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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
54/79

54.相対

リハビリです。大目に見てね

俺達は互いに見つめあった。もう一人の俺の目に雲がかかっているのは変わらない。だが、俺には分かる。あいつが俺に目線を向けているということが。こう、相手の考えてる事が頭に入ってくるというか……心が通じあってるというか……言葉では表せない不思議な感覚だった。


「やはりキミはボクの予想を簡単に超えてくる。これだからキミは!」


あいつは嬉々として俺に話しかけてきた。その顔はどこかスプリングスターさんに似ていた。ただまぁ、そんな事はどうでもいい。俺はこいつに1つ言っとかなきゃいけない事がある。それは―


「お前は結局、シンジスカイブルー本体の魂なのか?」


この疑問を解決せずにはいられなかった。あの心臓を痛めた時、足りない頭で必死こいて考えた仮説が合ってるのかどうか。こいつに聞くのが1番早いとずっと思っていた。


「ふぅん?それはつまりどういうことだい?」


俺はあいつに俺の仮説について解説した。俺は元人間で、偶然お前の身体に魂が入り込み、お前の身体のコントロールを奪ってしまった。そして、あの時話しかけてきた奴こそ、シンジ本体の魂ではないか―と。


「ははははは!キミはそんな事まで分かっていたのかい!驚かせようとしたボクの計画が台無しじゃないか!」


もう1人の俺は、今までの嬉々とした表情を崩して、大笑いし始めた。その言葉を聞いた瞬間、俺は心の中でガッツポーズした。俺の中に秘められていた研究者魂が、再び躍動しているようだった。


「そうだねぇ。それに気づいたのは――」


もう1人の俺は笑うのをやめ、話を始めた。


「それに気づいたのは、意識を持ってすぐだったね。産まれたばかりの頃はまだ何もわからなかったから」


「ボクは、暗がりのような所にいた。そこは光の入らない暗闇のような所で、ボク以外の生物は存在していないようだった。今のボクだったら、辺りを探索したり、出る方法を見つけようとしていたと思う。だけど、当時のボクは幼すぎた。幼すぎて、そんな事はできなかった。ボクに出来るのは、ただ時が過ぎ去るのを待つだけだった。それが2週間続いた」


「だが、遂にそれも終わりを迎えることになる。その日は、何の変哲もないような日だった。今日も何もせず過ごすのか、ボクはそう思っていた。だが、突然、本当に突然、ボクの目に光が飛び込んできた。その光の方向に目を向けると、何かの穴のようなものが見えた」


「ボクはそこに辿り着いた。そして、その穴に顔を突っ込んでみた。その時に見えたのが、キミ、シンジスカイブルーだった」


「どうやらボクはシンジの1m後ろで世界を見ているようだった。ボクにとって、世界の景色は新鮮だった。あまりに綺麗だったので、しばらく眺めていると、突如、頭の中で声が響いた」


「その声は、40くらいの男の声だった。特にこれといった特徴はないが――少し声のトーンが高かったね。ボクはその声に耳を傾けた」


「キミは、今キミが見ている競走馬のもう1つの魂―今の身体は、彼がコントロールを握っている。つまり、今の段階だとキミはここから彼を見ていることしかできない。気楽だと思うかい?だが、この身体が死を迎えた時、それはキミの死にも直結する。そして競走馬は、レースに勝たなければ...処分される。もしもキミが生きたいならば...」


「「キミが彼に協力して、レースに勝ち続けなければならない」、と」

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