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「では基本的な設備は宿と同じ感じで、全員が整列できる広場を作る感じですか…」
「そうですね。間取りはこんな感じで…」
ドロワ様と向かい合って紙に間取りを書いていく。扉入って大規模な水場。これは後で実際に今現在団員さんたちが使っている水場を見せてもらうことになっている。他にも100人以上の団員が住んでいると言う寮とか大浴場なども見せてもらうことになっている。
細かい施設の造りは参考物件を見てから作るけど、その前に大まかな配置を相談して設計中だ。
しかし救護広場や野外調理設備風の物が欲しいと言われたときは驚いた。
大きな厨房は作ろうと思っていたけれど、兵士さんたちは大鍋での料理が中心だから竈を数個設置してあるだけのほうがありがたいそうだ。
しかし…救護広場、かあ。
高位の冒険者たちは絶対に治癒師を仲間に入れているが王国軍の人たちは違うそうだ。だから救護広場を作ってそこで少ない治癒師が魔法やポーションを使って回復するそうだ。
と、いうか治癒師は基本的に数が少ないそうだ。そう言われてみれば……うちの宿に泊まる高位冒険者のパーティには絶対にいるけど、ギルドで会うだけの人達に治癒師は…少なかったような…。
ような…ような…ような?
そもそもあまり地上に居ないせいで全然ギルドにいる人の記憶はなかった。
「では実物を見てみますか」
「はい。じゃあ団長を探しましょうか」
「その必要はありませんよ」
ドロワ様がそう言ってポケットから取り出したのは紙で折られた鳥だった。
何をするんだろう…と思うと、紙の鳥がパタパタと飛び出した。
「え!?飛んだ!!」
「今開発中の魔道具です」
鳥はすぐにどこかに飛んで行った。団長さん達を探しに行ったんだろう。
そこまで広くない宿だ。
先に戻ってきたのは第一のライゼン様だった。
「この空間すげえな!マリーロズ、お前ギルドなんか辞めてうちに就職しないか?給料は倍出すぞ」
「いえ、お言葉は光栄ですが…」
「そうかあ?大歓迎するぞ?」
「うちの職員を引き抜かないでくれますかね」
一緒に戻ってきたガンツさんに庇われたものの、ライゼン様は目を輝かせて執拗に勧誘してくる。すると、リュシィ様も戻ってきた。来たのだが……。
「お待たせしました。時にマリーロズ嬢、現在の仕事に不満はありませんか」
「……長年の夢を叶えて今はとても幸せです」
「そうですか…」
こっちもか!と思うもののリュシィ様は一度限りで引き下がってくれた。未だにガンツさんに粘ってるライゼン様とは大違いだ。
「では参りましょうか。ああ、うちも君なら入隊は歓迎しますし何なら我が家で雇用しても構いませんよ」
「…お言葉ありがとうございます」
人気者だなーと思いつつ、げんなりとしながら苦笑いで誘いを断った。




