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二日目の夜は、早めに水量確認に回った。
どこも水量は順調で。けれど昨夜と違って今度は玄関にエストラさんと、パーティメンバーの方がいた。
「こんばんは、見回りですか?」
「ああ、空間師ちゃんこんばんは。どうしたんだい」
「水量のチェックです。だいたいどれくらい使うか把握しておきたいので」
そういうとエストラさんと一緒に居た、多分ほっそりしているからスカウトっぽい人が急に真顔になった。
「どうしたケント」
そしてこっちに向かってきて、目の前で勢いよく頭を下げた。
「悪い!俺、水を沢山使いすぎたと思う」
「え、ああ、大丈夫ですよ。まだまだ大量に確保してありますから。お二人共ずっと前線で戦ってらっしゃいましたしね。どうですか、ここの迷宮は」
にこにこ笑ってそう尋ねるとケントさんはわかりやすいくらいほっとした顔をした。
二人は顔を見合わせて、少し考え込んでからボソボソと喋りだした。
「ウチの迷宮は海底洞窟にあるから、それと比べるとここは湿気も水溜まりも無いし、不思議な感じはするがやりやすいと思う」
「そうそう、装備が水を吸って重くなるから最低限な装備しか出来ないし食事も水に濡れても食えるもの限定だからきついんだよね」
「具体的にどんな食事なんですか?」
知識はあった方がいい。そう思っての質問だったのだが二人は嬉しそうに笑った。
恐らく、自分の地元の迷宮に興味を示して貰ったからだろう。
「主に果実だな。果物は若いうちに採れば長持ちするし」
「あとパンの代わりに米を炊いて食べるよ。米って、わかる?」
「分かります。そうか、なるほどそれも日持ちするんですね」
「それでも限度があるけどね。うちのナンバーワンパーティはマジックバッグを持ってるけど俺たちは持ってないから」
不意に、エストラさんの目の色が変わった。
その目は、狩猟者の目だった。昔、孤児院の食堂でよく見た目だ…おかず争奪戦で…。
「ねえ、空間師ちゃん。聞きたいんだけど、地下宿屋でマジックバッグが売られるって本当かい?」
おや。販売予定だって話は聞いてないのだろうか。23階に着いたら販売する筈だけども。
ここまで来たら教えちゃってもいいと思うけど、勝手に機密を話す訳には行かない。
と、思っていると背後の物陰からスっと人影が現れた。
「明日には目的地に着く。それまで待て」
そう言うと人影…『ドラゴン殺し』のポールさんは私の両脇に手を入れて、抱き上げるとスタスタと寝室の方に歩き出した。
キョトンとしてから慌ててエストラさん達に手を振る。
「という訳です。おやすみなさいー」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
そのままポールさんは静かに私を部屋の前に置いて、そして静かに去っていった。
そうか、明日で移動も終わりか。
今までは弟妹とマイクさんに色々と任せっきりだったけども、明日からいよいよ宿屋本番が始まるんだ。
パンッと軽く頬を叩いて気合を入れて。
私は颯爽とベッドに潜り込んだ。




