」


「女帝陛下が蟻を使って遺跡中を探してくれたの」


「ああ、使い魔蟻ですね」


 使い魔蟻。初めて聞く言葉だ。しかし、単語の並びからおおよそどういうものかは推測が出来る。

 魔法使いが持つ使い魔と同じように、自在に蟻を操ったり蟻と視界を共有したりするのだろう。


 そして、構えを解いたが剣を持ったままのエンガが、アセトリードに近づいた。


「雑談か。何を話していたんだ」


 エンガはやや片言のアルイブキラの言葉で、アセトリードにそう尋ねた。


「なんでもないことでござるよ。キリン氏が侍女になったことだったり、拙者の恥ずかしい失恋の話だったり」


「失恋、か……。ミミールのことは、すまなかったと思っている。だが、後悔はしていない」


「反省すれども後悔せず。男でござるなぁ。その後はミミール氏と上手くいっているでござるか?」


「ああ。結婚し、二年前には子供も生まれた。男児だ」


「まことに!? それはおめでたいでござるな」


 すんなりと、会話に興じる男二人。わだかまりのようなものは二人からは感じられなかった。時が上手いこと解決してくれたのか、それとも元々そこまで恋はこじれていなかったのか。

 そんな二人の様子を眺めていた女帝は、ため息をつくと無敵最強魔導ロボットの背を叩いた。ロボットは構えていた銃を下げる。


「はー、やれやれ。善人砲の発射は、次の災厄出現まで延期じゃな」


 どうやら女帝は、アセトリードを討つ気がないらしい。

 だが、女帝の言葉に、エンガと会話をしていたアセトリードが反応する。


「それは駄目でござるよ、女帝氏。魔王は討たれなくてはならないでござる」


「そんな! 悪に堕ちず正気なら、何も死ぬことなんてないじゃない!」


 リネの隣に立つミミールが、悲痛な声でそう言った。

 しかし、アセトリードは引く姿勢を見せない。


「災厄がいる限り、世界は魔物の猛威に晒される……魔王を討たねば世界は平和にはならないでござるよ。みな、お頼み申す。拙者を浄化してくだされ。お頼み申す」


 その言葉に、ミミールはわっと泣き崩れた。

 まあ、恋人ではないにしても、長年連れ添った仲間だからな。そいつから殺してくれといわれては、かなわんだろう。


「あいわかった。おぬしの最期、この女帝蟻が見届けよう」


 そんな女帝の言葉を受けて、アセトリードは満足そうな笑顔になった。


「介錯は浄化が一番上手い者に任せたいでござるよ。少しでも多くの悪意を善意にして世界に返したいでござる」


「浄化が一番上手い者か……誰じゃ? 無敵最強魔導ロボットはその辺微妙じゃぞ」


 女帝が周囲を見渡す。

 すると、女帝が登場してからずっと黙っていたオルトが言った。


「アルイブキラで一番の浄化の名手は、姫――キリン以外にいないだろうな」


 む……。まあ、庭師歴も長いし、魔女の弟子だから魔法の扱いには自信がある。


「道中魔物を退治する様子を見てきましたが、私よりキリンさんの方が浄化は上手でしょうねー」


 そうリネが言った。


「リネほどの者がそう言うなら……」


「……リネさんが言うなら……キリンさんに」


 エンガとミミールもリネに追従してくる。

 私か。私がやるのか。

 だが、これは都合が良いことでもあった。私はアセトリードとの友情に報える。


「実は、浄化した魔物の遺骸を残す魔法を習ったんだ」


 魔法を展開し、その術式を可視化してアセトリードに見せてやる。彼は魔法にも造詣が深いので、これである程度理解してくれるだろう。


「アセトリード。どこか、埋葬して欲しい場所はあるか? 立派な墓を作ってあげられるぞ」


 災厄の悪竜を討った勇者。魔王に堕ちながらも人に牙を向けなかった者。その偉業は讃えられるべきものだろう。この世界の人間は、その人物が生前何を成し遂げたかをとても重視する。墓は大切なものだ。

 私の術式を、アセトリードはほうほうそれはそれは、と感心したように見ている。


「拙者、この数年間ずっと考えていたのでござるが……いや、妄想でござるかな」


 と、アセトリードが言う。この四年間、彼はずっと孤独であっただろう。人の居ない遺跡で、ただ討伐されるときを待っていたはずだ。


「拙者が世界にもたらした善意が使われるという、遠い大地。そこに行ってみたいと思っていたでござる。墓を作るなら、そこに」


「さすがに惑星移動は私一人の力では無理だが……女帝陛下」


「……ああ。約束しよう。おぬしの墓をあの愛しき大地に作ると」


 私に話を振られた女帝が、そう答えてくれる。

 すると、アセトリードの闇が僅かにうごめき、顔の位置が高くなる。立ち上がったのだろう。


「それでは、お頼み申す」


 そのアセトリードの言葉を受けて、私は立ち上がって床に刺さった戦斧を引き抜いた。

 ミミールの嗚咽の声が止まらない。リネが立ち上がり、ミミールの背中をさすってやっていた。オルトもいつの間にか立ち上がって、槍を手にたたずんでいる。エンガはアセトリードから離れ、女帝のもとへと戻っていく。

 私は、アセトリードへ確認を取る。


「会話はもう良いのか?」


「ああ、もう十分でござる。楽しかったでござるよ」


 私はその言葉に頷き、アセトリードの前へ立ち、斧を握りしめる手に力を込める。

 一撃で、決める。

 妖精言語で妖精を多数呼び出し、魔法のサポートをさせる。

 足場を固定し、重力魔法で仮初めの体重を増やす。災厄浄化魔法を何重にも掛け、余さず悪意を変換出来るようにする。

 そして私は戦斧を大上段に構えると、持てる限りの力をもってそれを振り下ろした。




◆◇◆◇◆




「善人砲命中! 誤差ありません!」


「大陸上の全汚染浄化を確認!」


「結界発動急ぐのじゃ! 大地に汚染を一寸たりとも触れさせてはならぬ!」


「結界発動確認! 大陸隔離成功です!」


 惑星再生課の拠点で、私は空間投影モニターに表示される、惑星が再生される様を眺めていた。


 あの後、魔王の浄化には成功した。魔女直伝の災厄浄化魔法は正しく成功し、縦に真っ二つに裂けたミイラ化した勇者の遺骸がその場に残された。

 それをもって女帝は魔王討伐浄化の完了を宣言し、私達は勇者の遺骸を携えて遺跡を引き上げた。


 戦士達一同は『幹』へと帰還し、戦勝会が行われた。また立食パーティだ。今回の魔王討伐戦の前半は動かぬ魔物との戦いだったので、どうも不完全燃焼といった感じの戦士達だったが、元勇者が魔物を止めていたと聞いて納得したようだった。ちなみにアセトリードが浄化された後、魔物達は普通に動き出したらしい。

 私達は遺跡脱出の際、動く魔物と遭遇したが、メンバーがメンバーで過剰戦力だったため、活躍の機会がなかったオルトはどこか不満げだったように思える。


「大型探査船の発射準備は進んでおるかの? 勇者の遺骸の搬入、忘れるでないぞ!」


 宙に浮かぶ椅子に座りながら、そう各所へ指示を出していく女帝。

 前回居たギリドゼンの姿は無い。彼は勇者育成課だから、本来ここにいるべき者ではないのだろう。


 私は彼らが慌ただしく作業する様を一人、ぼーっとして眺めていた。

 そんなときだ、魔法通信で私に向けて語りかけてくる者があった。


「自分の遺体が運ばれてくるのを見るのも、妙な気持ちだな。俺は死んだのだな」


 それは、アセトリードの声であった。世界共通語のため、妙に古風な言葉遣いではない。

 私はそんな彼に向けて言葉を返した。


「貴方は確かに死んだんだよ。肉体は物言わぬ遺骸となり、魂は世界に還った。これを死以外のなんて言うんだい」


 魔王のアセトリードは、災厄となりながらもどういうわけか正気を保っていた。悪意の塊の中で、悪意に侵されぬ精神だけが浮いていた。

 彼の肉体は闇へと堕ち、思考し記憶する脳は全て悪意に侵され闇となっていた。では、あの私達と話していた彼の精神は一体どこに宿っていたのか。

 それは、魂だ。死後世界に還った魂は、記憶を消され世界と一つになる。つまり、脳だけでなく魂にも記憶と精神はあるのだ。

 だが、彼はその魂も悪意に変わっていた。では、何故彼が正気でいられたのか。それは、記憶に善意も悪意も存在しないからだ。もし記憶に善意があるなら、世界を善意で満たしたい世界樹は、死後の魂にある善なる記憶を消すのをやめるだろう。だがそんなことは起きていない。


「肉体と魂が無くなれば死か。確かにな」


 魂の記憶に宿る精神。それが私達が会話していた彼だった。だから私は、その記憶と精神を魔王の悪意から引きはがした。そうして今、彼は記憶と精神だけの存在となっていた。

 彼の肉体と魂は死したが、精神は生き残ったのだ。魂から抜き出した記憶と精神だ。今の彼には魂が無い。私はその記憶と精神を魔法金属へと移植し、ゴーレムの核とした。

 それが今、惑星フィーナへと向かう大型探査船に、乗組員として乗り込んでいる。

 そんな彼が、私に尋ねてくる。


「では、今のこの俺はなんなんだろうな。死んでいるのか、生きているのか」


「それはこれから自分で探してくれ」


 かつて死んでも魂だけは無事なまま異世界にて生まれ変わった私には、その答えは解らない。


「それはまた、酷なことを言う奴だ」


 アセトリードは、そう苦笑混じりに言った。

 そんなことを話しているときだ。


「こらそこ! なに雑談しておる!」


 宙に浮く椅子に座る女帝が、上からこちらへと注意を向けてくる。


「アセト、おぬしが大地に行きたいと言うから、その船を任せておるのじゃぞ。しっかりせんかまったく」


 アセトリードは災厄になるという罪を犯した。しかしそれでも、女帝は彼を許し、むしろ彼のもたらした善意を利用していることを謝罪し、彼の希望していた惑星フィーナ行きを了承した。


「おぬしの善行が復活させた真なる大地、その目でしっかり見てくるのじゃ」


「ああ、解ったよ」


 アセトリードは今度こそ笑って言った。




 近未来幻想ファンタジー系魔王降臨レクイエム<完>


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