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その仕事内容は知っていた。
色々と教えに来てくれた冒険者さんが空間魔法に適性があると言ったら、迷宮にある買取出張所の話を教えてくれたのだ。
迷宮で魔物の死体を預かり、ギルドに運搬する仕事。
「大体なんでウチなんだ」
確かに他にも商隊など候補はあった。
それでも。
「冒険者ギルドでは、破棄されるポーションが安く買えるって聞いたから…」
「……破棄ポーション?」
錬金術の適性がある子に聞いたことがあるのだ。
冒険者ギルドではポーションの需要がとんでもなく高い。だから、冒険者ギルドはお抱えの錬金術師を雇って育てていると。
そして見習いの作った低品質以下のポーションは買い取ってくれるものの破棄されると聞いた。
それらは瓶の返却を条件に希望者には格安で売るという。駆け出しも駆け出し、見習い魔法使いなどが買うそうだ。
破棄ポーションが買えて、空間魔法の仕事が出来る。そして身元不明の孤児でも雇ってもらえる。
正しく冒険者ギルドは私の理想の職場だった。
「破棄ポーションなら欲しいなら売ってやるよ。だから悪いことは言わねえから母ちゃんのところに帰りな」
『お母さん』の所に帰れるもんなら、帰りたいよ。
会った事すらないのにそんなことを言われて……俯いて涙を堪えているとまた頭を撫でられた。きっとトールさんだろう。
「……ねえちょっとギルマス、その子は孤児院の子よ。12歳って言ってるし真剣に仕事を探しに来たんじゃない…?」
不意にそんな声が聞こえた。
涙を沢山溜めた目でそちらを見るも視界は滲んで誰かわからなかった。
分からないが、誰か女の人に抱き上げられた。
「…なんだと。おい、お前孤児なのか?」
「……ローズマリー孤児院で暮らしてます」
「あー、そうか。働かないといけねえし、孤児院の出だと商会とかでも殆どの場所で使い潰されんなあ…」
「雇ってあげてよ、さっきから聞いた話だと能力はあるんでしょ?」
その時、お姉さんが耳元で『一生懸命お願いしてみて』と言ってきた。
すんっと鼻をすすってじいっとギルマスを睨む。
「お願いします! 雇ってください!!」
しばしの間、静かな空間でギルマスと睨み合うも。
ギルマスは深いため息をついて髪をぐしゃぐしゃとかきあげた。
「あーもう。とりあえず仮雇用だ。ハンナ、トール、お前ら口出してきたんだから今日の夕方までチビ助の護衛を迷宮3階でしてこい。いま依頼書の方は書くから。チビ助、実際に1ヶ月くらい仕事を体験してみて本当にやるか決めてみろ。とりあえず今日を凌げてからその先の話だ」
「ありがとうございます!! お姉さんもありがとうございます!」
「良いのよ。私はハンナ、貴女の名前は?」
「マリーロズです。お兄さんもありがとうございます!」
「トールだ。良かったな」
ハンナさんに抱かれたままトールさんに頭を撫でられて。
冒険者さん達にも良かったな嬢ちゃんと口々に言われて、一生懸命ありがとうございますを返す。
こうして私は魔法使いのハンナさんと剣士のトールさんのおかげでなんとか冒険者ギルドに仮採用されることになった。




