苗木たちの別れ
「ニッキィまたなー」
「あまり悪さするなよ」
「元気でね」
母さんが居なくなった地が、浄化され、さらに精霊たちによって緑溢れる地になった。
“生きていける土地”になったことで、母さんとの思い出が残るこの場所で生き続けることを選んだ兄姉は沢山いた。
俺はエルフ達から離れてマリィ達と一緒に行くから、そのことを寂しく思いつつも少し安堵した。
だって、苗木がいっぱいついていきすぎたらマリィ達が絶対に困る。困らせてでも一緒に行きたいけど……でもやっぱり出来るだけ困らせたくないし。
「……なあ、またここに来ることはあるよな?」
「すぐには来ないだろうけど長い目で見たら戻ってくるとは聞いているよ?エルフ達のエンチャントの腕前は優れているからね」
「そっか」
俺の心の中なんてお見通しなのだろう。
マリィ達と一緒に行動をしていた兄貴は笑いながらくしゃくしゃと髪を撫でてきた。
「……お前も一緒に来てくれて助かるよ。お前は、マリィ達を守ろうと動いてくれるだろう?」
「当たり前だ。あれだけ助けて貰って、返さないと申し訳ない」
「うん、でもほかの苗木たちは……そういう欲求が薄いところがあるからね」
兄貴の言い分には全力で納得をする。
苗木たちは基本的に
良い事も悪い事も、何かされることをそのまま受け取る。嫌だなと思っても基本的に拒まない。
そして、逆に他者に対しても特に何もしない。
「あの子たちは樹木としての性質が強いからね、今回外に出たいという意識を持てただけでもすごいと思うよ」
そう言われて、なるほどと納得をする。
樹木は基本的に動くことが出来ない。
だから……水や栄養をまかれることも、伐採されることも受け入れるしかないのだ。
伐採されにくいよう硬い性質を持ったりすることはあるかもしれないが、所詮その程度だ。
「……でもなんか、違和感あるんだよなあ」
恩がある上に世話になるんだから、感謝くらい示せばいいのに。
唇をとがらせてそういえば、兄貴はやはり嬉しそうに笑った。
「お前は完全に精霊寄りだね。大丈夫、宿屋を守る行動はさせるから」
「そうなのか?」
「うん、盗まれないように自衛させたり、薬効があるから一定数の葉の提供とかさせるよ。そこは私がちゃんとするから……お前は宿屋の人たちを守るよう、頑張ってくれ」
「ん、わかった」
適材適所、っちゅーやつだな。
俺は仲間に違和感を感じるから、冷静でいられる自信が無い。
その点兄貴は長く生きているから大丈夫だろう。
「……楽しみだな、森の外」
「……うん」
外の世界。それはどんななんだろう。
海とか、山とか。
アイズ達が居た街には、炎の精霊の住処となっている迷宮があるらしい。
世界樹の森には迷宮がないから……それも踏まえて楽しみだ。
「あ、ニッキィ、イシさん。ちょっと苗木エリアを拡張するから聞きたいんですけどーーー」
遠くからマリィの呼ぶ声が聞こえる。
まずは一歩。
一歩一歩、着実に俺たちは外の世界を知っていくんだ。




