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気持ち悪いのに、小脇に抱えられてさらに気分が悪くなるーーーと、そのまま誰かにぽんと手渡された。
「トール、悪いが適当に飯を食わせて休ませてやってくれ。どう見てももう限界だ」
「了解。大丈夫かマリィ」
新たに抱き抱えてくれたのは鎧を着ていない、私服のトールさんだった。さすが抱きなれているのか?彼の抱え方は無駄な圧迫感などがない。
「血臭に酔いました……食事はいらないので、ちょっと休みたいです」
「わかった。寝ていい」
そんなことを言われても、まだ家の扉を出して無いのに……。
そう思ったけれども意外と疲れも溜まっていたらしく。私はすっと落ちるようにトールさんの腕の中で眠りに落ちた。
ふっと眠りから目覚めると見たことのない部屋だった。
柔らかなベッド。それから微かに香る石鹸の香り。
ぼんやりと部屋を見渡すと、窓の外は暗かった。
夜まで寝ちゃったのかと思って更に部屋を見回すと……ソファに座って目を閉じているトールさんがいた。部屋の隅には彼の鎧や剣が転がっていて、恐らくトールさんの部屋なんだろうか。
動いたら起こしてしまうだろうと思いつつも、音を立てないように静かに身を起こす。
窓の外からは明るい音楽が聞こえた。この音に自分の音が隠れてくれ、
と思いつつもまるで祭りのような音にちょっと首をかしげる。
あれ、祭りとかじゃないのになんで賑やかなんだろう。
そう思いつつも、トールさんの隣に座った。
髪はぱさぱさで、風呂上がりに乾かしていないのだろうか。意外とまつ毛は短くって…目が見えないことに少し違和感を覚える。トールさんの目を閉じた顔なんて見たことがないから。
「ベッドで寝てろ。まだ起きるには早い」
トールさんは高位冒険者で。ぺーぺーの私の気配なんて当たり前のように感じるだろうし、寝込みを魔物に襲われることもあっただろう。
だから起きてるかな?と思っては居たけれどやはり起きていたみたいだ。
でも、お腹が減ったわけではないけど。
そのままぽすっとトールさんに寄りかかる。
「マリィ、俺は男だ。寝てるとは言えそんな無防備にくっつくな」
寝てるって、寝てないじゃないか。
起きてるのに目をつむってあくまで寝てると言い張るトールさんが面白くって…もぞもぞとソファの上に膝で立つ。手を伸ばせば、肩を簡単に掴めて。
そのまま顔を近づけると…ゆっくりとため息をつきながら目が開かれた。
その瞳に映る自分の顔はどんなだったか。よくわからない。
だって、すぐに瞳を覗き込めないくらいに距離が接近して……。
「良いのか」
「問題でも?」
その夜私たちは同じベッドで眠った。




