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マジックバッグのレンタルを始めて、二週間目。私たちの護衛は今までは『ドラゴン殺し』と『銀の華』が担っていたが、どちらもうちのトップパーティ。二つとも攻略中の階層は28階で、移動に少し時間がかかるため今月から護衛パーティが増えた。
それがうちに移籍してきたAランクパーティ『アサシンズ』だ。
1週目
メイン護衛『ドラゴン殺し』
サブ護衛『銀の華』
自由『アサシンズ』
2週目
メイン護衛『銀の華』
サブ護衛『アサシンズ』
自由『ドラゴン殺し』
3週目
メイン護衛『アサシンズ』
サブ護衛『ドラゴン殺し』
自由『銀の華』
といった感じでかわりばんこで護衛任務をこなすらしい。
というわけで今日は初めて『アサシンズ』のエストラさんと大盾使いのトードーさんに護衛をしてもらうことになった。
「よろしくね空間師ちゃん」
「お世話になります」
「よろしく頼む」
静かに頭を下げる、初めてまともに交流をするトードーさん。その彼の得物に目が行くのは仕方の無い事だった。と言うか
「大きな盾ですねえ」
私の首くらいまである大盾を右手に持ってる状態はさすがに目立つ。そして威圧感半端ない。
「この盾で突っ込みながら耐えるのがこいつの仕事だからね」
「護衛に向かない得物で申し訳ない」
「いやいや、守ってもらえるだけで嬉しいですから!」
とは言え、いつも私の護衛をしてる人達はさりげなく後ろとかに居てくれるけど。
売店に居ても(ドーン)
洗濯をしていても(ドーン)
新しく作った書庫で本の目録を作っていても(ドーン)
とにかく、トードーさんが目立つ。
目立ちすぎて、エストラさんの存在感が消え失せるほど目立つ。
気になって仕方が無いので、諦めて売店に座ったまま隣に椅子を作った。
「どうぞ座ってください。甘いのは大丈夫ですか?」
「いや、今の俺は護衛だから…」
「人が来たら警戒をしてくれれば良いんですよ」
そう言いつつ、ホールケーキと皿と包丁とフォークを取り出してケーキをワンカットして皿に載せてトードーさんと、気配が消えているエストラさんに差し出した 。
「これ、上で買ったやつ?」
「ええ。トールさんと行ったお店のなんですが美味しかったので数ホール買っておいたんです」
「……時間停止空間の超有効活用だなあ」
「腐ることを心配しなくて良いって素晴らしいですよねえ」
笑ってひと口食べると、ケーキはデートの時に食べたものと味が違うように感じたけれどそれでも美味しかった。
『アサシンズ』の二人も甘いものは大丈夫なようで嬉しそうに食べている。
「そういえば、地元に勧誘してたのにこっちに移籍して良かったんですか?」
「ん?うん。俺たちの戦闘スタイルとここの迷宮って相性が良かったというか、地元と相性が悪すぎたと言うかねえ…」
「どんな迷宮だったんですか?」
「海辺の洞窟なんだ。中は海の下の方に繋がってて一応呼吸は出来るんだけどあちこち水浸しで……スカウトなのにどうしても足音が出る」
それは、まあ。
スカウトといえば音もなく忍び寄って不意を打ったり、罠や索敵に優れた職業だ。
足音が消せないと言うのは確かに辛いだろう。
「ここの魔物は音に敏感なやつが少なくてな。エストラ達が嬉々として飛びかかって行く」
「しょーがねえじゃん。気持ちいいくらい不意打ちが決まるんだから。でもね、それだけじゃないんだ。うちの地元ってトップパーティがクズでさあ、ギルドもクズなの。そんなんばっか見てたせいでここのギルド、良いなあって思ってね…」
ギルドを、うちの冒険者のみんなを褒められて嬉しくなる。
そうでしょうそうでしょう、うちのギルドのみんなは悪ふざけもするけれど。
すごく優しいんだ。
「ああ、あと重大な問題もあったな。こいつの盾が重すぎて水中移動しようとするとこいつだけ沈むんだ」
「おい」
微妙な話題も隠さずに話してくれるけれど、すぐに笑わせてくれる二人。
『アサシンズ』とも、ドラ殺や銀華のように仲良くなれたらなと思った。




