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苗木はあの炎の向こう側だ。


「……アイズいけるか?」


「焼死するな。燃えてない場所に回って飛んだとしても……この上まで戻ってくる間に時間切れだ」


「ロディ、何か出来るか」


「……もう、むりだ。『…俺の手を離れすぎた』」


これは……もう、助けられない。

無理をしても助けられる可能性が低く、そのくせ皆の危険性は跳ね上がってる。


「あの、苗木の回収はどうなったんですか!?」


沈鬱な空気が広がる中、下で戦っていたエルフの人が話しかけてきた。

装備はボロボロ、治癒したあとなのかあっちこっちに血の跡がある。


余裕は無いのだろう、それでも必死にここまで来て尋ねてきた彼に……いい返事を返せなくて、沈黙だけが広がる。


「まさか……!」


「………。」


「………。」


「…わかりました。ここまで御協力してくださってありがとうございました。ここからは私たちで何とかします」


彼は責めなかった。

ただ悲痛な表情で頭を下げ、すぐに立ち去った。


彼はきっと、命をかけて世界樹に突撃するのだろう。最後に見えた表情で、その覚悟を決めたのがすぐわかった……けれど、私たちはもう何も出来ない。


私たちは、自分たちの命が惜しい。


世界樹よりも……トールさん達の方が大事だ。

燃え盛る世界樹に勝ち目無しで突っ込ませるなんて絶対にしたくない。


ーーーー出来ることは、神に祈ることだけだ。

ーーーーーーー人の手では理解出来ない何らかの奇跡が起きることを。




ーーー『主よ、お願いがあります』


神様、どうか

どうか世界樹を……森を助けてください。


ーーー『どうか、あの少女を助けてください』


苗木たちを、イシさんやニッキィ達を

外に行ってみたいとはしゃいでいたという苗木たちを。


ーーー『もう私はツタ一本動かせません。このままではあの少女は火に巻き込まれてしまいます』


その場に膝を着いて、両手を組んで目を閉じて祈りを捧げる。


ーーーーー『どうか、炎を、全て消してください』


どうか、どうか助けてください。



『ぴんぽんぱんぽーん!』


その時、聞き覚えのある声が辺りに響いた。

『今まで頑張ってくれた成果もあるし、今回だけは君のお願いを叶えてあげるよ』


これは……アイアン迷宮で聞こえたあの声!?


「おい、なんだ」

「どこで誰が喋ってるんだ!?」


『だけど『回収』するのは木ごと全部だ。それと、今回は特例措置だから……今後は私を宛にしないように』


“私を宛にしないように”


その言葉が聞こえた瞬間、全身の血が引くような感覚に陥り隣にいたトールさんにしがみつく。


よく見ればトールさんも、アイズさんも…ロディも、ダンディも辛そうだ。

これは……私たち全員に宛てられた言葉だと、何となく感じた。


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