20
でーん。ででーん。
トールさんとエストラさんに弟妹を散らして貰いながら、三人きりの院長室でドヤ顔で院長とシスターに書類を見せる。
「寄付です!」
胸を張って言うと、院長はゆっくりと前掛けで古くなった眼鏡を拭いて、眼鏡をかけてにっこりと笑って言った。
「やっておしまいシスターロゼッタ」
「大きな買い物をする時はちゃんと大人に相談してからにしなさいって言ったでしょおおお!」
そして飛んでくる、木のおたま。
昼食時に来たせいでシスターがおたまを持ちっぱなしなのは知っていたけれど。
中々の威力でおたまで頭を殴られて、頭をかかえこむ。
「なんで!?私もう16歳だよ!?成人だよ!?」
「おだまり!昨日からネロもダーツもリリエラも嬉々としてお給料を全部持ってきたから嫌な予感がしてたけどあんたが一番タチが悪いわ!!」
「せっかく買ってきたのに…孤児院の土地の権利書」
「寄付のレベルを超えてるでしょうが!?」
ザルバさんに頼んだもの。それは孤児院の土地権利書だった。マジックバッグを売った現金は素材売却後に手元に来る予定だったのでまだ持っていなかったのだがそこはギルドお抱えのラクザルバ商会。ギルドに立て替えてもらう形であっさりと権利書を手に入れてくれた。
一時的な寄付よりも。
これを買えば、この先ずっと賃料を払わなくて済む=院長も喜んでくれる!と思ったのだけれど、院長もシスターも物凄く怒っていた。
「まずはありがとうマリィ。貴女が私たちを本当に思って買ってくれたのはもちろんわかっているわ。でもね、そんな財産を私達は受け取れないわ。人はお金が絡むと変わるのよ……それは私も変わらないし、私の跡を継ぐ人もそんな資産を見たら変わってしまうかもしれないわ。だから権利書は受け取れないのよ、ごめんなさい」
困った子供を宥める様そのもの、といった様子で院長先生は立ちあがると私を抱きしめて頭を撫でてきた。
しょぼくれる私の様子に二人の恩人が困ったように笑うのを感じた。
「まあ、マリィ相手なら容赦なく値切れるってものよ。賃料まけてもらうわよ、大家さん?」
「え、いらな」
いらないと言おうとすると再び頭部におたまがヒットした。
痛みに呻いていると院長先生が優しく労わるように撫でてくれたが……始めに許可を出したのは院長先生だ。そこは忘れてはいけない。
「そこはちゃんと頂きなさいマリィ。不労収入は大事よ。さあ、マリィの彼氏さんも誘って昼食にしましょうか」
家賃の減額、それ以上は受け入れない。
その意志をキッパリと見せながら「ご飯よご飯」と言う院長先生とシスターロゼッタに続いて食堂に行くと……
食堂にはパンとスープ。それからひとり一個、出店の食べ物を準備されて、トールさんとエストラさんが弟妹で埋もれていた。




