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「ここから20階までは集中力の維持のため怪我の治療以外で休憩はしない。マリィ、飯は戦闘中で止まった隙にでも食え」


「了解です」


そこからは基本的に『銀の華』の治癒士ダーンさんの背中に乗っての行動が多くなった。

治癒士は基本的に怪我人が出る事態になってからが仕事。戦士やスカウトは魔物が出る前から警戒をしなくてはいけない。


というわけでダーンさんの背中に乗ることが多くなったのだ。


朝食時にハキポを10本ほど飲み、冒険者の人達に変な物を見る目で見られたけれどMPは全快した。


ので、MPが50%切らないことを考えつつ道中空間の拡張を繰り返す。と言ってもメインでは無い。販売用の空間だ。


冒険者さんに販売する用の物は今回の分は揃っているが、来月の参加者さんの分は当然無い。


作れる時に作り置きを作らねばならないし……実は販売場所、個数に制限をかけて納得をしてくれたのは一般の方のみだ。


お貴族様とかお貴族様とか、お貴族様とかにはそんなマイルールが通用しない。


ので、ギルマスが頼ったのは王家だ。

王都冒険者ギルドに繋ぎを取ってもらい、国に一定個数販売する代わりにその他の貴族を黙らせることに成功した。


ので国に売りつける分が必要なのだ。全く以てめんどくさい。私は迷宮で宿屋をしたいだけなのに。



兎にも角にも、そういう理由で私は常時拡張魔法を使わねばならないのだ。

………自動拡張スキルとか無いかなあ。ないだろうなあ。何となく、そんなスキルが手に入る気がしない。



走っている最中は舌を噛むので黙って拡張。

戦闘時などで止まったり減速した隙にハキポを飲んで、また拡張。


食事は勝手に摂れと言われたけれどみんなが戦っているのに一人だけ食べるのもなんなので、黙々とそれを繰り返す。




そして20階にたどり着いた時。

アイズさんにはこっぴどく叱られた。


「良いか、俺は飯を食えと言ったんだ!俺たちは三日食わなくても全然平気だがお前は非戦闘員だ。こんな環境だ、体調管理には人一倍気を遣え。俺の指示には従え。お前が体調を崩したら今回の作戦は大幅な支障を来すんだぞ」


「……はい」



食事を結局摂らないでハキポだけ飲んで済ませたこと。それにアイズさんは大激怒した。

玄関で、汚れを落とすみんなに苦笑いで見守られながらお説教は続く。


でもそれら全部が本当に心配してくれるものだから、粛々とお怒りの言葉を受け止める。


「そもそもなんで腹を壊しそうなほど不味い破棄ポーション飲んでるんだ。稼いでるんだから普通のポーション飲め。いやそれ以前に飯も食え」


「それは…まあ、はい」


「そもそもなんであんな不味い奴を平気で飲んでるんだ」


そのままじゃ捨てられちゃうから勿体ないからです。

なんて言ったら、稼いでるんだ…のエンドレスループになるだろう。

どうしよう、どう言い訳しよう。と考えていると、援軍が思いもよらぬ場所から飛び込んだ。


「姉ちゃんはポーションの素材の薬草を小さい頃から食べてたから……多分、食べ慣れた味なんだと思います」


それは、幼い頃から一緒に畑仕事をしていたダーツの援軍だった。

だけども。その一言によって、冒険者達がざわついた。


「嘘だろ、あれ生だと気付けに使われるくらい酷い味だぞ」

「錬金術師以外であれを食えるやつ居たのか」

「野生の動物ですら食わないぞあれ」


……不味いけど、ずっと食べてればまあ行けるんだけども。

ダーツの進言を聞いたアイズさんの目に明らかに憐憫の色が見えた。


「……ひとつ聞く。なんで、あんなもんを食ってたんだ」


「MPが回復するのと、お腹が減ってたから…」


そう言うとアイズさんは目元を手で押えて突然上を向いた。

冒険者たちも何故か同じように手で顔を押さえて上を向いたり下を向いたりしている。


「…マリィ、これをやる」


そう言ってアイズさんがくれたのは中級ポーションだった。


「俺も…」

「…これで美味しいもの買いな…」

「栄養不足でそんな小さいんだな」


いや、同じ環境で育ったダーツは大きいですけど。身長は多分関係ないですけど。


そう突っ込みたいが、みんなポーションやお小遣い、携帯お菓子など色々なものを私に渡して去っていった。


最後に残ったトールさんも、険しい顔でこちらを見下ろしている。


「食べ物に困らせる生活は絶対にさせない」


「……今はそこまで大変じゃないですよ」


「そうだったな…そうだけどな…」


トールさんはぎゅっと私を抱きしめて、あやす様に背中をとんとん叩いた。

いや、泣いてないし今は別に苦しんでませんけど!?


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