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5


え、え、え。

トールさんは明らかにただの装備品としてくれようとしていたのに。

パーティメンバーからの激励を受けて、何故か覚悟を決めた顔で私の前に膝を突いた。


そうすると身長差が逆転して私がトールさんを見下ろす形になる。


「……マリィ、左手を出してくれるか」


「………はい」


おずおずと、左手を差し出すと。

指輪は迷いなく薬指に嵌められて、魔道具なのかそれはシュッと私の指のサイズとなった。そしてそのまま手の甲にキスをされる。


「まだ早いのはわかってるが、予約な」


思わず感極まって、そのままトールさんの首に手を回して抱きつく。

もう、大好き!


「はいっ!」


「おうおうおめっとー。盛り上がってるとこ悪いんだけどお二人さん、そこで気まずさで死にかけてる弟くん貰ってくぞ」


「はうっ!」


廊下で茶化していたムサシさん達がケラケラ笑ってトールさんの背中と高さ的にちょうどいいのか頭をバンバン叩いて、私の後ろで真っ赤になって固まっていたネロを救出しに来た。

二人で出入口から退いて。

厨房から出ていこうとするネロを赤い顔で見守っているとーーーーネロは私の前で足を止めた。


「姉ちゃん、俺さ料理が好きなんだ」


「うん」


「だから今最高に楽しいんだ。対人関係に悩まずに思う存分料理ができて」


ネロの言葉に、苦いものが込み上げる。

幸せそうに言うネロには悪いがここはだいぶ環境が悪い。魔物と隣り合わせだし、そこそこの広さがあるとはいえ私の空間の中に閉じ込めっぱなしだし。

ーーー料理スキルがあるのならば。孤児じゃなかったら、地上のもっと良い環境で就職できただろうに。

ネロにはとても助けられているがどうしても、そう思わずにいられない。


「それに、目標って言うか夢も出来た」


「夢?」


でも。そんな私の罪悪感なんて関係ないとばかりにネロはキラキラした目で笑った。

すごく楽しそうに笑った。


「うん。ゲロポーションを料理に使って誰でも食べられるようにしたい。俺でも、院の弟妹でも、誰でも!」


ああ、うん。

私が宿屋を夢見る時もこんな顔をしていたんだろうな。


「期待してるよ?」


「うん!」



そう言って笑えば、ネロは任せて!と力強く頷いた。

まあでも。


「ゲロポーションじゃなくて破棄ポーションね」


そこはきっちり訂正しないとね。

そう思って言うと、銀華のみんなもネロも楽しそうに笑った。



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