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2-1 召喚士ユーナ

 「邪王」シウバ=リヒテンブルグ。あの「神殺し」の魔王テツヤ=ヒノモトに敗北を認めさせ、後にハルキ=レイクサイドと壮絶な一騎打ちを繰り広げるとされる元純人の魔王は、青年期にある召喚士と出合ったことで人生が変わったと言われている。彼の波乱万丈な人生の中で、その召喚士と過ごした時期は見かけ上は平穏であったはずだが、後年の「邪王」は誰にも語る事はなかった。もしかしたら、彼が唯一人間らしく生きる事ができた時期なのかもしれない。召喚士の名前は「疾風」のユーナ、後に彼女も歴史に名を残すこととなる。



「つ、つまり部屋に鍵をかけなかったシウバが悪いよね!」

そうなのか?俺が悪いのか?どう考えてもユーナが間違ったのが悪いと思うんだけど、・・・いや、そうね・・・俺が悪かったから睨まないで。

「う、うん。ごめんなさい。」

 結局、寝る前に召喚していたユーナのベッド用のフェンリルが事情を説明してくれたが、明け方にトイレに起きて、部屋を間違えて俺のベッドに潜り込んだという事らしい。責任取っても良かったんだけどさ・・・。

「さて!シウバが悪いって事で一件落着したし!今日も依頼を取りに行くわよ!」

・・・なんか、昨日お酒飲んで吹っ切れたのかな?ユーナが元気になってる。腑に落ちない事もあるけど、まあいいか。元気なユーナは可愛いと思うよ。責任取ろうか?


 ユーナと一緒に冒険者ギルドへ行く。今日も冒険者ギルドは人でいっぱいだ。依頼が次々と受理されて行っている。早くしないと良い依頼が取られてしまうかもしれないが、薬草採取は人気ないから大丈夫だろう。いつものことだ。

「さあて、何をしようかしらね!昨日は手ごたえのない依頼だったから、たまにはガツンと討伐に行きましょうか!」

待って!討伐は無理なんだ!俺、めっちゃ弱いよ!

「じゃあ!このくらいかしらね!」

「あ、うん。え?」

って言うかこれAランクのクレイジーシープじゃねえか!Eランクの俺連れていく気?

「おじさん、これお願い!」

ああ!待って待って!無理だって!

「おう、何だユーナとシウバか・・・ついにシウバも討伐依頼をするようになったか・・・って、これAランクだぞ?大丈夫か?」

「大丈夫よ!」

大丈夫じゃねえよ!こちとらゴブリンも倒せねえんだぞ!この1か月逃げてばっかなんだからな!足ばっか速くなるわ!おっさんの言う通りだ!Eランクを連れていく依頼じゃねえよ!

「まあ、ユーナなら大丈夫か。シウバを守ってやってくれよな。」

「任せといて!」

任されないでぇぇぇえええ!というか受付おっさん!お前ちゃんとした仕事しろよ!

「さあ、行くわよ!今夜は羊の香草焼きだわ!」

「う、うん。」

もしかして、飯が目的か?


「ブシュルルルゥゥゥゥ!!」

怖い怖い怖い!クレイジーだ!クレイジー!

「いたわね!」

俺、ワイバーンから降りないからね!絶対無理!

「ちょっと、いつまでしがみついてるの!?さあ、行くわよ!」

あぁ!!ワイバーン還さないで!俺を空へと連れてって!

「いでよ!黒騎士!」

黒騎士が2体召喚される。さらにフェンリルも召喚したユーナはフェンリルに騎乗して、長剣を抜きはらう。

「いっけえ!」

お、俺も鉄の剣を抜いて・・・やべえ、膝が笑ってやがる。頑張れ!シウバ!ユーナが見てるぞ!情けないところを見せたら・・・・あれ?終わってる。

「大したことなかったわね!まあ、クレイジーシープじゃあ仕方ないか。」

ユーナ強ぇぇぇえええ!!!黒騎士召喚の意味すらなかったんじゃないか?だって、こいつらここから動いてない・・・・もしかして、こいつら俺の護衛をしててくれたのか?だって、フェンリル騎乗のユーナがザクって斬っておしまいだったし・・・。あんなに強いのなら魔物の強さくらい分かるだろうしさ。・・・なんか、俺情けねえな。

「シウバ!解体するわよ!手伝って!」

「お、おう!」

いや!戦闘で役に立たなければ他の所で役に立てばいいんだ!料理の腕なら自信があるぜ!



「おいしいでしょ?」

俺は今、猛烈に打ちのめされている。まさか、ユーナがこんなに料理が上手いだなんて。クレイジーシープの香草焼きか・・・、こんなに旨いのは初めて食ったかもしれんな。何一つ勝てないじゃねえか!

「これはね!奥方様に教えてもらったのよ!セーラ様は本当に料理も上手で素晴らしい方なんだから!」

 セーラ=レイクサイド様か。「大召喚士」ハルキ=レイクサイド様の妻にして、独身時代はシルフィード騎士団アイシクルランスに所属し、「シルフィードに舞い降りた奇跡」の二つ名を持っていた才色兼備の女傑だ。噂ではアイオライ=ヴァレンタイン現王ですらセーラ=レイクサイド様には頭が上がらないとかなんとか。ユーナはセーラ様専属の召喚士だったこともあったらしい。

「他にもね、怪鳥ロックのから揚げだとか、ハニーマスタードグリルだとかおいしいレシピはあるのよね!あ!明日は怪鳥ロックが依頼に出てないかどうか調べましょ!?受理させてもらえなかったら勝手に獲りに行けばいいしね!」

Sランクの魔物を裏庭のトマトみたいに言うなよ・・・。

「だ、大丈夫なのかな?怪鳥ロックってすごく強いんじゃ?」

精いっぱいの抗議をしてみたわけだけど・・・。

「大丈夫大丈夫!たぶん!おいしいから!」

・・・多分?ものすごい不安しか残らない。



 しかし、翌日に冒険者ギルドに行ってみると、ちょっとした事件が起こっていた。

「SランクとAランクの討伐依頼がない?」

どうして?まあ、俺的にはどうでもいいと言えばどうでもいいけど。薬草採取の依頼は残ってるしさ。

「なんでよ!?ちょっと、おじさん!」

「ああ、ユーナか。」

「なんでSランクとAランクの依頼がないのよ!怪鳥ロックの目撃情報が入らないじゃない!今日はハニーマスタードグリル食べるって決めてたんだからね!」

「ああ、それか。お前も無関係じゃないんだけどな。」

受付おっさんよ、思わせぶりだな、おい。


「実は・・・レイクサイド召喚騎士団の第4部隊が根こそぎ持ってった。ジンビー様の許可は取ってあるらしく、見返りに石切り場の作業までしてったらしいからな。怪鳥ロックだったら、南の方で目撃情報があったぜ。「深紅の後継者」テトが向かった依頼の中の1つにあったな。昼前までには帰ってくるって言ってたけど。」


・・・なるほどね。そういう事か。

「どうする、ユーナ?」

「鉢合わせするとめんどくさいわね!今日はやめましょう!特にレイラの顔は見たくないわ!」

じゃあ、どうしようかな。

「じゃあ、今日は薬の調合してていいかな?この前の島でレドン草が手に入ってさ。MP回復ポーション作って売ろうかな・・・なんて・・・どうしたのその顔?」

「いや、その青汁には苦い思い出があって・・・。」

青汁?たしかに苦いけどさ・・・。

「まあ、でもまとまったお金になるから。もちろん売り上げはユーナにも半分あげるよ。」

「レドン草なら、たくさん生えてる所を知ってる!連れてってあげようか!?」

マジか!?マジなのか!?夢のレドン草大量か!?

「ほんと?ぜひお願いするよ。」

「では!出発ね!」



 俺は今、猛烈に後悔している・・・。

 ここ、「奈落」じゃねえか。ほんとに入るの?



召喚士ユーナって・・・そのまんまじゃねえか!とか言わないで!これは事故だ!作者も書き終わって初めて気づいたんだ!事故なんだ!それに!「ー」であって「ウ」じゃないもんね!性格だって全然違うし!武器も違うし、使い方も違うしね!作者メンタル弱いこと、時々でいいから思い出してくださいね!ちなみにFの10-2は認めない。

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