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「ここから先が結界無効区域だ」
「ああ、噂の」
「そっちは無いのか?結界無効区域って」
「わからん。うちの最奥層で確認されてるのはフロア丸ごと水没だから」
「……そいつもきついな」
20階から21階へ降りる階段を見て、珍しくも冒険者同士が雑談していた。
どうやらここから先はスピードを緩めていくらしい。
その理由は単純。ココにいるものを狩りに来たからだ。
1パーティでも余裕だったものが5パーティで苦戦するわけが無い。移動中一体でも多くの魔物を倒して金にすべく狩りながら進むことになったのだが…。
20階と21階。たった1階なのだけれど魔物の姿は様変わりしていた。
主に、サイズが。
「でっかいなあ…」
「2m以上はあるねえ。これで普通だけど」
「えっ!?」
四足の魔物だけど、そのサイズがうんと大きくなっていたのだ。さらにその毛の表面にはバリバリと雷が光っている。
属性を持つ獣だそうだ。
2mで普通。大きいものだと4mを越すそうで、そんなもの確かにマジックバッグ無しで持って帰れないと思う。
そんな魔物を
「おー、バフ切れたわー」
「挑発頼む」
余裕で倒す人々。いつも気のいい冒険者の人達の、実力を改めて実感した。
倒しながら、ゆっくり進んでも昼過ぎには予定していた23階の地点に到着した。
玄関の扉はいつもより大きめのものに作り替えた。4mサイズを引きずって持って帰ってきても入れるようにだ。
「…これ、本当に敵は入ってこないんだよな」
「入れませんよ。入場には私の許可が必要なので」
心配そうな人を尻目に私はパタパタと走って玄関と買取所を繋ぐ扉も大きいものに替える。
素体は玄関→買取所に持ち込むものだしね。
そして、私がコツコツと空間の間取りを変えていると……全冒険者の前でマイクさんがコホンと喉を鳴らした。
「まずは現地までの護送ありがとうございます。皆さんのおかげで誰一人欠けることなくこの場所まで来られました。これよりこの場所で迷宮宿屋を正式にオープンさせていただきます」
マイクさんがそう言い切るとぱちぱちとあちこちから拍手が上がった。
いつの間にか弟妹たちも一緒になって聞いている。
「さて、宿屋が正式オープンしたことで迷宮売店の方もオープンとさせていただきます。こちらでは地上よりは割高になりますが 帰還スクロールや高級ポーション、酒やツマミから……皆さんが気になってらっしゃるマジックバッグの様なものも販売させて頂きます」
マジックバッグの様なもの。
あやふやな言い方をするので、事情を知る銀華とドラ殺以外のメンバーは各々微妙な反応を見せた。
「具体的に言いますと、お客様の好きな装備やアイテムにマジックバッグ効果を付与させて頂きます。種類は二つ、初回のみの販売で1パーティ1個まで。お値段は1000万で、買い取った素体との相殺も可能です。なにか質問がございましたらこちらまでお願いします」
そう 、始めはバッグの状態で売ろうと思ったのだけれど。
腕輪に空間付与したトールさんがものすごく使いやすいと感動していたので、私の正体もバレてるし希望するものに付与することにしたのだ。
これには各パーティとも大きくざわついた。
「では店主のマリィ、開店の合図をどうぞ」
そしてマイクさんに託されて……勢いよく手を振り上げる。
「迷宮宿屋、開店です!!!」
そして二年越しの私の念願の夢が、ついに実現した。
第二章[完]




